”被害女性”はすでに亡くなり…18年前に全国的な話題になった”騒音おばさん”のいま

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「騒音問題」が全国あちこちで起きている。長野県長野市では近隣住民からの騒音苦情がきっかけとなり、学童保育施設の子どもたちの遊び場だった「青木島遊園地」の廃止が決定。4月17日から公園の遊具の撤去工事などが始まっている。
そんな「騒音問題」の代表格とも言える騒動が起きたのは、18年前のことだ。CDラジカセで大音量の音楽を流し、ベランダに干した布団をバンバンたたきながら鬼の形相で「引っ越し、引っ越し、さっさと引っ越し、しばくぞ」と吠える中年女性の映像を覚えている方も多いだろう。’05年4月、連日ワイドショーで取り上げられていた「騒音おばさん」こと奈良県平群町の主婦Aさんのことである。
発端は些細な行き違いだったが、Aさんの嫌がらせは次第にエスカレートしていき、近くに住む女性に不眠や頭痛を与えたとして傷害容疑で逮捕された。被害者側が撮影したといわれる映像はネットでも拡散し、Aさんの顔は誰もが知るところに。バラエティ番組ではパロディにされ、のちには事件をモチーフとした映画も製作された。
前代未聞の隣人トラブルは’07年4月に最高裁で懲役1年8ヵ月の実刑判決が下され、一応の決着をみた。だが、Aさんは一貫して「私は悪くない」という姿勢を崩さなかった。あれから18年、Aさんの心は静まったのか。事件の現場を訪れた。
奈良の北西部にある平群町。丘陵に広がる住宅街は穏やかな空気に包まれていた。住民が現在の状況について説明する。
「実は、騒音を訴えた奥さんはすでに亡くなりました。一方で、Aさんはいまもあの家に暮らしています。さすがに年をとりましたが、強面はあのままです。ただ、以前のように騒音をまき散らすことはなくなり、私たちにも平穏な日常が戻っています」
事件当初、Aさんを一方的に責める声が相次いだが、裁判の過程でAさんが難病の家族を抱えて心身ともに疲弊していたことも明らかになった。事情を知る住民のなかには同情する声もあったという。
「とはいえ、住民間のしこりはいまだ消えません。Aさんは悪い人ではありませんが、気性の激しいところがあります。しかも、何が引き金になるのか、どこで怒りのスイッチが入るかわかりません。極力かかわらないように、気になることがあっても静観するだけです。あなたもそっとしておいたほうがいいですよ」(前出の住民)
事件後どう過ごしてきたのか。騒ぎ立てたメディアに対して何を思うか。取材の趣旨を記した手紙を郵便受けに投函していると、裏手からテレビの音が漏れてきた。統一地方選における日本維新の会の躍進を伝えるテレビ朝日・大下容子アナの声だが、近隣住民が注意してもおかしくないほどのボリュームだ。
音漏れするほうに向かうと、ベランダに見覚えのある顔があった。ラフなTシャツにジャージのパンツ、髪の毛を後ろで結んだAさんだ。以前より痩せたようにみえるが、雰囲気はあまり変わっていない。
丁重に頭を下げて声をかけたが、Aさんは記者をジッと睨みつけるだけで、言葉を発することなく掛布団を日干ししていく。無言だが、その目からは敵意がしっかりと伝わってくる。その迫力にたじろぎながらも手紙を投函したことを伝えると、Aさんはおもむろに背を向ける。次の瞬間、布団たたきを手に取り、ミッキーマウスの掛布団を力いっぱいたたき始めた。静かな住宅街にパンパンパンパンパンという大きな音が響き渡る。
布団をたたき続けること1分。結局何も言葉を発しないままAさんは部屋のなかに入ってしまったが、しばらくするとAさんに呼び出された警察官が現れた。ここからAさんは態度を一変させる。玄関に出てきたAさんは本誌記者を指差しながら物凄い剣幕で警察官に、「あいつが何度も『出てこい、出てこい』言うて」と訴えている。もちろんそんなことは言っていないが、「手紙? そんなん破いて捨てる」と取りつく島もない。
「こういう状況ですので帰ったほうがいいですよ」
警察官から言われてその場をあとにするしかなかった。
前出の住民が明かす。
「スーパーなどでAさんを見かけますが、こちらが会釈しても目を合わせません。誰とも接する気はないようです」
閑静な住宅街の一角に建つAさんの自宅は、計3台の防犯カメラが玄関先と裏手を監視しており、玄関の周囲には物々しい有刺鉄線が張り巡らされていた。

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