障害者や難病のハンディを抱えた人との共生社会の実現に向け、世の中は動き始めている。だが、周囲に理解されず生きづらさに悩む実情をどれだけの人が理解しているだろうか。さまざまな生きづらさが渦巻くなか、認知を広げるべく当事者の声を聞いた。◆「潰瘍性大腸炎」繰り返す入院生活。便失禁恐怖が襲う
故安倍晋三元首相が罹患し、退陣の要因にもなった潰瘍性大腸炎。埼玉県在住でIT広告会社に勤めるしょうたさん(30歳)にも、この病が襲う。
「生まれつきおなかがゆるい体質でしたが、’17年秋から下血が始まり、一日に20回もトイレに行くようになりました。多忙でなかなか時間が取れず、病院に行けたのは半年後。
自分が難病になるなんて想定外で医師からは『もう少し遅かったら、大腸が破れていましたよ』と言われて事の重さを知りました」
◆「死んだほうがマシ」と思うことも
即時に入院となり、絶食生活に入った。1か月ほどで退院してもすぐに悪化。入院回数は1年半で5回に及び、「死んだほうがマシ」と思うこともあったという。体重は20 kg以上落ちた。
「便意が急に襲うと我慢することができないので、外出するのが怖くなりました。
職場や外出先で間に合わなかったことが続き、おむつや女性用のナプキンを使ったこともあります。違和感がある変な感じで落ち着きませんでした。今でも外出する際は、行き先のトイレの場所を必ずチェックするようにしています」
◆薬が慣れてくると悪化してくる…。完治が難しい病
現在は、新薬を服用して寛解状態ではあるが、現在の医療技術では完治できない。
「薬で1年くらい調子が良くても、薬が慣れてくると悪化してくる。耐性ができてしまうんだと思います。再発の不安は常にありますが、食生活の工夫や通院をしながら、いつか完治できる薬が生まれることに期待しています」
しょうたさんは病に負けないよう、自身を奮い立たせ、前を向いている。
潰瘍性大腸炎:大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性疾患 。下痢の頻発が特徴で血便を伴うことも。発生原因は不明だが、遺伝や食生活、腸内環境が関わっているとされる。モデルの高橋メアリージュンらが罹患をカミングアウトしている。
取材・文/週刊SPA!編集部