日本は世界から「軍事大国」と見られている…日本が「戦争」に巻き込まれるかもしれない「驚愕の理由」

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広島・G7サミットの最大の成果のひとつは、アメリカやイギリス、フランスといった核保有国の首脳が平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花したことだった。「核なき平和な世界」を目指して、いよいよ世界が動き出したかのように見える。ネット上では「岸田さんはノーベル平和賞をもらえるかも」といった声まで上がっていた。
しかし現実は、そう単純ではない。岸田文雄首相がアメリカ雑誌『TIME』(5月12日発売号)の表紙を飾ったことは、むしろ日本の「防衛力強化」に注目が集まっていることを際立たせた。
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なにせ特集につけられたタイトルが、「日本の選択―岸田首相が長年の平和主義を放棄し、日本を真の軍事大国に変えることを望んでいる」だったのだ。外務省が抗議を行い、電子版では「岸田首相は平和主義だった日本に、国際社会の舞台でより積極的な役割を与えようとしている」に修正されたが、世界が岸田政権をどう見ているかがこれで明らかになったと言っていいだろう。
日本の動向に注目が集まる背景には当然、ロシアによるウクライナ侵攻や、中国の台頭、北朝鮮による核実験といった国際情勢の変化がある。と同時に、アメリカという覇権国家の力が弱まっているという現実も無視できない。
世界の歴史に目を向ければ、覇権国家が交代する可能性がある状況では、戦争の危機が高まることになる。ハーバード大学ケネディスクールの初代学長であるグレアム・アリソン教授が提唱している理論からも、この事実が見えてくる。アリソン氏は過去500年間の覇権争奪戦を分析、19世紀半ばにヨーロッパにおける陸の覇権国家がフランスからドイツに変わった時など16のケースを読み解いた。その結果、なんと12件が戦争に発展していたのだ。
覇権国家が移り変わる時に戦争が起きることを、アリソン氏は「トゥキディデスの罠」と名付けた。トゥキディデスは古代ギリシアの歴史家で、経済大国アテナイと軍事大国スパルタの対立についての記録を残した。両国は不戦条約を結ぶなど戦争の回避を試みたが失敗に終わり、30年近く続いたペロポネソス戦争を引き起こしてしまった。
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それから2400年以上経った現在でも、同じように人類は戦争の危機に立たされている。経済的にも、軍事的にも、中国が急成長を続けている。一方、アメリカは反発を強め、’18年に中国からの輸入品に25%もの関税率を課すと決めるなど、「貿易戦争」はすでに始まっている。
軍事力ではなく、経済的手段による「攻撃」は、専門用語で「エコノミック・ステイトクラフト」と呼ばれる。関税だけでなく、輸出拒否、輸入拒否(ボイコット)、資産凍結といった選択肢もある。現在のところ、日本の経済安全保障推進法では防衛的な措置が中心となっているが、米中摩擦の影響で、この枠組みがどう変化していくかも注視が必要だ。
いずれにせよ、地政学的に米中対立で最も被害を受けるのが日本であることは間違いない。人類が何度も陥ってきた「トゥキディデスの罠」を回避することはできるのか。G7サミットはゴールではなく、厳しい戦いの始まりにすぎないのだ。

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