仙台市青葉区のアパートに侵入して20歳代女性に乱暴して現金を奪ったとして、強盗・強制性交などの罪に問われたバングラデシュ国籍の同区大手町、無職アミン・モド・アル被告(27)の裁判員裁判で、仙台地裁は21日、懲役15年(求刑・懲役17年)の判決を言い渡した。
大川隆男裁判長は「犯行は極めて執拗(しつよう)かつ卑劣で、被害者の感じた恐怖心はとても大きい」と述べた。
判決によると、被告は昨年6月30日未明、女性宅に侵入して待ち伏せし、帰宅した女性の首に包丁を近づけて脅して性的暴行を加え、財布から4万5000円を抜き取った。
大川裁判長は、アミン被告が被害者の後をつけて住居を突き止めて解錠方法を調べ、侵入後に明かりがついていないトイレで2時間以上も被害者の帰宅を待っていたことから、「被害者に対する異常な執着心に基づく計画的犯行」と指摘した。家に金品がないとわかった後も被害者の帰宅を待っていたとし、強制性交の計画性を否認した弁護側の主張を退けた。
■ネットで「解錠方法」習得
「一番安心できるはずの家に恐怖が待っていました」。被告が女性宅で待ち伏せし、性的暴行を加えた今回の事件。被害者の悲痛な思いが読み上げられた公判では、被告が動画投稿サイト「ユーチューブ」で鍵の解錠方法を調べ、ヘアピンで被害者宅のドアを開けた手口が明らかになった。
「開きました。これでピッキング完了です」――。ユーチューブには鍵の開け方を紹介する動画がいくつもアップされ、解錠の一部始終を解説する動画は100万回以上再生されている。SNSによって解錠の専門知識が広がり、窃盗などの犯罪にも悪用されるケースがあるとみられる。
防犯に詳しい仙台大の田中智仁准教授(犯罪社会学)によると、一昔前のアパートや戸建て住宅の鍵はヘアピンや針金状のものを使い、「プロ」で1分、素人でも動画を見て練習すれば30~40分程度で開けられるという。「情報の拡散は止められない。犯罪者が専門知識を持っているという前提で、防犯対策を取る必要がある」と強調する。
田中准教授は、対策として可能ならばドアを加工して鍵を増やしたり、ドアに補助錠を取り付けたりすることが有効と指摘する。防犯カメラを設置すれば、犯罪者に近寄りづらい印象を与える。家の周囲に物を置かず、身を隠す死角をなくすことも重要という。