ゴールデンウイークが明けた5月8日23時、本誌記者は西武新宿駅正面口に降り立った。駅前広場で缶チューハイを呷る学生らしき集団を尻目に、駅前通りを3分ほど進むと、4月14日に新宿ミラノ座跡地で開業したばかりの東急歌舞伎町タワーが眼前に現れる。
地上48階建て、地下5階の複合施設で映画館、ホテル、ウェルネスクラブ、劇場、飲食店などを備える歌舞伎町の新たなシンボルだ。
入り口を抜け、2階へのエレベーターを上がるとネオンが煌めく飲食エリアがある。その中心にはDJブースがあり、大音量で音楽が流れる。スクリーンには’80年代アイドル達が次々と映し出され、周囲は音に合わせて肩を揺らす若者で埋め尽くされていた。その光景はどこか海外のフェスティバルのようだ。
同じフロアには、連日メディアで物議をかもしているジェンダーレストイレがある。男性、女性関係なく利用でき、性的マイノリティにも配慮したトイレだ。入り口に立つ警備員に話を聞いた。
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「マスコミに報道されてから常に大勢の人が来ています。ただ、酔っ払った人がトイレ前で寝てしまったり、間に合わずに漏らしてしまったり、『開けろ』と怒鳴って暴れる人がいたりと、毎日、騒動ばかりです」
歌舞伎町タワーを出ると真向かいには、新宿のもう一つのシンボルで、新宿コマ劇場跡地にできたTOHOシネマズ新宿が姿を見せる。その屋上からはゴジラ像が顔を出し、行き交う人々を見下ろしている。
映画館のビルに沿って反時計回りに進むと、細く、薄暗い通りに出る。その奥には
「I歌舞伎町」と書かれたネオン看板が怪しげな光を放っている。路肩には未成年にしか見えない少年少女たちが地べたに座りながら、煙草を吸ったり、チューハイのストロング缶にストローを挿して飲んでいたりしていた。
この通りは’21年頃から「トー横キッズ」と呼ばれる未成年者のたまり場として有名だ。彼らは複雑な家庭環境などが原因で歌舞伎町に行きつき、その日暮らしをしている者が多い。そのため、売春で生活費を稼いでいる少女も少なくない。記者が目を留めたのは、通りの途中にあるローソンの入り口で座り込む少女の姿だった。黒いミニスカートにフリルの付いた白いシャツを着ていた。その素朴な顔立ちは女優の芳根京子に似ていなくもない。手には大きなスーツケースを持っていた。おそらく家出少女なのだろう。強姦され、1週間軟禁彼女の様子を見ていると、30代半ばらしきグレーのスーツを着た中年男性が話しかけた。2分ほど言葉を交わした後、男性は去っていったが、彼女はなおもコンビニ前で座り続ける。本誌記者がなぜここにいるのか尋ねてみると、怪訝そうな表情で「別にどこも行く場所がないから」と答え、こう続けた。「ウチは『毒親』で、成績が悪いと私を部屋に閉じ込めたり、殴ったりしてくるから1年前にここに逃げてきた。昼はネットカフェで過ごして、夜は自分で客を取ってウリ(売春のこと)をしてます。さっきの人は『泊めてあげる』って言ってきたけど、断りました。半年前、怖い思いをしたから男の家には行かないようにしてるんです」photo by gettyimagesナツキと名乗った彼女は今年18歳になるという。そんな彼女は半年前、SNSで出会った20代後半のサラリーマン男性の家に泊まりに行ったことがある。3ヵ月以上やりとりをしていたから安心して食事に行き、その後、家に行ったが、部屋に入った途端に彼の態度が豹変したという。「いきなり押し倒されて、『メシも奢ったし、寝床も提供するから代価を支払え』と言われ、服を無理やり脱がされました。そのまま強姦されたんですが、最中も首を絞めてきたり、ビンタされたりして怖くて抵抗も出来なかった。避妊もしてくれなかった。 彼は在宅勤務で、その後1週間、軟禁されました。スマホは取り上げられ、夜になると襲われる日々でした。結局、荷物とスマホを諦め、彼の入浴中に逃げました」本誌記者がどうして警察に通報しなかったのかと聞くと、彼女は「通報したら警察に保護されて家に帰らなきゃいけないじゃん。危なくても歌舞伎町のほうがまだマシ」と素っ気なく答えた。この前編記事では歌舞伎町に集まる女性の現実について実際のインタビューなどを通して紹介した。続く後編記事『「1人かと思ったら4人で…」「殺されてもおかしくない」…新宿歌舞伎町でいたいけな少女たちが「立ちんぼ」を続ける理由』では危険と隣り合わせの「立ちんぼ」たちの日常についてさらに解説していく。
この通りは’21年頃から「トー横キッズ」と呼ばれる未成年者のたまり場として有名だ。彼らは複雑な家庭環境などが原因で歌舞伎町に行きつき、その日暮らしをしている者が多い。そのため、売春で生活費を稼いでいる少女も少なくない。
記者が目を留めたのは、通りの途中にあるローソンの入り口で座り込む少女の姿だった。黒いミニスカートにフリルの付いた白いシャツを着ていた。その素朴な顔立ちは女優の芳根京子に似ていなくもない。手には大きなスーツケースを持っていた。おそらく家出少女なのだろう。
彼女の様子を見ていると、30代半ばらしきグレーのスーツを着た中年男性が話しかけた。2分ほど言葉を交わした後、男性は去っていったが、彼女はなおもコンビニ前で座り続ける。本誌記者がなぜここにいるのか尋ねてみると、怪訝そうな表情で「別にどこも行く場所がないから」と答え、こう続けた。
「ウチは『毒親』で、成績が悪いと私を部屋に閉じ込めたり、殴ったりしてくるから1年前にここに逃げてきた。昼はネットカフェで過ごして、夜は自分で客を取ってウリ(売春のこと)をしてます。さっきの人は『泊めてあげる』って言ってきたけど、断りました。半年前、怖い思いをしたから男の家には行かないようにしてるんです」
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ナツキと名乗った彼女は今年18歳になるという。そんな彼女は半年前、SNSで出会った20代後半のサラリーマン男性の家に泊まりに行ったことがある。3ヵ月以上やりとりをしていたから安心して食事に行き、その後、家に行ったが、部屋に入った途端に彼の態度が豹変したという。
「いきなり押し倒されて、『メシも奢ったし、寝床も提供するから代価を支払え』と言われ、服を無理やり脱がされました。そのまま強姦されたんですが、最中も首を絞めてきたり、ビンタされたりして怖くて抵抗も出来なかった。避妊もしてくれなかった。
彼は在宅勤務で、その後1週間、軟禁されました。スマホは取り上げられ、夜になると襲われる日々でした。結局、荷物とスマホを諦め、彼の入浴中に逃げました」本誌記者がどうして警察に通報しなかったのかと聞くと、彼女は「通報したら警察に保護されて家に帰らなきゃいけないじゃん。危なくても歌舞伎町のほうがまだマシ」と素っ気なく答えた。この前編記事では歌舞伎町に集まる女性の現実について実際のインタビューなどを通して紹介した。続く後編記事『「1人かと思ったら4人で…」「殺されてもおかしくない」…新宿歌舞伎町でいたいけな少女たちが「立ちんぼ」を続ける理由』では危険と隣り合わせの「立ちんぼ」たちの日常についてさらに解説していく。
彼は在宅勤務で、その後1週間、軟禁されました。スマホは取り上げられ、夜になると襲われる日々でした。結局、荷物とスマホを諦め、彼の入浴中に逃げました」
本誌記者がどうして警察に通報しなかったのかと聞くと、彼女は「通報したら警察に保護されて家に帰らなきゃいけないじゃん。危なくても歌舞伎町のほうがまだマシ」と素っ気なく答えた。
この前編記事では歌舞伎町に集まる女性の現実について実際のインタビューなどを通して紹介した。続く後編記事『「1人かと思ったら4人で…」「殺されてもおかしくない」…新宿歌舞伎町でいたいけな少女たちが「立ちんぼ」を続ける理由』では危険と隣り合わせの「立ちんぼ」たちの日常についてさらに解説していく。