定年後、2000万円で「地方に移住」した夫婦…その「ヤバすぎる末路」 一夜にして景観が…

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コロナ禍の前後から「地方移住ブーム」に拍車がかかっている。ブームが加速すればするほど、これまでになかった問題が噴出するのが世の常である。当然、移住(や二拠点生活を選択)したはいいものの、ブームのなか発生した新たな問題に頭を悩ませる人も目立つようになっている。
コロナ禍前から退職後にゆったりとした時間を…と考え、地方移住あるいは二拠点生活を検討していた都心のT夫妻の例は悲惨であった。
その御夫妻は、地元集落での移住の問題点–つまり現地の人々とルールなどで折り合えず、トラブルに巻き込まれてしまうといった問題–を理解したうえで、現地の人の居住地域からは少し離れた、とある別荘地内に2000万円ほどで物件を購入して、週末のたびに来訪しては豊かな自然を楽しんでいた。
美しい景観は、老後を迎えた夫婦二人にとってこの上ない癒しになっていた。
〔PHOTO〕iStock
しかし、ある週末のことであった。夜になればフクロウの啼く豊かな森であった別宅の正面は突如として漠陵とした土砂むき出しの風景に一変していた。ほどなく、週末であってもおかまいなしの土木工事が始まった。美しい風景を楽しみたくて大枚をはたいて別荘を買ったのに–。しかしそもそも、別荘地では週末や御盆や正月などの行楽期における工事は禁止されているはず、しかもその一帯は別荘地として管理会社が管理しており、規約によって乱暴な開発や工事が禁止されているはずだ。そのことは移住の前に、物件を購入する地域を決める時点で簡単に確認しておいた。それなのに、いったいなぜそんなことが起きてしまうのか…。その理由は、昨今のブームと深い関係がある。地方移住の営業がたけなわ二拠点居住がブームとなって以来、当然、不動産・建設業界は黙って指を加えているわけではない。大手住宅メーカーが相次いで田舎暮らし市場に参入している。誰もが知る大手が別ブランドを打ち出し、田舎暮らし需要に密着した営業展開がたけなわだ。かねてから移住人気の高い、長野や山梨の山林は、ここ十年来、かつてないほどの勢いで伐採が進み、山林景観が日々変貌するスピードは、すさまじいものがある。あれっ、ここって昨日と同じ道だったっけ、と思わされるほどに、一夜にして森が更地に姿を変えていく。その眺めはさながら、高度経済成長期に多摩丘陵を開拓して多摩ニュータウンへと変貌させた頃を彷彿とさせる。〔PHOTO〕iStock 開発するのは、従来の不動産業者やデベロッパーだけではない。コロナ禍におけるブームは、異業種からの参入も盛んにさせた。もとよりどの業種も売り上げ減少に見舞われており、マスクや医療材料を除けば、唯一ともいえるホットなビジネスになったのが、二拠点居住、テレワークといった産業キーワードであったのだから当然だろう。稼げる場所と稼げる分野に、企業はなだれ込んでくる。こうした異業種参入組のうちの一部業者の最大の問題は、勢いだけでの開発のため、地元との信頼関係や地元の意向に対する配慮がまったくないことである。法律で許されているんだからいいだろう–。所有権があるんだから、どう開発しようが勝手–。しかし、日本の山林は「入会権」の対象となるなど、その所有権は集落の共有財産として守られてきた。市町村の一部などが施設を管理する、いわゆる「財産区」が設定されていることも多い。開発業者が山林開発をする場合、こうした財産区と隣接した土地であることが多い。そうした土地を開発する際には、当然、景観や騒音への配慮など繊細さが求められる。しかしなかには、そもそも所有権を盾に地元住民との対話を拒否する業者、あるいは不文律として守られてきた景観保護や環境保全などの地元意向にはまったく配慮しない業者がおり、地元住民は手を焼くことになる。 異業種参入組はさらに、山林宅地開発のノウハウが乏しい。利益率を追い求めるため、本来は一軒の物件を建てるのが適切な場所に、手前、奥と二軒建てるくらいの間隔で密集住宅地を開発しようとする。こうした業者が引き起こしてしまったさらなる惨状については、【後編】「「地方移住」した元外資の60代男性、移住先で「嫌われまくった」ワケ」でお伝えしていこう。
しかし、ある週末のことであった。
夜になればフクロウの啼く豊かな森であった別宅の正面は突如として漠陵とした土砂むき出しの風景に一変していた。
ほどなく、週末であってもおかまいなしの土木工事が始まった。美しい風景を楽しみたくて大枚をはたいて別荘を買ったのに–。
しかしそもそも、別荘地では週末や御盆や正月などの行楽期における工事は禁止されているはず、しかもその一帯は別荘地として管理会社が管理しており、規約によって乱暴な開発や工事が禁止されているはずだ。そのことは移住の前に、物件を購入する地域を決める時点で簡単に確認しておいた。それなのに、いったいなぜそんなことが起きてしまうのか…。
その理由は、昨今のブームと深い関係がある。
二拠点居住がブームとなって以来、当然、不動産・建設業界は黙って指を加えているわけではない。
大手住宅メーカーが相次いで田舎暮らし市場に参入している。誰もが知る大手が別ブランドを打ち出し、田舎暮らし需要に密着した営業展開がたけなわだ。
かねてから移住人気の高い、長野や山梨の山林は、ここ十年来、かつてないほどの勢いで伐採が進み、山林景観が日々変貌するスピードは、すさまじいものがある。あれっ、ここって昨日と同じ道だったっけ、と思わされるほどに、一夜にして森が更地に姿を変えていく。
その眺めはさながら、高度経済成長期に多摩丘陵を開拓して多摩ニュータウンへと変貌させた頃を彷彿とさせる。
〔PHOTO〕iStock
開発するのは、従来の不動産業者やデベロッパーだけではない。コロナ禍におけるブームは、異業種からの参入も盛んにさせた。もとよりどの業種も売り上げ減少に見舞われており、マスクや医療材料を除けば、唯一ともいえるホットなビジネスになったのが、二拠点居住、テレワークといった産業キーワードであったのだから当然だろう。稼げる場所と稼げる分野に、企業はなだれ込んでくる。こうした異業種参入組のうちの一部業者の最大の問題は、勢いだけでの開発のため、地元との信頼関係や地元の意向に対する配慮がまったくないことである。法律で許されているんだからいいだろう–。所有権があるんだから、どう開発しようが勝手–。しかし、日本の山林は「入会権」の対象となるなど、その所有権は集落の共有財産として守られてきた。市町村の一部などが施設を管理する、いわゆる「財産区」が設定されていることも多い。開発業者が山林開発をする場合、こうした財産区と隣接した土地であることが多い。そうした土地を開発する際には、当然、景観や騒音への配慮など繊細さが求められる。しかしなかには、そもそも所有権を盾に地元住民との対話を拒否する業者、あるいは不文律として守られてきた景観保護や環境保全などの地元意向にはまったく配慮しない業者がおり、地元住民は手を焼くことになる。 異業種参入組はさらに、山林宅地開発のノウハウが乏しい。利益率を追い求めるため、本来は一軒の物件を建てるのが適切な場所に、手前、奥と二軒建てるくらいの間隔で密集住宅地を開発しようとする。こうした業者が引き起こしてしまったさらなる惨状については、【後編】「「地方移住」した元外資の60代男性、移住先で「嫌われまくった」ワケ」でお伝えしていこう。
開発するのは、従来の不動産業者やデベロッパーだけではない。
コロナ禍におけるブームは、異業種からの参入も盛んにさせた。もとよりどの業種も売り上げ減少に見舞われており、マスクや医療材料を除けば、唯一ともいえるホットなビジネスになったのが、二拠点居住、テレワークといった産業キーワードであったのだから当然だろう。
稼げる場所と稼げる分野に、企業はなだれ込んでくる。
こうした異業種参入組のうちの一部業者の最大の問題は、勢いだけでの開発のため、地元との信頼関係や地元の意向に対する配慮がまったくないことである。
法律で許されているんだからいいだろう–。所有権があるんだから、どう開発しようが勝手–。
しかし、日本の山林は「入会権」の対象となるなど、その所有権は集落の共有財産として守られてきた。市町村の一部などが施設を管理する、いわゆる「財産区」が設定されていることも多い。
開発業者が山林開発をする場合、こうした財産区と隣接した土地であることが多い。そうした土地を開発する際には、当然、景観や騒音への配慮など繊細さが求められる。しかしなかには、そもそも所有権を盾に地元住民との対話を拒否する業者、あるいは不文律として守られてきた景観保護や環境保全などの地元意向にはまったく配慮しない業者がおり、地元住民は手を焼くことになる。
異業種参入組はさらに、山林宅地開発のノウハウが乏しい。利益率を追い求めるため、本来は一軒の物件を建てるのが適切な場所に、手前、奥と二軒建てるくらいの間隔で密集住宅地を開発しようとする。こうした業者が引き起こしてしまったさらなる惨状については、【後編】「「地方移住」した元外資の60代男性、移住先で「嫌われまくった」ワケ」でお伝えしていこう。
異業種参入組はさらに、山林宅地開発のノウハウが乏しい。利益率を追い求めるため、本来は一軒の物件を建てるのが適切な場所に、手前、奥と二軒建てるくらいの間隔で密集住宅地を開発しようとする。
こうした業者が引き起こしてしまったさらなる惨状については、【後編】「「地方移住」した元外資の60代男性、移住先で「嫌われまくった」ワケ」でお伝えしていこう。

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