観光地で広がる「宿泊税」、独自財源で探る振興策…「宿泊客減るのでは」懸念も

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新型コロナウイルス関連の制限緩和による観光需要の高まりを受け、自治体で「宿泊税」を導入する動きが広がっている。
人口減少で税収が減る中、独自財源の確保策として注目されるが、コロナ禍で下火になっていた。収入は主に観光振興に使われるが、実質的な値上げになるため慎重な意見もある。(田ノ上達也)
■好循環を期待
宿泊税条例を昨年3月に設けた長崎市は、コロナの感染状況を踏まえ、今月1日から課税を始めた。税額は宿泊料金に応じて1人1泊あたり100~500円。初年度は約3億7000万円の税収を見込んでおり、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の展示施設整備や体験型プランづくりの支援に充てる方針だ。
コロナ禍前は年間約270万人だった宿泊客も、21年は約114万人に減っている。担当者は「訪れた人の満足度や利便性を高めることで、さらに宿泊客が増えるという好循環につなげたい」と話す。
国際的なスキーリゾートとして知られる北海道ニセコ町は3月、宿泊料金の2%を徴収する定率制の宿泊税導入を目指すと発表した。宿泊事業者らの意見を踏まえ、今年度中にも条例案を議会に提出する計画だ。試算では、宿泊客がコロナ禍前の水準まで回復すれば年間2億円の税収を期待できる。地域交通の整備や、災害や感染症の影響を受けた事業者を支援する基金の創設などに使うという。
松江市は導入を検討する有識者会議を今年度中に設ける方針で、担当者は「観光という重要な産業を伸ばすには新たな財源の確保が必要だ」と話す。
■客の減少懸念
ただ、コロナ禍で大きな打撃を受けた観光地には慎重な意見もある。
静岡県熱海市は1人1泊200円を徴収する条例案を昨年11月にまとめ、市民や事業者の意見を募ったところ、「近隣の温泉地に流れて宿泊客が減るのではないか」「(税収を充てる事業が分からず)使途が不透明だ」などの懸念が相次いだ。諮問機関も丁寧な説明を求め、市は2月議会への提案を見送った。
神奈川大の青木宗明教授(租税論)は「自治体が独自に設ける税なので、地元に十分説明して合意を得る必要がある。導入後も使途を明確に示すことが重要だ」と指摘する。
◆宿泊税=自治体が総務相の同意を得て徴収できる法定外目的税の一つ。ホテルなどの宿泊客が対象で、税率や使途を条例で定める。東京都が2002年に初めて導入した。総務省によると、今月1日現在、東京、大阪、福岡の3都府県と、金沢、京都、福岡、北九州、長崎の5市、北海道倶知安町に広がっている。

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