広域強盗事件、黒幕の収益構造を元刑事が解説 上部組織は低リスク、4容疑者は“単なる指示役か

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フィリピンの入管施設収容中に「ルフィ」などと名乗り日本の広域強盗事件を指示した疑いがある日本人容疑者4人、今村磨人(38)、藤田聖也(38)、渡辺優樹(38)、小島智信(45)が特殊詐欺事件に絡む窃盗容疑で警視庁に逮捕された。元神奈川県警国際捜査課の刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は、特殊詐欺に詳しいという元暴力団幹部に接触。以前から指摘していた4容疑者の“上”の存在とみられる首謀者の正体に迫った。小川氏はデイリースポーツの取材に対し、特殊詐欺グループの上部組織が少ないリスクで収益を上げている構造を説明した。
元暴力団幹部は小川氏に首謀者の実名も明かした。50代で暴力団のメンバーではないが、暴力団とは接点のある人物とした。首謀者と説明したのは小川氏が予測していたのと同じだった。ただ、首謀者についても「トップの黒幕ではない」と指摘し「今回出てきた(逮捕された)4人をまとめる役」とさらに“深い闇”があるとした。また、渡辺容疑者が北海道の組織と関係しているという小川氏の見立てに対しては、「おそらく関係ないと思います」と北海道コネクションについては否定的だった。
特殊詐欺の被害額は60億円ともいわれている。被害の中から、特殊詐欺グループから上部の組織に渡るのは10%ほどだという。4容疑者のような指示役は5%ほど、かけ子は10%、実行役となる受け子が30%ほどと、最も取り分が多い。一見すると逮捕などのリスクが高い実行役が多くもらえるシステムだが、同じような特殊詐欺グループが複数存在するため、上に行くほど、実働せずにお金だけが入ってくる形になっている。
元幹部は、4容疑者のような指示役を逮捕しても、特殊詐欺については「いたちごっこ。手を変え品を変え、いろんなやり方で次から次へと“第2のルフィ”が出てくるんじゃないか」と指摘したという。小川氏は「実行犯だけだとトカゲのしっぽ切りになるので、その上の指示役も、その上にいる首謀者も、そのもっと上にいる黒幕まで行く必要がある」と元を絶つ必要性を示した。
広域強盗事件では、実行犯が「闇バイト」という形で集められたが、「闇バイト」への対策については「闇バイトに警察官がなりすまして、ということも考えられる」と提案。ただ、現状では日本の警察では「おとり捜査」は認められていないことも説明した。未成年の女子中学生、高校生らが下着などを売る、いわゆる「ブルセラ」ショップなどで、警察官が客になりすまして、買いに行くふりをするといった事例はあるが、「それは捕まえるためではなくて、補導のため。そこが今のところ限界」とコメント。特殊詐欺に「おとり捜査」は有効だが「法改正の必要がある」とハードルがあることも語った。

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