前代未聞!町が「町長」を刑事告発 “名簿不正利用”で議会紛糾 名指しの元幹部「私に罪を押しつけているような感覚」

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神奈川県真鶴町で「町が町長を刑事告発する」という前代未聞の事態が起きました。自らの選挙に選挙人名簿を不正に利用した問題で辞職した前町長が、出直しの選挙で再び当選。しかし、次々と明らかにされる“不正利用”の実態に、町長から名指しされた関係者が次々と反論。混乱が続いています。 ◇16日午後3時、神奈川県の小田原警察署で「真鶴町」が刑事告発を行いました。その相手は、現職の松本一彦町長です。

「町が、トップである町長を刑事告発」――前代未聞の事態を追いかけました。 ◇騒動の始まりは、2021年10月に行われた松本町長の記者会見でした。真鶴町 松本一彦町長「選挙人名簿の流出をさせてしまったのは、私です」松本氏が不正に手を染めたのは2020年2月。町役場から有権者約6600人分の選挙人名簿を無断で持ち出しました。名簿にある住所や氏名を不正に利用して、町長選挙でハガキを送るなど選挙活動を行ったといいます。そしてその選挙で当選し、町長になりました。それから約1年後の2021年10月、不正が発覚したのです。松本一彦町長「選挙という公平公正であるべきものを冒涜(ぼうとく)する行為だ、それはもう間違いありません。町民の皆さま、職員の皆さん、日本の国民の皆さまに裏切るような行為をしたと思っております。本当に申し訳ございません」さらに町長はこの名簿を、町議会選挙に出馬した“町長に近い”3人の候補たちにもコピーして渡していました。3人のうち2人、岩本克美議員と青木健議員は当選しました。名簿を受け取った元町長 青木健議員「はじめは手土産だと思ったから」「『松本町長の持ってる資料、ある?』ということは、やりとりしたと思っています」「(中を)開けて見たときに『これマズイじゃん』と思ったから、処分した」不正入手した名簿だと分かり、利用せず捨てたと言います。もう1人の議員も、同様の答えをしています。しかし、松本町長は――松本一彦町長「『“コピーした物”があるので、もし良ければ使いますか?』と私は聞き方をした記憶があります」――“コピーした物”とは、選挙人名簿と伝えた?松本一彦町長「はい」「事前に選挙人名簿だと伝えた」とする松本町長に対して、議員らは「名簿を欲しいと言っていない」という。この5日後の2021年11月4日、また新しい話が出てきました。“6年前、町長選挙に立候補する青木議員のために、名簿を不正にコピーして渡した”というのです。――急に、これを思い出したのか?松本一彦町長「家に帰って、昔のこととかいろいろ家族と話をしているなかで、そういえば過去にあったなということを思いつきました」「どんどん話が大きくなってくるのが、ちょっと怖くなってしまってといいますか、私の弱いところだと思います。本当に申し訳ありません」青木議員を目の前にして発表した、新たな不正行為。――今回、青木議員を悪者にするために、この話を持ち出したのではないか?松本一彦町長「違います」青木議員「私にはそう聞こえますよ。私にはそう聞こえます」誰が本当のことを言っているのか…不正の実態は、はっきり見えてきませんでした。この日、松本町長は辞職しました。 ◇ところが翌月、町長選へ再出馬し、3人の候補と選挙を戦いました。すると…松本氏がわずかの差で当選。再び、町長の職に就くことになりました。松本一彦町長「死ぬ気で働きます!」しかし、これに納得できない人も…。経験のある役場の職員たちが相次いで辞職。これまで1割の職員が役場を去りました。2022年4月には、弁護士や学者で構成する第三者委員会が報告書を公表。横浜国立大学 板垣勝彦教授「個人情報保護の意識が高まっているにもかかわらず、こんなことが起きてしまったというのが、今回、前代未聞なわけです」加藤勝弁護士「本件の本質が民主主義の基礎を取り崩すくらいの重要なことであるのに、当事者の遵法(じゅんぽう)意識の低さはなんだろう、と。これは強く警告しないと、この町の民主主義はダメになる」第三者委員会は松本町長に対して、窃盗罪・建造物侵入罪・選挙の自由妨害罪・守秘義務違反の罪・買収罪の5つの罪に該当する可能性があるとして、町が町長を刑事告発すべきと提言しました。第三者委員会の調査では、新たな事実が…。松本町長は、名簿が保管されていた消防団の倉庫から名簿を持ち出して、約100メートル先にある町役場でコピーをしたといいます。実は、持ち出した名簿は“投票所で実際に使われた”もの。投票した人には赤線が引かれ、期日前投票をした人は「期」と書かれていたといいます。これが分かれば、よく投票に行く人だけに選挙運動を展開することも可能です。これに議会は紛糾。議員「ウソをついたっていうことだと思うんですけど、その自覚はありますでしょうか?」松本一彦町長「私が(投票した人に)線が引いてあるということについては、完全に頭の中から抜けてしまっていたということで、報告することができなかったというふうに思っています」議員「(投票行動が分かる名簿と)気がつかなかったのでしょうか?」松本一彦町長「その認識はございませんでした」さらに高まる不信感。6月、議会は松本町長に「辞職勧告決議」を可決。しかし町長は、“やれる限り続ける”として、辞職を拒みました。――なぜそこまで町長職にこだわる?松本一彦町長「私は自分が選んだ道を、自分ができるところまで頑張って進めていきたいというところだけですので」 ◇今回の“名簿の不正コピー問題”。町長の不正を一緒に行ったとされるのが、元町役場の幹部の尾森正氏です。尾森正氏「町長とは入庁したのが同期で、32年来の気の合う仲間でしたので、不徳の致すところだと反省しております」尾森氏は、2021年11月に懲戒免職になっています。ここで、第三者委員会の報告書にある松本町長の主張をもとに尾森氏の関与をまとめます。●2016年 松本氏とともに選挙人名簿を不正にコピー。青木氏へ渡す●2020年 松本町長とともに消防団の倉庫へ入り、選挙人名簿を持ち出して町役場でコピー●2021年 住民基本台帳のデータをプリントアウト 以前、松本町長が不正に取得した選挙人名簿とセットにして3人の候補者に渡すすべての不正に関わったとされる尾森氏。テレビとしては初めてインタビューに応じました。――2016年に名簿のコピーはした?尾森氏「え、なんで? やっていないことを一緒にやったって言われているって思ってました」2020年、松本町長と名簿をコピーした件は…。尾森氏「もう、がく然というか、呆(あき)れちゃったという。なぜ急に、こういうことを言い出しているんだろう…って。逆に私に罪を押しつけているような感覚を受けました」松本町長と尾森氏、どちらが本当なのか…事件の真相ははっきりしません。 ◇8月、町長が町民に対して説明する機会が初めて設けられました。そこに現れたのは…尾森氏です。尾森氏「『名簿の情報が古いから、どうにかならないか』と尋ねられました」「死亡者や転出者等のリストが(住基データで)出るかもしれませんと答えると、『やってくれますか』『お願いできますか?』ということを言われましたので――町長、こうした やりとり、覚えてらっしゃいますか?」松本一彦町長「全く覚えておりません。事実ではないと思います」町民「すごい…」尾森氏「私の顔を見ても、そうやって言えますか?」松本一彦町長「言えます。言えます。言えます」結局、議論はかみ合わないまま。町民は、うやむやな状態が続いていることにうんざりしています。町民「私から言わせると、泥棒ですよね? 泥棒した人が町長をやっているのが、私はどうしても許せない」「このように町の中が、意見が対立してあまりスムーズにいっていないということは、本当に悲しいことだと思います」「(町長は)コンプライアンスうんぬんって言っているけども…どうやって話を聞けばいいですかね、職員は」 ◇混乱が収まる気配がない、真鶴町の不正コピー問題。16日午後の会見で、告発状を提出した弁護士は、「告発の対象とした人物は、松本町長と尾森氏の2名です」と明らかにしました。告発状を提出した弁護士「遵法意識が低いからこのようなことが、責任感が軽くてですね、このような事態に至っているというのが一番の問題ではないかと」真鶴町の混乱は、まだまだ続きそうです。
神奈川県真鶴町で「町が町長を刑事告発する」という前代未聞の事態が起きました。自らの選挙に選挙人名簿を不正に利用した問題で辞職した前町長が、出直しの選挙で再び当選。しかし、次々と明らかにされる“不正利用”の実態に、町長から名指しされた関係者が次々と反論。混乱が続いています。

16日午後3時、神奈川県の小田原警察署で「真鶴町」が刑事告発を行いました。その相手は、現職の松本一彦町長です。
「町が、トップである町長を刑事告発」――前代未聞の事態を追いかけました。

騒動の始まりは、2021年10月に行われた松本町長の記者会見でした。
真鶴町 松本一彦町長「選挙人名簿の流出をさせてしまったのは、私です」
松本氏が不正に手を染めたのは2020年2月。町役場から有権者約6600人分の選挙人名簿を無断で持ち出しました。
名簿にある住所や氏名を不正に利用して、町長選挙でハガキを送るなど選挙活動を行ったといいます。そしてその選挙で当選し、町長になりました。
それから約1年後の2021年10月、不正が発覚したのです。
松本一彦町長「選挙という公平公正であるべきものを冒涜(ぼうとく)する行為だ、それはもう間違いありません。町民の皆さま、職員の皆さん、日本の国民の皆さまに裏切るような行為をしたと思っております。本当に申し訳ございません」
さらに町長はこの名簿を、町議会選挙に出馬した“町長に近い”3人の候補たちにもコピーして渡していました。
3人のうち2人、岩本克美議員と青木健議員は当選しました。
名簿を受け取った元町長 青木健議員「はじめは手土産だと思ったから」「『松本町長の持ってる資料、ある?』ということは、やりとりしたと思っています」「(中を)開けて見たときに『これマズイじゃん』と思ったから、処分した」
不正入手した名簿だと分かり、利用せず捨てたと言います。もう1人の議員も、同様の答えをしています。
しかし、松本町長は――
松本一彦町長「『“コピーした物”があるので、もし良ければ使いますか?』と私は聞き方をした記憶があります」
――“コピーした物”とは、選挙人名簿と伝えた?
松本一彦町長「はい」
「事前に選挙人名簿だと伝えた」とする松本町長に対して、議員らは「名簿を欲しいと言っていない」という。
この5日後の2021年11月4日、また新しい話が出てきました。“6年前、町長選挙に立候補する青木議員のために、名簿を不正にコピーして渡した”というのです。
――急に、これを思い出したのか?
松本一彦町長「家に帰って、昔のこととかいろいろ家族と話をしているなかで、そういえば過去にあったなということを思いつきました」「どんどん話が大きくなってくるのが、ちょっと怖くなってしまってといいますか、私の弱いところだと思います。本当に申し訳ありません」
青木議員を目の前にして発表した、新たな不正行為。
――今回、青木議員を悪者にするために、この話を持ち出したのではないか?
松本一彦町長「違います」
青木議員「私にはそう聞こえますよ。私にはそう聞こえます」
誰が本当のことを言っているのか…不正の実態は、はっきり見えてきませんでした。
この日、松本町長は辞職しました。

ところが翌月、町長選へ再出馬し、3人の候補と選挙を戦いました。すると…松本氏がわずかの差で当選。再び、町長の職に就くことになりました。
松本一彦町長「死ぬ気で働きます!」
しかし、これに納得できない人も…。経験のある役場の職員たちが相次いで辞職。これまで1割の職員が役場を去りました。
2022年4月には、弁護士や学者で構成する第三者委員会が報告書を公表。
横浜国立大学 板垣勝彦教授「個人情報保護の意識が高まっているにもかかわらず、こんなことが起きてしまったというのが、今回、前代未聞なわけです」
加藤勝弁護士「本件の本質が民主主義の基礎を取り崩すくらいの重要なことであるのに、当事者の遵法(じゅんぽう)意識の低さはなんだろう、と。これは強く警告しないと、この町の民主主義はダメになる」
第三者委員会は松本町長に対して、窃盗罪・建造物侵入罪・選挙の自由妨害罪・守秘義務違反の罪・買収罪の5つの罪に該当する可能性があるとして、町が町長を刑事告発すべきと提言しました。
第三者委員会の調査では、新たな事実が…。松本町長は、名簿が保管されていた消防団の倉庫から名簿を持ち出して、約100メートル先にある町役場でコピーをしたといいます。
実は、持ち出した名簿は“投票所で実際に使われた”もの。投票した人には赤線が引かれ、期日前投票をした人は「期」と書かれていたといいます。これが分かれば、よく投票に行く人だけに選挙運動を展開することも可能です。
これに議会は紛糾。
議員「ウソをついたっていうことだと思うんですけど、その自覚はありますでしょうか?」
松本一彦町長「私が(投票した人に)線が引いてあるということについては、完全に頭の中から抜けてしまっていたということで、報告することができなかったというふうに思っています」
議員「(投票行動が分かる名簿と)気がつかなかったのでしょうか?」
松本一彦町長「その認識はございませんでした」
さらに高まる不信感。6月、議会は松本町長に「辞職勧告決議」を可決。しかし町長は、“やれる限り続ける”として、辞職を拒みました。
――なぜそこまで町長職にこだわる?
松本一彦町長「私は自分が選んだ道を、自分ができるところまで頑張って進めていきたいというところだけですので」

今回の“名簿の不正コピー問題”。町長の不正を一緒に行ったとされるのが、元町役場の幹部の尾森正氏です。
尾森正氏「町長とは入庁したのが同期で、32年来の気の合う仲間でしたので、不徳の致すところだと反省しております」
尾森氏は、2021年11月に懲戒免職になっています。
ここで、第三者委員会の報告書にある松本町長の主張をもとに尾森氏の関与をまとめます。
●2016年 松本氏とともに選挙人名簿を不正にコピー。青木氏へ渡す
●2020年 松本町長とともに消防団の倉庫へ入り、選挙人名簿を持ち出して町役場でコピー
●2021年 住民基本台帳のデータをプリントアウト 以前、松本町長が不正に取得した選挙人名簿とセットにして3人の候補者に渡す
すべての不正に関わったとされる尾森氏。テレビとしては初めてインタビューに応じました。
――2016年に名簿のコピーはした?
尾森氏「え、なんで? やっていないことを一緒にやったって言われているって思ってました」
2020年、松本町長と名簿をコピーした件は…。
尾森氏「もう、がく然というか、呆(あき)れちゃったという。なぜ急に、こういうことを言い出しているんだろう…って。逆に私に罪を押しつけているような感覚を受けました」
松本町長と尾森氏、どちらが本当なのか…事件の真相ははっきりしません。

8月、町長が町民に対して説明する機会が初めて設けられました。そこに現れたのは…尾森氏です。
尾森氏「『名簿の情報が古いから、どうにかならないか』と尋ねられました」「死亡者や転出者等のリストが(住基データで)出るかもしれませんと答えると、『やってくれますか』『お願いできますか?』ということを言われましたので――町長、こうした やりとり、覚えてらっしゃいますか?」
松本一彦町長「全く覚えておりません。事実ではないと思います」
町民「すごい…」
尾森氏「私の顔を見ても、そうやって言えますか?」
松本一彦町長「言えます。言えます。言えます」
結局、議論はかみ合わないまま。町民は、うやむやな状態が続いていることにうんざりしています。
町民「私から言わせると、泥棒ですよね? 泥棒した人が町長をやっているのが、私はどうしても許せない」「このように町の中が、意見が対立してあまりスムーズにいっていないということは、本当に悲しいことだと思います」「(町長は)コンプライアンスうんぬんって言っているけども…どうやって話を聞けばいいですかね、職員は」

混乱が収まる気配がない、真鶴町の不正コピー問題。16日午後の会見で、告発状を提出した弁護士は、「告発の対象とした人物は、松本町長と尾森氏の2名です」と明らかにしました。
告発状を提出した弁護士「遵法意識が低いからこのようなことが、責任感が軽くてですね、このような事態に至っているというのが一番の問題ではないかと」

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