北海道・知床半島沖で26人を乗せた観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故から、23日で1年。
地元斜里町役場に設けられた献花台には、現在も途切れることなく花束が届き続けている。乗客の家族に接した町職員や、献花台を管理する職員は「事故を忘れてはいけない」「込められた願いを大切にしなければ」と思いを強くする。
町地域福祉課の玉置創司さん(46)は昨年4月23日夕方、上司から「大変なことになった」と連絡を受けた。翌日の明け方に乗客発見の知らせが入ると、安置所の準備に追われた。安置所で聞いた乗客の家族の声が今も耳に残り、「言葉にならない声というか、怒号というか。(遺体を)見たということが廊下からでも分かる声だった」と振り返る。
町は、安置所となった体育館に献花台を設置。玉置さんは「乗船者への思いをささげる場所が必要だった」と話す。台には収まりきらないほど多くの花が供えられ、献花台が役場庁舎に移された後も、花が届かない週はなかった。事故から1年となるが「区切りはつかない。町の事業者が起こした事故。忘れてはいけないし、町の教訓にしなければ」と力を込めた。
事故当初から献花の管理をし続けてきた保健師の茂木千歳さん(57)は、町内外から訪れるさまざまな人の思いに接してきた。「もっと話しておけばよかった」「もういないのが信じられない」とのメッセージカードが花に添えられることもあれば、献花台を見て涙ながらに礼を言う乗客の家族もいた。事故で息子を亡くした父親からは「命は取り返せないが、もう一回町に来たいと思えるぐらいに、信頼回復のため頑張って」と励まされた。
「『見つかってほしい』『安らかに眠ってほしい』。そういった願いのこもった花を大切にしたい」と茂木さん。23日の追悼式でも献花台を担当する予定だ。「いつも通り感謝をして、込められた思いを大事にして扱う。それが私たちのできること」と語った。