選挙活動中のマスクに悩む立候補予定者、外したら「高齢者のことを考えろ」…着けても非難

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東京都内での統一地方選の告示を16日に控え、新型コロナウイルスの感染対策を巡り、立候補予定者が頭を悩ませている。
マスク着用などの対策が緩和され、徐々に屋内外でマスクを外す人が増える一方、街頭活動をマスクなしで行うと、感染を警戒する有権者から非難されるケースがあるからだ。知名度を高めるため、素顔で演説や握手をしたいところだが、どこまで感染対策が必要なのか。模索が続いている。(大原圭二、大前勇)
■「顔覚えてほしい」
「安心して暮らせる住みよい地域にしていきたい!」――。
都内の駅前で7日午前8時頃、ある区議選に立候補予定の新人男性が、それまで着けていたマスクを外してマイクを握り、通勤客らに政策などを訴えた。
午前7時頃から支援者とともに行ったチラシ配りの際にはマスクを着けていた。渡す際には相手に近づくので、感染の不安を与えないように配慮しているという。演説では、相手との距離が取れるためマスクを外すことにしているといい、「せっかく街頭で活動しているので、できるだけ多くの人に顔を覚えてもらいたい」と話していた。
一方、「賛否両論あって、対応が難しい」と漏らすのは、別の区議選に立候補予定の現職の女性区議だ。
3月中旬に政府のマスク着用目安が緩和されたことを受け、マスクなしで街頭活動を始めたところ、道行く人から「高齢者のことを考えているのか」と批判を浴びた。
そのため、女性区議がマスクを着用して演説などの活動を始めたところ、今度は「議員がマスクを着用していると、世間が外しづらい雰囲気になる」と、非難を受けたという。
マスク姿で活動をしても、告示後に貼るポスターの顔と一致しないため、認知度が高まらないと感じており、映像配信などの場面ではマスクを外している。ただ、今後どのように活動していくのか、方針が定まっていない。「周囲のマスクを着けている人の数などを目安にしながら、方法を検討したい」と困惑気味に話した。
「基本的にはマスクを外し、握手もする」。そう宣言するのは、ある区長選に出馬する現職の男性だ。
推薦を受ける政党の集会に参加した際も、自分を含めた多くの立候補予定者がマスクを着用していなかったという。
一方、別の区長選に出馬予定の現職男性区長は、「マスクは外さない」と断言。「有権者の立場で考えると、マスクを外すことはまだ望まれていないと思う」と、これまで通りの感染対策で選挙戦に臨む方針だ。
■投票所は緩和へ
多くの人が集まる投票所でも、感染対策の緩和が進む。
都選挙管理委員会は2020年の都知事選の際に各区市町村選管事務局向けに、投票所での感染症対策をまとめた指針を策定し、感染状況に応じて内容を修正しながら、各選挙で実施してきた。
今回の統一地方選を前に、都選管では政府方針に準じて、マスク着用については「個人の判断に委ねられる」と指針を変更し、3月に各選管事務局に通知した。
一方で飛沫(ひまつ)感染防止のために仕切りを設けることや、「3密」の回避、消毒液設置などの対策を求めた。
世田谷区選管では、この通知に沿った感染対策を取ることにしているが、「個人の判断」とされたマスクについては、投票所の選管職員は着用する方針だ。区が区民と接する際の対策基準に則した対応で、職員だけで実施する開票作業ではマスクは推奨にとどめる。
同選管事務局の織田健一次長は「一部で対策を緩和させるものの、区民に感染が広がらないように注意を徹底していく」と話した。

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