「不合理な結論導いた」1審に異例の苦言 交番襲撃の大阪高裁判決

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大阪府吹田市の交番で2019年6月、警察官を包丁で襲って拳銃を奪ったとして強盗殺人未遂などの罪に問われた男性被告(36)の控訴審判決で、大阪高裁は20日、懲役12年とした1審・大阪地裁判決を破棄し、無罪(求刑・懲役13年)を言い渡した。斎藤正人裁判長は、精神疾患の影響で心神喪失の状態だったとして、刑事責任能力はないと判断した。
「精神疾患で心神喪失」認定、交番襲撃に逆転無罪判決 被告の刑事責任能力の有無を巡り、起訴前と起訴後で結論が割れた精神鑑定結果。大阪高裁判決は裁判員裁判だった1審判決の評価について、「意見の相違点のみを切り出して分断的に判断している」と言及。裁判員の良識や感覚を反映した評議の「妨げになった」と異例の批判を展開した。

精神鑑定の結果はいずれも疾患の影響を認めた点で共通していたが、責任能力の有無を巡り精神科医の見解が真っ向から対立。1審の大阪地裁では、裁判員も難しい判断を迫られた。 高裁判決はまず、裁判員裁判で求められる刑事責任能力の判断手法について「精神医学の専門性が尊重されるべき部分と法律判断の部分との区別を踏まえて評議し、明確に裁判員と裁判官の間で共有されることが不可欠だ」と判示した。 そのうえで、地裁の審理は「意見の分岐点や違いの理由、根拠を明らかにし、これを共通認識として評議、判断を行うべきだった」と指摘。「1審判決は精神医学の専門的知見が及ぶ範囲を見誤り、経験則などに反する不合理な結論を導いた」と非難した。 近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「評価が分かれにくいDNA型鑑定などと異なり、精神鑑定の結果の評価は裁判員には非常に難しい。裁判所や検察、弁護士は公判前整理手続きの段階から、より丁寧でわかりやすい裁判員への説明方法を模索するべきだ」と訴えた。【安元久美子】
被告の刑事責任能力の有無を巡り、起訴前と起訴後で結論が割れた精神鑑定結果。大阪高裁判決は裁判員裁判だった1審判決の評価について、「意見の相違点のみを切り出して分断的に判断している」と言及。裁判員の良識や感覚を反映した評議の「妨げになった」と異例の批判を展開した。
精神鑑定の結果はいずれも疾患の影響を認めた点で共通していたが、責任能力の有無を巡り精神科医の見解が真っ向から対立。1審の大阪地裁では、裁判員も難しい判断を迫られた。
高裁判決はまず、裁判員裁判で求められる刑事責任能力の判断手法について「精神医学の専門性が尊重されるべき部分と法律判断の部分との区別を踏まえて評議し、明確に裁判員と裁判官の間で共有されることが不可欠だ」と判示した。
そのうえで、地裁の審理は「意見の分岐点や違いの理由、根拠を明らかにし、これを共通認識として評議、判断を行うべきだった」と指摘。「1審判決は精神医学の専門的知見が及ぶ範囲を見誤り、経験則などに反する不合理な結論を導いた」と非難した。
近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「評価が分かれにくいDNA型鑑定などと異なり、精神鑑定の結果の評価は裁判員には非常に難しい。裁判所や検察、弁護士は公判前整理手続きの段階から、より丁寧でわかりやすい裁判員への説明方法を模索するべきだ」と訴えた。【安元久美子】

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