日本最大の農業協同組合である「JA」が、共済(保険)の営業ノルマを達成するため、職員自らが契約に加入したり、家族まで巻き込んで不必要な契約をさせる「自爆営業」が横行している。これまで全国いずれのJAも自爆営業の存在を否定してきた。だが、今回、ジャーナリストの窪田新之助氏が、入手した内部文書をもとに自爆営業の実態を「文藝春秋 電子版」で詳しく報じている。
【写真】この記事の写真を見る(3枚)筆者が入手したアンケート結果報告書(筆者提供)
〈自爆です! 助けてください。〉 内部文書とは「JAちばみどり」(千葉県旭市)が2021年12月23日から30日にかけて、全職員を対象に実施したアンケート調査の結果報告書だ。そこには自爆営業を強いられ、経済的な苦しみや身心的な負担に喘ぐ職員たちの生の声が赤裸々に記録されていた。 記述式の回答欄には以下のような苦情が綴られている。(引用は原文のまま記載。読みやすいように、句読点を補った)〈パワハラを通り越していると思います。12月のポイントは自爆です! 助けてください。お金いくら会社に払えばいいのでしょうか〉〈なぜ、年々目標設定が高くなっているのか? 目標設定が高いことで、押し売りになってしまう(契約が取れないことで、精神的に追い込まれる)。(中略)共済事業だけなぜ必達しなくてはならないのでしょうか? できない職員の苦しみをわかっていないのではないでしょうか〉〈共済などの自己加入を強制され、実質賃金は給与額面より大きく目減りします。給料を搾取されている感覚に近いです。共済で利益を取らないと回らないとは感じますが、他の事業で運営を安定させなければ、職員の離職率も止まらず、折角積み上げた人件費や教育費を捨てる事になります。職員の事をトカゲの尻尾切りの様に扱わないで下さい〉〈推進活動にLA(共済の営業職)皆さんが苦労され、12月末までに各自、多大な自己加入の実態も確認されております。なんとも残念でなりません。脅迫に近い状態で切羽詰まって追い込むなど、とんでもないことです。正気ですか?(中略)今感じていることは、ちばみどりにこれから先、将来が感じられないことと、LA、職員に対しての姿勢、扱いが大変酷いと感じています〉ノルマ達成できなければ「長時間叱責」 回答に出てくる「自己加入」とは自爆営業のことを指す。近年、JAは農業を中心とした事業では利益を上げられず、「信用(銀行)事業」と「共済事業」で稼ぐ“金融屋”の側面の方が強いという。 職員は共済商品の販売ノルマを達成できそうにないと、上司から呼び出され、長時間にわたって叱責されるケースもあるという。自分や家族を巻き込んで必要以上の契約を結び、それでも足りなければ、知人や友人から契約を取り、彼らの代わりに掛け金を自費で払う。そんな自爆営業への職員たちの苦しみがアンケートには克明に記録されている。「文藝春秋 電子版」の記事で窪田氏は、ほかにも年間350万円以上も自己負担する職員の声などを取り上げながら、JAの内情を詳らかにしている。◇情報提供は以下、窪田氏のメールアドレスまでご連絡ください。shinkubo1207@gmail.com(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 電子版オリジナル)
筆者が入手したアンケート結果報告書(筆者提供)
内部文書とは「JAちばみどり」(千葉県旭市)が2021年12月23日から30日にかけて、全職員を対象に実施したアンケート調査の結果報告書だ。そこには自爆営業を強いられ、経済的な苦しみや身心的な負担に喘ぐ職員たちの生の声が赤裸々に記録されていた。
記述式の回答欄には以下のような苦情が綴られている。(引用は原文のまま記載。読みやすいように、句読点を補った)
〈パワハラを通り越していると思います。12月のポイントは自爆です! 助けてください。お金いくら会社に払えばいいのでしょうか〉
〈なぜ、年々目標設定が高くなっているのか? 目標設定が高いことで、押し売りになってしまう(契約が取れないことで、精神的に追い込まれる)。(中略)共済事業だけなぜ必達しなくてはならないのでしょうか? できない職員の苦しみをわかっていないのではないでしょうか〉〈共済などの自己加入を強制され、実質賃金は給与額面より大きく目減りします。給料を搾取されている感覚に近いです。共済で利益を取らないと回らないとは感じますが、他の事業で運営を安定させなければ、職員の離職率も止まらず、折角積み上げた人件費や教育費を捨てる事になります。職員の事をトカゲの尻尾切りの様に扱わないで下さい〉〈推進活動にLA(共済の営業職)皆さんが苦労され、12月末までに各自、多大な自己加入の実態も確認されております。なんとも残念でなりません。脅迫に近い状態で切羽詰まって追い込むなど、とんでもないことです。正気ですか?(中略)今感じていることは、ちばみどりにこれから先、将来が感じられないことと、LA、職員に対しての姿勢、扱いが大変酷いと感じています〉ノルマ達成できなければ「長時間叱責」 回答に出てくる「自己加入」とは自爆営業のことを指す。近年、JAは農業を中心とした事業では利益を上げられず、「信用(銀行)事業」と「共済事業」で稼ぐ“金融屋”の側面の方が強いという。 職員は共済商品の販売ノルマを達成できそうにないと、上司から呼び出され、長時間にわたって叱責されるケースもあるという。自分や家族を巻き込んで必要以上の契約を結び、それでも足りなければ、知人や友人から契約を取り、彼らの代わりに掛け金を自費で払う。そんな自爆営業への職員たちの苦しみがアンケートには克明に記録されている。「文藝春秋 電子版」の記事で窪田氏は、ほかにも年間350万円以上も自己負担する職員の声などを取り上げながら、JAの内情を詳らかにしている。◇情報提供は以下、窪田氏のメールアドレスまでご連絡ください。shinkubo1207@gmail.com(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 電子版オリジナル)
〈なぜ、年々目標設定が高くなっているのか? 目標設定が高いことで、押し売りになってしまう(契約が取れないことで、精神的に追い込まれる)。(中略)共済事業だけなぜ必達しなくてはならないのでしょうか? できない職員の苦しみをわかっていないのではないでしょうか〉
〈共済などの自己加入を強制され、実質賃金は給与額面より大きく目減りします。給料を搾取されている感覚に近いです。共済で利益を取らないと回らないとは感じますが、他の事業で運営を安定させなければ、職員の離職率も止まらず、折角積み上げた人件費や教育費を捨てる事になります。職員の事をトカゲの尻尾切りの様に扱わないで下さい〉
〈推進活動にLA(共済の営業職)皆さんが苦労され、12月末までに各自、多大な自己加入の実態も確認されております。なんとも残念でなりません。脅迫に近い状態で切羽詰まって追い込むなど、とんでもないことです。正気ですか?(中略)今感じていることは、ちばみどりにこれから先、将来が感じられないことと、LA、職員に対しての姿勢、扱いが大変酷いと感じています〉
ノルマ達成できなければ「長時間叱責」 回答に出てくる「自己加入」とは自爆営業のことを指す。近年、JAは農業を中心とした事業では利益を上げられず、「信用(銀行)事業」と「共済事業」で稼ぐ“金融屋”の側面の方が強いという。 職員は共済商品の販売ノルマを達成できそうにないと、上司から呼び出され、長時間にわたって叱責されるケースもあるという。自分や家族を巻き込んで必要以上の契約を結び、それでも足りなければ、知人や友人から契約を取り、彼らの代わりに掛け金を自費で払う。そんな自爆営業への職員たちの苦しみがアンケートには克明に記録されている。「文藝春秋 電子版」の記事で窪田氏は、ほかにも年間350万円以上も自己負担する職員の声などを取り上げながら、JAの内情を詳らかにしている。◇情報提供は以下、窪田氏のメールアドレスまでご連絡ください。shinkubo1207@gmail.com(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 電子版オリジナル)
回答に出てくる「自己加入」とは自爆営業のことを指す。近年、JAは農業を中心とした事業では利益を上げられず、「信用(銀行)事業」と「共済事業」で稼ぐ“金融屋”の側面の方が強いという。
職員は共済商品の販売ノルマを達成できそうにないと、上司から呼び出され、長時間にわたって叱責されるケースもあるという。自分や家族を巻き込んで必要以上の契約を結び、それでも足りなければ、知人や友人から契約を取り、彼らの代わりに掛け金を自費で払う。そんな自爆営業への職員たちの苦しみがアンケートには克明に記録されている。
「文藝春秋 電子版」の記事で窪田氏は、ほかにも年間350万円以上も自己負担する職員の声などを取り上げながら、JAの内情を詳らかにしている。
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情報提供は以下、窪田氏のメールアドレスまでご連絡ください。shinkubo1207@gmail.com
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 電子版オリジナル)