前編記事『貞淑だった73歳母が大手企業役員と不倫…43歳娘が遺品整理で見つけてショックを受けた、不倫日記の「ヤバすぎる中身」』から続く
山口綾子さん(仮名・43歳)は73歳で亡くなった母の遺品を整理する中で、日記を見つけてしまった。
見てはいけないと思いながらも開いたら、そこには大手企業の役員男性との逢瀬がつまびらかに書かれていた。
母にとってその男との交際は、<何もかもが新鮮な体験>だった。
<こんなことを男性にしたことはなかった>、<初めて頭の中が真っ白になるほど身を震わせた>などの赤裸々な性描写が続いた。
その日、何をしたのか、何をされたのかを感想とともに書き連ね、次回、男性と会うときに「したい事」も書き出されていた。
Photo by gettyimages
「私の知っている母は上品で優しく、常識人でした。誰かのために無償で動ける人で、通夜や葬儀でも、『あなたのお母さんに助けられたから今の自分があるのよ』と何度も声を掛けられたほどです。生前の母は『誰かに後ろ指さされるような人生だけは歩んじゃダメ』と何度も私に言ってきたのに、日記の中の母は、不倫をして、愛欲に溺れている。吐きたくなるほど気持ちが悪くなりました」老いらくの恋が生きがいだった一方で日記の中の母は、「いきいきとしていた」ともいう。<老いらくの恋がこれほど素晴らしいものとは思わなかった><私の人生にもう一度、女性としての光を与えてくれた彼に感謝したい>と、心から恋愛を楽しんでいる様子が書き込まれていた。綾子さんはこらえきれず泣き出してしまった。 「お母様は若い頃苦労してご家族のために頑張って来られた。綾子さんたちご兄弟が立派に自立され、やっと自分のために生きられるようになったのでしょう。晩年に恋愛を楽しむことができて、本当に良かったなと思いますよ」「でも身内の性的なことは知りたくなかったんです……」「恋愛感情や性的欲求はいくつになってもあるものです。ただ大人は性的な部分を表に出さずに生きているから見えにくいだけ。晩年に自分の欲求が満たされたのですから幸せなことなんですよ」「確かにそうですね。でも結果として母は裏切られたんですよ。傷ついた母に同情する気持ちと、それみたことか、という苛立ちがあるんです」2年ほど交際が続いた後、別れはやってきた。<軽薄な男>が新人の40代の受講生とも<同時に付き合い始めた>からだ。そして、捨てられてしまった浮気をなじった母に対してその男は「だって君は賞味期限切れだから」と言い放ったらしい。達筆な母の字がやや乱れていることからも「その怒りが文字から伝わってきた」という。 「そんなひどい言葉ってあるのでしょうか? 腹立たしくて仕方がありません。でも、そんな屈辱的な目に遭いながらも交際を続けた母に対しても憤りを感じずにはいられないのです。二股をかけられていると知りながら、男にしがみついていた母の姿が想像できてしまい、悔しくて、哀れで情けないんです」その後、徐々に会ってもらえなくなった母はがんに倒れ、彼にも病気を告げぬまま亡くなった。母との思い出が汚されてしまい……葬儀には、母親を慕う人たちが男女問わずたくさんやってきた。綾子さんは参列者に記帳して貰った芳名禄から名前をひとつひとつ確認したが、そこに男の名前は無かったという。 綾子さんは、昭和の貞淑な妻の代表のような、上品で優しかった母親の思い出が汚され、どのように消化したらいいのかとまどっていた。私は綾子さんに訊ねた。「綾子さんはまだ老後の自分を想像できないと思いますが、もし自分だったらどうだろう、と自分事として考えてみてはどうでしょう。人生100年の時代、その半ばで恋愛もスキンシップも卒業するべきだと言われ、30年、40年続く余生を一人で過ごすのは寂しいと思いませんか?」「確かに一人の女性として考えればそうですね……」「お母様はその男性に傷つけられ辛い時間もあったかもしれませんが、喜びも苦しみも味わい尽くし、豊かな彩りある晩年を過ごしたのだと思います」遺品整理では様々な物が見つかるその後、しばらくカウンセリングは続き、綾子さんは最後には、「誰にも言えずに抱えこんで、ずっとモヤモヤしていたんです。話せてよかった。母を一人の女性として認めていこうと思います」と、笑顔で帰っていった。Photo by iStock 綾子さんのようなケースは珍しくない。父親の死後、大量のアダルトビデオや、海外から手に入れたらしき無修正の本が見つかったという話は昔からある。最近だとパソコンに様々な「動画」や「写真」も残されており、遺品整理中に、よりリアルな親の姿を目の当たりにしてしまうケースも増えてきた。親を「一人の人間」として考える人は無意識に親の性的な面に目をつぶっている。しかし親もまた、自分と同じ様々な欲望を抱えた人間である。「性」という字には「こころ」を尽くして「生きる」という意味が込められている。Photo by iStock 不倫は「文化的」には褒められた話ではない。ただ、私は、交際相手に翻弄されながらも異性との触れ合いの喜びを味わう一方で、子どもの前では毅然とした母として存在し続けた綾子さんを、敬愛せずにはいられない――。*当事者のプライバシーを考慮し、相談内容の一部を改変しています
「私の知っている母は上品で優しく、常識人でした。誰かのために無償で動ける人で、通夜や葬儀でも、『あなたのお母さんに助けられたから今の自分があるのよ』と何度も声を掛けられたほどです。
生前の母は『誰かに後ろ指さされるような人生だけは歩んじゃダメ』と何度も私に言ってきたのに、日記の中の母は、不倫をして、愛欲に溺れている。吐きたくなるほど気持ちが悪くなりました」
一方で日記の中の母は、「いきいきとしていた」ともいう。
<老いらくの恋がこれほど素晴らしいものとは思わなかった>
<私の人生にもう一度、女性としての光を与えてくれた彼に感謝したい>
と、心から恋愛を楽しんでいる様子が書き込まれていた。
綾子さんはこらえきれず泣き出してしまった。
「お母様は若い頃苦労してご家族のために頑張って来られた。綾子さんたちご兄弟が立派に自立され、やっと自分のために生きられるようになったのでしょう。晩年に恋愛を楽しむことができて、本当に良かったなと思いますよ」「でも身内の性的なことは知りたくなかったんです……」「恋愛感情や性的欲求はいくつになってもあるものです。ただ大人は性的な部分を表に出さずに生きているから見えにくいだけ。晩年に自分の欲求が満たされたのですから幸せなことなんですよ」「確かにそうですね。でも結果として母は裏切られたんですよ。傷ついた母に同情する気持ちと、それみたことか、という苛立ちがあるんです」2年ほど交際が続いた後、別れはやってきた。<軽薄な男>が新人の40代の受講生とも<同時に付き合い始めた>からだ。そして、捨てられてしまった浮気をなじった母に対してその男は「だって君は賞味期限切れだから」と言い放ったらしい。達筆な母の字がやや乱れていることからも「その怒りが文字から伝わってきた」という。 「そんなひどい言葉ってあるのでしょうか? 腹立たしくて仕方がありません。でも、そんな屈辱的な目に遭いながらも交際を続けた母に対しても憤りを感じずにはいられないのです。二股をかけられていると知りながら、男にしがみついていた母の姿が想像できてしまい、悔しくて、哀れで情けないんです」その後、徐々に会ってもらえなくなった母はがんに倒れ、彼にも病気を告げぬまま亡くなった。母との思い出が汚されてしまい……葬儀には、母親を慕う人たちが男女問わずたくさんやってきた。綾子さんは参列者に記帳して貰った芳名禄から名前をひとつひとつ確認したが、そこに男の名前は無かったという。 綾子さんは、昭和の貞淑な妻の代表のような、上品で優しかった母親の思い出が汚され、どのように消化したらいいのかとまどっていた。私は綾子さんに訊ねた。「綾子さんはまだ老後の自分を想像できないと思いますが、もし自分だったらどうだろう、と自分事として考えてみてはどうでしょう。人生100年の時代、その半ばで恋愛もスキンシップも卒業するべきだと言われ、30年、40年続く余生を一人で過ごすのは寂しいと思いませんか?」「確かに一人の女性として考えればそうですね……」「お母様はその男性に傷つけられ辛い時間もあったかもしれませんが、喜びも苦しみも味わい尽くし、豊かな彩りある晩年を過ごしたのだと思います」遺品整理では様々な物が見つかるその後、しばらくカウンセリングは続き、綾子さんは最後には、「誰にも言えずに抱えこんで、ずっとモヤモヤしていたんです。話せてよかった。母を一人の女性として認めていこうと思います」と、笑顔で帰っていった。Photo by iStock 綾子さんのようなケースは珍しくない。父親の死後、大量のアダルトビデオや、海外から手に入れたらしき無修正の本が見つかったという話は昔からある。最近だとパソコンに様々な「動画」や「写真」も残されており、遺品整理中に、よりリアルな親の姿を目の当たりにしてしまうケースも増えてきた。親を「一人の人間」として考える人は無意識に親の性的な面に目をつぶっている。しかし親もまた、自分と同じ様々な欲望を抱えた人間である。「性」という字には「こころ」を尽くして「生きる」という意味が込められている。Photo by iStock 不倫は「文化的」には褒められた話ではない。ただ、私は、交際相手に翻弄されながらも異性との触れ合いの喜びを味わう一方で、子どもの前では毅然とした母として存在し続けた綾子さんを、敬愛せずにはいられない――。*当事者のプライバシーを考慮し、相談内容の一部を改変しています
「お母様は若い頃苦労してご家族のために頑張って来られた。綾子さんたちご兄弟が立派に自立され、やっと自分のために生きられるようになったのでしょう。晩年に恋愛を楽しむことができて、本当に良かったなと思いますよ」
「でも身内の性的なことは知りたくなかったんです……」
「恋愛感情や性的欲求はいくつになってもあるものです。ただ大人は性的な部分を表に出さずに生きているから見えにくいだけ。晩年に自分の欲求が満たされたのですから幸せなことなんですよ」
「確かにそうですね。でも結果として母は裏切られたんですよ。傷ついた母に同情する気持ちと、それみたことか、という苛立ちがあるんです」
2年ほど交際が続いた後、別れはやってきた。<軽薄な男>が新人の40代の受講生とも<同時に付き合い始めた>からだ。
浮気をなじった母に対してその男は「だって君は賞味期限切れだから」と言い放ったらしい。
達筆な母の字がやや乱れていることからも「その怒りが文字から伝わってきた」という。
「そんなひどい言葉ってあるのでしょうか? 腹立たしくて仕方がありません。でも、そんな屈辱的な目に遭いながらも交際を続けた母に対しても憤りを感じずにはいられないのです。二股をかけられていると知りながら、男にしがみついていた母の姿が想像できてしまい、悔しくて、哀れで情けないんです」その後、徐々に会ってもらえなくなった母はがんに倒れ、彼にも病気を告げぬまま亡くなった。母との思い出が汚されてしまい……葬儀には、母親を慕う人たちが男女問わずたくさんやってきた。綾子さんは参列者に記帳して貰った芳名禄から名前をひとつひとつ確認したが、そこに男の名前は無かったという。 綾子さんは、昭和の貞淑な妻の代表のような、上品で優しかった母親の思い出が汚され、どのように消化したらいいのかとまどっていた。私は綾子さんに訊ねた。「綾子さんはまだ老後の自分を想像できないと思いますが、もし自分だったらどうだろう、と自分事として考えてみてはどうでしょう。人生100年の時代、その半ばで恋愛もスキンシップも卒業するべきだと言われ、30年、40年続く余生を一人で過ごすのは寂しいと思いませんか?」「確かに一人の女性として考えればそうですね……」「お母様はその男性に傷つけられ辛い時間もあったかもしれませんが、喜びも苦しみも味わい尽くし、豊かな彩りある晩年を過ごしたのだと思います」遺品整理では様々な物が見つかるその後、しばらくカウンセリングは続き、綾子さんは最後には、「誰にも言えずに抱えこんで、ずっとモヤモヤしていたんです。話せてよかった。母を一人の女性として認めていこうと思います」と、笑顔で帰っていった。Photo by iStock 綾子さんのようなケースは珍しくない。父親の死後、大量のアダルトビデオや、海外から手に入れたらしき無修正の本が見つかったという話は昔からある。最近だとパソコンに様々な「動画」や「写真」も残されており、遺品整理中に、よりリアルな親の姿を目の当たりにしてしまうケースも増えてきた。親を「一人の人間」として考える人は無意識に親の性的な面に目をつぶっている。しかし親もまた、自分と同じ様々な欲望を抱えた人間である。「性」という字には「こころ」を尽くして「生きる」という意味が込められている。Photo by iStock 不倫は「文化的」には褒められた話ではない。ただ、私は、交際相手に翻弄されながらも異性との触れ合いの喜びを味わう一方で、子どもの前では毅然とした母として存在し続けた綾子さんを、敬愛せずにはいられない――。*当事者のプライバシーを考慮し、相談内容の一部を改変しています
「そんなひどい言葉ってあるのでしょうか? 腹立たしくて仕方がありません。でも、そんな屈辱的な目に遭いながらも交際を続けた母に対しても憤りを感じずにはいられないのです。
二股をかけられていると知りながら、男にしがみついていた母の姿が想像できてしまい、悔しくて、哀れで情けないんです」
その後、徐々に会ってもらえなくなった母はがんに倒れ、彼にも病気を告げぬまま亡くなった。
葬儀には、母親を慕う人たちが男女問わずたくさんやってきた。
綾子さんは参列者に記帳して貰った芳名禄から名前をひとつひとつ確認したが、そこに男の名前は無かったという。
綾子さんは、昭和の貞淑な妻の代表のような、上品で優しかった母親の思い出が汚され、どのように消化したらいいのかとまどっていた。私は綾子さんに訊ねた。「綾子さんはまだ老後の自分を想像できないと思いますが、もし自分だったらどうだろう、と自分事として考えてみてはどうでしょう。人生100年の時代、その半ばで恋愛もスキンシップも卒業するべきだと言われ、30年、40年続く余生を一人で過ごすのは寂しいと思いませんか?」「確かに一人の女性として考えればそうですね……」「お母様はその男性に傷つけられ辛い時間もあったかもしれませんが、喜びも苦しみも味わい尽くし、豊かな彩りある晩年を過ごしたのだと思います」遺品整理では様々な物が見つかるその後、しばらくカウンセリングは続き、綾子さんは最後には、「誰にも言えずに抱えこんで、ずっとモヤモヤしていたんです。話せてよかった。母を一人の女性として認めていこうと思います」と、笑顔で帰っていった。Photo by iStock 綾子さんのようなケースは珍しくない。父親の死後、大量のアダルトビデオや、海外から手に入れたらしき無修正の本が見つかったという話は昔からある。最近だとパソコンに様々な「動画」や「写真」も残されており、遺品整理中に、よりリアルな親の姿を目の当たりにしてしまうケースも増えてきた。親を「一人の人間」として考える人は無意識に親の性的な面に目をつぶっている。しかし親もまた、自分と同じ様々な欲望を抱えた人間である。「性」という字には「こころ」を尽くして「生きる」という意味が込められている。Photo by iStock 不倫は「文化的」には褒められた話ではない。ただ、私は、交際相手に翻弄されながらも異性との触れ合いの喜びを味わう一方で、子どもの前では毅然とした母として存在し続けた綾子さんを、敬愛せずにはいられない――。*当事者のプライバシーを考慮し、相談内容の一部を改変しています
綾子さんは、昭和の貞淑な妻の代表のような、上品で優しかった母親の思い出が汚され、どのように消化したらいいのかとまどっていた。
私は綾子さんに訊ねた。
「綾子さんはまだ老後の自分を想像できないと思いますが、もし自分だったらどうだろう、と自分事として考えてみてはどうでしょう。人生100年の時代、その半ばで恋愛もスキンシップも卒業するべきだと言われ、30年、40年続く余生を一人で過ごすのは寂しいと思いませんか?」
「確かに一人の女性として考えればそうですね……」
「お母様はその男性に傷つけられ辛い時間もあったかもしれませんが、喜びも苦しみも味わい尽くし、豊かな彩りある晩年を過ごしたのだと思います」
その後、しばらくカウンセリングは続き、綾子さんは最後には、
「誰にも言えずに抱えこんで、ずっとモヤモヤしていたんです。話せてよかった。母を一人の女性として認めていこうと思います」
と、笑顔で帰っていった。
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綾子さんのようなケースは珍しくない。父親の死後、大量のアダルトビデオや、海外から手に入れたらしき無修正の本が見つかったという話は昔からある。最近だとパソコンに様々な「動画」や「写真」も残されており、遺品整理中に、よりリアルな親の姿を目の当たりにしてしまうケースも増えてきた。親を「一人の人間」として考える人は無意識に親の性的な面に目をつぶっている。しかし親もまた、自分と同じ様々な欲望を抱えた人間である。「性」という字には「こころ」を尽くして「生きる」という意味が込められている。Photo by iStock 不倫は「文化的」には褒められた話ではない。ただ、私は、交際相手に翻弄されながらも異性との触れ合いの喜びを味わう一方で、子どもの前では毅然とした母として存在し続けた綾子さんを、敬愛せずにはいられない――。*当事者のプライバシーを考慮し、相談内容の一部を改変しています
綾子さんのようなケースは珍しくない。父親の死後、大量のアダルトビデオや、海外から手に入れたらしき無修正の本が見つかったという話は昔からある。
最近だとパソコンに様々な「動画」や「写真」も残されており、遺品整理中に、よりリアルな親の姿を目の当たりにしてしまうケースも増えてきた。
人は無意識に親の性的な面に目をつぶっている。
しかし親もまた、自分と同じ様々な欲望を抱えた人間である。
「性」という字には「こころ」を尽くして「生きる」という意味が込められている。
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不倫は「文化的」には褒められた話ではない。ただ、私は、交際相手に翻弄されながらも異性との触れ合いの喜びを味わう一方で、子どもの前では毅然とした母として存在し続けた綾子さんを、敬愛せずにはいられない――。*当事者のプライバシーを考慮し、相談内容の一部を改変しています
不倫は「文化的」には褒められた話ではない。
ただ、私は、交際相手に翻弄されながらも異性との触れ合いの喜びを味わう一方で、子どもの前では毅然とした母として存在し続けた綾子さんを、敬愛せずにはいられない――。
*当事者のプライバシーを考慮し、相談内容の一部を改変しています