【窪田 新之助】【藤岡 雅】これは最悪…!「news23」“身バレ報道”、「決死の内部告発」でJA職員が受けた「おぞましき仕打ち」の中身と「TBS敏腕記者たちの哀しき末路」

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TBSの「調査報道ユニット」が6月末、誕生からわずか2年で解体された――。こんな情報が、報道関係者に衝撃を与えている。
TBS社長室広報・IR部は、筆者の取材に対して「調査報道ユニットが解体されたという事実はなく、引き続き取材活動を行っています」と否定しているが、現場の記者や関係者の認識は事実上の解散である。複数の関係者の話をまとめると、その経緯は次のようなものだ。
Photo/gettyimages
「同ユニットは、政治部、社会部など局内から敏腕記者が集められ独自ネタを追いかける専従部隊だったが、今回、記者たちは各部署に配置換えされることとなり、ユニットの記者たちは雲散霧消してしまった。この処分の原因となったのが、 JA職員の“身バレ報道”だった」
実はこの“身バレ報道”の問題は、筆者が『週刊現代』(5月1日発売号)とWebニュースサイトの「現代ビジネス」で、報道被害を訴える二人の職員の悲痛な訴えを報じて明るみになったもの(記事はこちら)。今年1月、TBSの看板報道番組『news23』でJA共済の問題を特集した際、インタビュー映像の加工処理が杜撰だったことから、告発したJA職員たちが職場で「身バレ」してしまったのだ。
TBSは、いまだにJA職員に正式な謝罪をしていない。
筆者はジャーナリストとして「調査報道」の発展を願う立場にあるが、問題の検証をせずに調査報道ユニットを解散させて報道を後退させるのであれば、本末転倒な話だろう。
TBSは、いったいなにを考えているのだろうか。
まずは、ことの経緯を振り返ろう。九州のあるJAの元職員Aさんは、TBS調査報道ユニットの記者の取材に応じ、その様子は1月12日に放送された『news23』で放送された。
同僚とともに取材に応じたAさんは、JA共済の過大なノルマのために、自分や家族が不必要な契約をする「自爆営業」を強いられている実態を証言したほか、共済の契約書などの証拠書類も提供した。
自宅で取材を受けたAさんは、自分の腕時計まで撮影されていることが気になったが、記者からは「バレることはない」と言われたという。放送前に、編集した動画を確認させてもらう約束をしていたが、その約束は反故にされた。
放送を見たAさんは目を疑った。
「映像加工しているのは顔だけ。首から下は丸映りで、明らかに自分とわかる映像でした。案の定、職場ですぐに身バレしてしまい、冷たい視線を浴びることになった。いたたまれなくなり、退職するしかなかったんです」
被害を受けたのは、Aさんだけではない。番組に出演した別のJAの職員Bさんも身バレして、職場で数々の嫌がらせを受けてきた。Bさんも調査報道ユニットの同じ記者の取材を受けた。
Bさんは、インタビューを受けたときに自身を特定しうる「あるモノ」(さらなる報道被害を生みかねないので「あるモノ」の詳細は省く)が映り込んでいることが気になった。そこで「あるモノ」を取り除いて撮り直してもらったのだが、実際に放送されたのは「あるモノ」が映り込んだほうの映像だった。
放送に驚き呆れたBさんは、TBSの記者に電話で抗議し謝罪を求めた。だが、記者は「とにかくしらばっくれてください。絶対に認めないでください」と告げるのみで、まるで他人事のようだったという。
言うまでもなく、取材源の秘匿はジャーナリズムの原則中の原則であるとともに、一般にも広く知られている常識。告発者が“身バレ”しないように配慮しないTBS調査報道ユニットの記者は、ズブの素人も同然だった。
しかし、前述したように調査報道ユニット自体は烏合の衆などでは決してない。むしろ報道界に凄腕記者集団として名の知れた存在だったのだ。
後編『TBSの“黒い”「抗議書」を受け取ったジャーナリストは戦慄した…!「news23」“身バレ報道”、その後の顛末とTBSの「原因究明、謝罪なし」に見る「泥沼の危機」』では、実力者集団のTBS調査報道ユニットが陥った「危険な罠」について詳しくお伝えするとともに、被害にあったJA職員の「訴え」に耳を傾けていこう。

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