SNSでペットの“亡骸写真”投稿は愛か、それとも自己満足の承認欲求か、問われる訃報マナー

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「最近更に足腰が弱り、立ったり座ったりが大変そうだ。そして耳がかなり遠くなったヒカルくん。毎日老いていく姿と、子供みたいに無邪気な愛しい目をするヒカルが切ない。どの子もですが、どうしても腕の中で見送りたいなぁ、、、、」
【写真】工藤静香がインスタに投稿した「愛犬の訃報」愛犬を看取ったSNSの投稿に賛否 先月インスタグラムにペットのオールドイングリッシュシープドッグ、ヒカルのことを投稿したのは、愛犬家としても知られるタレントの工藤静香。昨年の1月には、ペキニーズのバブルを家族で看取ったことも投稿している。

フォロワーからは温かい言葉が寄せられたが、一方で、昨今ペットの死をSNSで拡散することへのマナーを問う声もある。「SNSの普及により、ペットの死をインスタなどで不特定多数の人に配信することが珍しくなくなりました。死をネットで知らせることへの抵抗感が薄れているため、無意識のうちに誰かに不快感を与えてしまう可能性も増えたと思います」痛々しい手術痕や血痕をSNSに投稿するのは“マナー違反”か そう語るのは、犬ブロガーで、ペットロスから生まれた犬用リードの製造販売を手がける「ルンカ」代表の戸田さつきさん。自身が交通事故で愛犬を亡くしたことから、リードの販売を通して飼い主の心に寄り添う。その中で、SNSに関する相談を受けることもあるという。「お客さんから、『ペットの死期が近づいているけれど、亡くなったときはSNSに亡き骸の写真を載せるべき?』という相談を受けることがあります。これに関しては飼い主の考え方にもよりますが、最低限のマナーが守られていないと感じる投稿も」(戸田さん、以下同) 飼い主にとっては大切なペットでも、見る人によっては「動物の遺体」。目を背けたくなる人もいるだろう。 また、苦しそうな死に際の様子を詳細に描写して自分が看取ったことを知らせたり、痛々しい手術痕や血痕が写り込んだ写真、遺骨をアップする飼い主もいる。そんな投稿をする飼い主の意図とは?ペットの遺体を“インスタ映え”投稿「対面での繋がりよりもSNSでのコミュニケーションがメインになっている“ペット仲間”同士だと、『頑張って看取った気持ちに共感して欲しい』という思いから、抵抗感なく死に際を投稿してしまいがちです。 これは私の考えですが、飼い主にとっての理想のひとつが、ペットを看取ってやること。きちんと看取りができるかどうかは、その後のペットロスの重さを左右する大きな分岐点にもなります。だからこそ、自分がやり遂げた証しとしてSNSに詳細に上げてしまう人もいるのでは」 しかし、こういった投稿に対し、“遺体だから見たくない”という意見のほかにも“ペットの尊厳が守られていない”という理由で反対派の人もいる。「ペットを飼っている人ほど、その思いは強いようです。“ペットも大切な家族”と言いながら、その遺体をSNSに晒すなんて許せない、と。 自分の親や子どもが亡くなったときにSNSに写真を上げるかどうかを考えてみれば、その違和感も理解できるはず。“飼い主の自己満足”と非難されても仕方ないかもしれません」 戸田さん自身も、ペットの亡き骸と飼い主の、妙に“インスタ映え”した記念写真のような投稿に違和感を覚えたことがあるという。ペットを自分たちの承認欲求を満たすための道具にして自己陶酔しているとしたら、それはモラルを問われるべきだろう。投稿を見たくない、望まない人に“見せない配慮”を 望まない人に見せない配慮のひとつとして、投稿の方法があげられる。「ペットの葬儀には細かなルールやしきたりがないため、SNSで訃報を伝えること自体は問題ではない。ですが突然、遺体の写真が目に飛び込んでくるのは、心の準備もなく強制的にSNS上のお葬式に参列させられるようなもの。“今、見るかどうか”を選択できるよう配慮をするべきです」 具体的には、ツイッターならセンシティブ設定にする、インスタなら複数のスライド写真の最後に遺体の写真を配置し、投稿の内容がペットの訃報であると冒頭で通知する、などだ。 それでも、死に際の様子や亡くなったという速報を投稿してしまう気持ちも理解できる、という戸田さん。自身も数年前、病気で危篤状態の愛犬に付き添いながら、発作に苦しみ弱っていく様子を、ツイッターでつぶやいたことがある。「絶望的な気持ちをどこかに吐き出したかったし、つぶやくことで自分の混乱した気持ちに整理をつけていたんだと思います。今考えると、読む人に配慮する余裕はなかったな、と」 手のひらの中のスマートフォンから、時に望まない情報も飛び込んできてしまうSNS。かわいいペットを愛でるのはいいけれど、急に遺体を見せられるのはできれば避けたいものだ。「結局は見る人の考え方や環境によっても受け取り方が変わるので、ペットの訃報マナーに正解はありません。不快な思いをしたくないのであれば、マナーの感覚が合う人とだけ繋がるようにして、違和感を感じる相手はそっとフォローを外すなど、距離を置くのがお互いにいいと思います」お話を伺ったのは……戸田さつきさん○犬ブロガー、犬雑貨のネットショップ「RUMKA(ルンカ)」代表。交通事故で愛犬を亡くしたペットロスの経験から、ペットの命を守るオリジナルのリードを開発、安全性を高めるための研究を続けている。
先月インスタグラムにペットのオールドイングリッシュシープドッグ、ヒカルのことを投稿したのは、愛犬家としても知られるタレントの工藤静香。昨年の1月には、ペキニーズのバブルを家族で看取ったことも投稿している。
フォロワーからは温かい言葉が寄せられたが、一方で、昨今ペットの死をSNSで拡散することへのマナーを問う声もある。
「SNSの普及により、ペットの死をインスタなどで不特定多数の人に配信することが珍しくなくなりました。死をネットで知らせることへの抵抗感が薄れているため、無意識のうちに誰かに不快感を与えてしまう可能性も増えたと思います」
そう語るのは、犬ブロガーで、ペットロスから生まれた犬用リードの製造販売を手がける「ルンカ」代表の戸田さつきさん。自身が交通事故で愛犬を亡くしたことから、リードの販売を通して飼い主の心に寄り添う。その中で、SNSに関する相談を受けることもあるという。
「お客さんから、『ペットの死期が近づいているけれど、亡くなったときはSNSに亡き骸の写真を載せるべき?』という相談を受けることがあります。これに関しては飼い主の考え方にもよりますが、最低限のマナーが守られていないと感じる投稿も」(戸田さん、以下同)
飼い主にとっては大切なペットでも、見る人によっては「動物の遺体」。目を背けたくなる人もいるだろう。
また、苦しそうな死に際の様子を詳細に描写して自分が看取ったことを知らせたり、痛々しい手術痕や血痕が写り込んだ写真、遺骨をアップする飼い主もいる。そんな投稿をする飼い主の意図とは?
「対面での繋がりよりもSNSでのコミュニケーションがメインになっている“ペット仲間”同士だと、『頑張って看取った気持ちに共感して欲しい』という思いから、抵抗感なく死に際を投稿してしまいがちです。
これは私の考えですが、飼い主にとっての理想のひとつが、ペットを看取ってやること。きちんと看取りができるかどうかは、その後のペットロスの重さを左右する大きな分岐点にもなります。だからこそ、自分がやり遂げた証しとしてSNSに詳細に上げてしまう人もいるのでは」
しかし、こういった投稿に対し、“遺体だから見たくない”という意見のほかにも“ペットの尊厳が守られていない”という理由で反対派の人もいる。
「ペットを飼っている人ほど、その思いは強いようです。“ペットも大切な家族”と言いながら、その遺体をSNSに晒すなんて許せない、と。
自分の親や子どもが亡くなったときにSNSに写真を上げるかどうかを考えてみれば、その違和感も理解できるはず。“飼い主の自己満足”と非難されても仕方ないかもしれません」
戸田さん自身も、ペットの亡き骸と飼い主の、妙に“インスタ映え”した記念写真のような投稿に違和感を覚えたことがあるという。ペットを自分たちの承認欲求を満たすための道具にして自己陶酔しているとしたら、それはモラルを問われるべきだろう。
望まない人に見せない配慮のひとつとして、投稿の方法があげられる。
「ペットの葬儀には細かなルールやしきたりがないため、SNSで訃報を伝えること自体は問題ではない。ですが突然、遺体の写真が目に飛び込んでくるのは、心の準備もなく強制的にSNS上のお葬式に参列させられるようなもの。“今、見るかどうか”を選択できるよう配慮をするべきです」
具体的には、ツイッターならセンシティブ設定にする、インスタなら複数のスライド写真の最後に遺体の写真を配置し、投稿の内容がペットの訃報であると冒頭で通知する、などだ。
それでも、死に際の様子や亡くなったという速報を投稿してしまう気持ちも理解できる、という戸田さん。自身も数年前、病気で危篤状態の愛犬に付き添いながら、発作に苦しみ弱っていく様子を、ツイッターでつぶやいたことがある。
「絶望的な気持ちをどこかに吐き出したかったし、つぶやくことで自分の混乱した気持ちに整理をつけていたんだと思います。今考えると、読む人に配慮する余裕はなかったな、と」
手のひらの中のスマートフォンから、時に望まない情報も飛び込んできてしまうSNS。かわいいペットを愛でるのはいいけれど、急に遺体を見せられるのはできれば避けたいものだ。
「結局は見る人の考え方や環境によっても受け取り方が変わるので、ペットの訃報マナーに正解はありません。不快な思いをしたくないのであれば、マナーの感覚が合う人とだけ繋がるようにして、違和感を感じる相手はそっとフォローを外すなど、距離を置くのがお互いにいいと思います」
お話を伺ったのは……

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