カフェを開いた移住者の「告発」が大炎上、1億3000万回閲覧…「いじめだ」市に爆破予告も

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高知県土佐市で、移住者のSNSへの投稿が「大炎上」する騒動が起きている。
カフェの運営を巡って地元NPO法人とトラブルとなり、「退去を迫られた」と「告発」する内容で、1億回以上閲覧され、カフェが入居していた施設を所有する市に抗議が殺到。爆破予告も届いて小中学校が授業を取りやめる事態に発展した。SNSで告発するケースは近年目立つが、専門家からリスクを指摘する声が上がる。(北島美穂)
■退去求められ、ツイッターに投稿
土佐市の騒動のきっかけは5月10日、ツイッターで「崖っぷちカフェ店長」というアカウントが「田舎はどこもこうなんですか?」と投稿したことだった。
カフェは東京から移住した男性(43)が2016年4月、市内の観光施設に開業。同じく移住者の女性と店を運営していた。施設は市が所有し、地元のNPO法人が指定管理者となっている。
投稿主は女性で、NPO法人理事長から運営に介入されたり、暴言を受けたりし、昨年6月に市職員から退去を通告されたと主張。理事長は地元の有力者だとし、「市は理事長に頭が上がらない」「田舎にはありがちな話ですが、土地の有力者に従わなければならなかった」と書き込んでいた。
この投稿は瞬く間に拡散。閲覧回数は1億3000万回以上に上り、リツイート(転載)も20万回以上。過去にSNSで炎上したと呼ばれたケースの中でも、目立った数字となっている。
市には「移住者いじめだ」といった抗議のメールや電話が殺到し、これまでにメールは約1230件。「市内の教育施設に爆弾を仕掛けた」といった内容も含まれ、5月12日には市内12の小中学校の授業を取りやめ、下校時間を早めた。県警が威力業務妨害容疑で捜査している。
■「SNSの怖さを理解できてなかった」
カフェ代表者の男性は読売新聞の取材に、投稿内容は事実だとしながらも、「土佐市にネガティブなイメージがついてしまい、申し訳ない」と釈明。女性も「多くの方に知ってほしい思いから強い言葉で投稿してしまった。SNSの怖さを理解できておらず、反省している」と話した。カフェは5月中旬に営業を停止し、現在、弁護士を通してNPO法人や市と交渉しているという。
一方、土佐市の板原啓文市長は5月18日、ホームページで「多くの関係者にご迷惑をおかけし、大変申し訳ない」とした上で、移住者側の投稿について「事実と異なる部分も多数」と説明。NPO法人はSNSに「弁護士を通して交渉中にSNSに投稿された」と記し、取材には「事実関係を精査中」と回答した。
事実関係が確定しないまま、投稿は拡散し続け、騒動は収まる気配がない。浜田省司知事は24日の定例記者会見で「高知県は移住者に対して冷たいという誤解が生じかねない」と懸念を示した。
■投稿主が被害受けるケースも
SNSの普及で、誰でも情報発信できるようになり、トラブルを告発した投稿が、炎上するケースは少なくない。問題が解決することもあるが、投稿主が被害を受けることもある。
昨年4月には、熊本県の高校のサッカー部で、コーチが部員に暴力を振るう動画がSNSで拡散。コーチは暴行容疑で書類送検されたが、投稿した部員らの個人情報が、今もネット上に残り続けている。
ネットの中傷問題に詳しい国際大GLOCOMの山口真一准教授は「高知の件は『地元の有力者が弱い移住者をいじめた』というわかりやすい構図に反応し、個人の正義感から拡散しているのだろう」と分析する。
その上で、投稿内容が事実でも、私人の評判を著しくおとしめると名誉毀損(きそん)罪に問われる可能性があるとし、「SNSへの投稿にはリスクがあり、予測がつかない事態を引き起こすこともある。本来は、SNSに投稿される前に、話し合いなどで解決されるべきだ。閲覧する側も事実関係が整理されるまで推移を見守ることが大切で、過剰に抗議することは控えるべきだ。もし炎上が起きた際は、当事者や関係者は軽視せず、正確な情報を発信する必要がある」と話した。

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