上陸時は「最強」、陸上進み衰弱か 台風14号

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台風14号は20日、日本海から新潟市付近に再上陸後、東北を横断、その後、太平洋へ抜けて温帯低気圧に変わった。
2日前の九州上陸時には、観測史上4番目の中心気圧の低さで最強クラスの勢力を保っていたが想定よりも陸上寄りの進路を取り、勢力を弱めたまま列島を横断。専門家は台風がたどったルートが影響したと分析する。
「本でしか読んだことがないような記録的な台風」。台風14号が九州に迫った17日、気象庁の黒良(くろら)龍太予報課長は記者会見で勢力をこう表現した。16日午前3時時点で中心気圧965ヘクトパスカルだった台風14号は、24時間後の17日午前3時に910ヘクトパスカルにまで低下。黒良氏は「衛星画像を見て、かなり危機感を持った」と呼びかけた。
台風は一般的に海面水温が高いほど勢力が強まる傾向がある。京都大防災研究所の榎本剛教授(気象学)は「海上の広い範囲から水蒸気が集まり、対流活動が活発となって急速に発達したのでは」。名古屋大宇宙地球環境研究所の坪木和久教授(気象学)は、台風が急発達した16日と17日、上空から台風の目の中や周辺に観測機器を投下し、気圧や風速などのデータを集めた。「これまで観測した台風の中でも、もっとも強かった」という。
18日夜に鹿児島市付近に上陸した時点では、中心気圧は935ヘクトパスカルだった。その後は九州北部に進んだものの、主に陸上を通過したことで勢力は衰え、被害があった場所も限定的だった。
榎本氏は、気象庁が当初予想していた海上の進路ではなく、予報円の最も東側の陸上のコースを進んだ経緯を注視。一般的に台風は、上陸すると地表面の摩擦でエネルギーが失われるためだ。「海上のルートを進んでいた場合、もっと大きな被害が出ていた可能性もあった」と話す。
坪木氏も台風がたどったコースが勢力の急落に影響したとみている。九州東側で大量の雨を降らせたことで気流が乾いてしまい、九州山地を越える際に衰弱したとみられる。
被害は想定ほど大きくはなかったが、気を付けたい点もある。「今後は秋雨前線が形成されるため、台風の強さだけにとらわれず雨への警戒が必要になる」と坪木氏。秋の台風シーズン、予断を許さない状況が当面続きそうだ。(小川原咲、前原彩希)

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