女「特別な日だから高級店へ」…アプリで出会った男性をキャビア専門店へ連れて行く

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恋愛や結婚に向けた出会いを仲介する「マッチングアプリ」。
その普及に伴い、会った人から不当に高い飲食店に連れて行かれたり、投資に勧誘されたりする被害やトラブルが急増しており、関係機関などが注意喚起している。(乙部修平)
名古屋市・今池の雑居ビルに入る「高級キャビア専門店」。この店が客に数十万円の飲食代を請求したなどとする被害の相談が愛知県警に20件以上寄せられ、県警は2月、無許可で客に接待したとして経営者の女(38)ら5人を風営法違反容疑で逮捕した。
捜査関係者によると、女はマッチングアプリで出会った男性に「特別な日だから高級な店に行ってみたい」などと自分の店に誘導し、少なくとも8000万円を売り上げていた。さらに、女は別に経営していたキャバクラ店にもアプリで知り合った男性を呼び込んでいたといい、3月には同法違反(名義貸し)容疑で再逮捕された。女は「コロナ禍で経営が悪化し、アプリで会った人を呼び込んだ」と話したといい、名古屋区検から同法違反で同月末に略式起訴された。
女とアプリを通じて会ったことがある30歳代男性は、連れられた同市内のラーメン店で高額な請求をされて不審に感じ、隙を見て女を店に置いて退店したという。ラーメン店も女の協力者とみられ、今はキャビア店ともども閉店している。「あそこで離れなければキャビア店で法外な請求をされたかもしれない。真剣な出会いを求めてアプリを使っていたのに、悪用されて許せない」。男性は憤る。
■アプリトラブル 5年で80倍近く
顔写真やプロフィルを見て、気に入った人とやりとりや面会ができるマッチングアプリ。明治安田生命のアンケート調査によると、昨年結婚を決めたカップルの22・6%がアプリを通じて知り合うなど、いまや出会いの場としてすっかり定着している。
しかし、アプリを利用したトラブルは後を絶たない。国民生活センターによると、アプリや出会い系サイトで出会った人に投資金を支払わせるなどのトラブルの相談件数は2021年度に1701件と、5年前の16年度(22件)の80倍近くにまで急増している。
アプリで出会った人に高額商品を購入させる行為は、詐欺罪などに当たる可能性がある。ただ、飲食店でメニューに記された代金を確認した上で支払った場合には、「刑事事件として取り締まるのは困難な例も多い」(県警幹部)という。
県消費者委員会の委員を務める正木健司弁護士は「好意につけこんだ契約は法律上は取り消せるとされるが、数十万円程度の被害では訴訟費用の方が高くついてしまいがちだ」とした上で、「支払って時間が経過した後に警察などに駆け込んでも対応が難しいケースが多い。不審に思ったら注文前に店を出ることや、すぐに警察を呼ぶことが重要だ」と指摘する。

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