「女性従業員が男性に刺された」
東京都台東区の風俗店から110番通報が入ったのは、「こどもの日」の昼前だった。警察官が店にかけつけると、個室の風呂場に足を向けて倒れている女性が。近くのエレベーターホールでは、男が腹から血を流していた。
5月13日、警視庁浅草署は殺人の疑いで警備会社の契約社員・今井裕容疑者(32)を逮捕した。5月5日の午前11時前後に「吉原」とよばれる風俗店街で、女性従業員のAさん(38)の首や腹などをメッタ刺しにしたという。Aさんは病院に搬送されたが死亡が確認された。死因は大量の失血だった。
「今井容疑者は持っていたサバイバルナイフで、Aさんを刺殺したようです。おそらく自殺を図ったのでしょう。犯行後は、自分の腹を深さ5cmほど刺したといいます。警察は入院した今井容疑者の回復を待って、事件から8日後の13日に逮捕しました」(全国紙社会部記者)
今井容疑者は「女性を殺してしまったことに間違いない」と、犯行を認めている。動機は一方的で独りよがりなものだった。
「今井容疑者は、Aさんが務める風俗店に昨年3月から複数回訪れていたことがわかっています。そのたびにAさんを指名していたとか。しかし今年1月、Aさんから『もう予約はできない』と告げられたそうです。なんらかのトラブルが起き、今井容疑者は『出禁』になったのでしょう。
犯行当日、今井容疑者は偽名を使い自身のものとは違う携帯電話から店を予約します。顔なじみの店員に気づかれないよう、変装までしていたとか。Aさんを殺害した動機について、次のような供述をしているそうです。『急に予約ができないと言われた。自分は先の見えない生活をしているにもかかわらず、彼女がきらびやかな人生をおくっていることに殺害が芽生えた。人生を奪ってやろうと思った』と」(同前)
今井容疑者の「先の見えない」人生とは、どんなものだったのだろうか。
「今井容疑者は群馬県富岡市で生まれました。高校は帰宅部でゲームばかりしていたそうです。高校卒業後、地元の企業に就職し上京したのは数年前。東京では警備会社の契約社員として働き社員寮に入っていましたが、周囲とのコミュニケーションはほとんどなかったといいます。
他の社員が挨拶してもたいがい無視し、常に思い悩んでいるように暗い印象だったとか。相談できる友人も少なかったのでしょう。風俗店に通い好みのAさんに会うのが、唯一の楽しみだったのかもしれません」(同前)
いくら大きな悩みを抱えていても、人の命を奪って良い理由には決してならない。警察は、今井容疑者が「出禁」になった詳しい理由などについて調べを進めている。