ウクライナ人学生を「難民貴族」「泥棒」呼ばわり…前橋市の日本語学校理事長が「30万円払え」と言い出したウラ事情

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「難民貴族」という言葉に注目が集まっている。2月27日、ウクライナ避難民のルニン・ウラディスラフさんが記者会見を開き、「難民貴族」という表現は自分たちに対する侮辱だと強く抗議。会見の様子は、TBS、テレビ朝日、共同通信などが報じた。
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【写真を見る】理事長の「難民貴族」発言は“侮辱”と怒りをにじませるウクライナ人避難学生 ウラディスラフさんは群馬県前橋市の日本語学校「ニッポンアカデミー」に通う避難学生。同校の清水澄(ますみ)理事長が「一部の避難学生は難民貴族」などと記者会見で批判したため、反論の会見を開いた。

あとで詳しく触れるが、このアカデミーは避難学生の身元保証人になっており、約40人を受け入れている。前橋市にある日本語学校を運営する学校法人「ニッポンアカデミー」の清水澄社長 そのうちの16人が「6カ月間の学費は無償と説明されていたにもかかわらず、約3カ月で30万円を請求された」と、東京で活動するウクライナ人弁護士に訴えていたことが明らかになっている。担当記者が言う。「ルニンさんは会見で、アカデミー側が作成した書類に『学費や教科書代は6カ月無料』と明記されていたことを明らかにしました。ところが、来日すると『6カ月無料は約束ではなく目安』と説明を翻され、約3カ月後に学費を請求されたそうです。さらに、学費を払わない場合、『前橋市が提供した市営住宅から追い出す。スマートフォンも取り上げる』などと脅されたと訴えました」ラーメンに契約はない!? それでは2月24日に開かれた清水理事長の会見が、どんな内容だったのか見てみよう。大前提として、かなりの問題発言が連発されたのは間違いないようだ。 テレ朝NEWSが27日に配信した「“難民貴族”と非難され…ウクライナ人学生『反論』 日本語学校理事長『わがままだ』」の記事から、清水理事長の発言を引用させていただく。《私たちはものすごく身銭を切って学生さんを教育している。教育活動の一環なんですよ。学費の請求は。家賃はタダ、税金もタダ、渡航費もタダ。ウクライナの人たちの今の支援状況を皆さんご存じですか? はっきり言って「難民貴族」ですよ》 清水理事長は会見で、学費は「自立するまでの3カ月、最大で6カ月までは無償」と考えていたと説明した。「自立したら即、払ってもらう」というスタンスだったというが、避難学生に対する説明が足りなかったことは認めた。 記者が「無償期間について契約で取り決めたり、契約書を交わしたりしていないのか?」と質問すると、清水理事長は契約も契約書も存在しないと答え、次のように反論した。《契約自体なくたって、契約書がなくたって、じゃあ、ラーメン食べるのに契約がないから請求しないか?という問題。それは、請求権が当然出るのが当たり前のことでしょ!》前橋市の支援策 会見で清水理事長は、耳を疑うような発言を繰り返した。《全部学生さんは皆いいところしか取らないですからね。それはわがままでしかないんですよ! はっきり言って、単なるわがままなんですよ!》《お金を出したくない人が騒いでいるだけなんです。だから、騒いでいる人は学費を踏み倒していっている》《はっきり言って泥棒ですよ。泥棒がそうやって言い訳してる。他に無償の学校もあるんだから、辞めるのは自由選択じゃないですか》 一体、なぜこんなことになったのだろうか。経緯を詳しく見ると、「補助金」の問題が浮かび上がるのだ。 時系列をたどってみよう。そもそもアカデミーが避難学生を受け入れたことは当初“美談”として報じられた。 NHKは昨年4月4日、「前橋 ウクライナからの避難女性29歳 日本語学校で初授業 日本でアルバイト探しも」の記事を報じた。 29歳のウクライナ人女性が知人を頼って前橋市に避難。すると《市内の日本語学校が避難してきた人たちの生活を支援しようと無償で受け入れることになった》と伝えた。無償という言葉が明記されていたことが分かる。 前橋市は13日、ウクライナからの避難民に対する支援策を発表し、翌14日、地元メディアが相次いで報じた。この稿では読売新聞・群馬県版「ウクライナ支援 避難者へ15万円 前橋市」の記事から引用しよう。《生活費として1人当たり15万円の一時金を支給し、さらに生活費が必要な避難者には、最長で1年間、単身世帯で月に最大15万円を給付する》 さらに《市営住宅を無償で最大18部屋提供》するとし、興味深いことに日本語学校に通う場合にも《授業料など約30万円分を負担する》と報じられた。補助金を減額 前橋市が作成した資料によると、5月17日に清水理事長は前橋市長と面談したという。「その際、清水理事長は『合計300人の避難民を受け入れたいので、市営住宅は3カ月スパンで入れ替えてほしい』と要望したのです。つまり、ウクライナ人の避難学生を受け入れ、30万円の補助金を受け取ると、3カ月後に市営住宅を出てもらう。そして新しい避難学生を受け入れると、再び30万円を手にするというプランです。30万円×300人で、合計9000万円の補助金受給を清水理事長は狙っていたフシがあるのです」(同・記者) 市長は面談の際、《市の支援については限りがあり、ビジネス的、機械的な対応をする考えには協力できない》と釘を指したことも記録に残っている。 前橋市は対応策を協議し、「300人の避難民の受け入れや市営住宅の入れ替え」はビジネス目的であり、「最大で9000万円をアカデミー側に支払うことは受け入れられない」との認識で一致した。 その上で、「アカデミーが身元保証人として受け入れた避難民の補助金は10万円とする」ことを決定した。知事選に出馬 前橋市は5月30日、「補助金は10万円」とアカデミー側に説明。6月、アカデミー側は1人当たり10万円の補助金を申請してきたという。「ところが9月ごろ、アカデミーは避難学生に『30万円を払え』との請求を開始したことが分かっています。前橋市が事態を把握したのは10月、避難民をアルバイトとして受け入れていた関係者が『6カ月無償だと説明されていた学費が、約3カ月で請求されているようだ』と相談してきたからです」(同・記者) 3カ月という期間も興味深い。清水理事長が「3カ月スパンで市営住宅を入れ替えてほしい」と要望していたことを想起させる。 補助金を減額されたため、アカデミーは避難学生に学費を請求した──こう考える前橋市民も少なくないだろう。 この清水理事長とは一体どのような人物なのかと言えば、群馬県知事を4期務めた清水一郎氏(1918~1991)の三男で、地元ではそれなりの知名度を持っているという。 慶応大学文学部を卒業し、もともとは前橋市でホテルを経営していたことで知られていた。こちらは2021年12月に社長から退き、代表権のない会長に就いている。「清水理事長は選挙で変わった行動を繰り返したことでも知られています。1999年の知事選に出馬を表明しましたが、その2日後に突然の撤回。2007年の知事選には出馬するものの、選挙戦の最終日に『立候補を辞退したい』と発言して有権者を戸惑わせました。さらに、19年の県議選にも出馬し、『群馬廃県』、『前橋市と高崎市を合併して東京都に編入』といったユニークな公約を掲げました」(同・記者)困惑の前橋市 事態を把握した前橋市は昨年11月、アカデミー側と協議を行ったが、清水理事長は「市は30万円を支払え」という主張を繰り返すだけで全くの平行線に終わったという。 今回の騒動を受け、前橋市の文化国際課はコメントを発表している。全文を紹介しよう。《市内日本語教育機関が身元保証人として受け入れる場合は、身元保証人の責務を考慮し、10万円を上限として補助することとしました。この点はニッポンアカデミー側にも説明をし、現に10万円の補助申請を6月以降に受付けています》《このため本市としては補助制度をニッポンアカデミーが十分に理解しているものと考えていました。ところが、学生等からの苦情相談等の話が各所から入るようになった後、市に30万円補助金を支払えという主張に変わりました》《どうしてこの様に主張が変わったかは市には理解できないものです。なお、6月に申請された補助金は現在のところ支給しておりません》(註:コメントは2月27日に受け取った)デイリー新潮編集部
ウラディスラフさんは群馬県前橋市の日本語学校「ニッポンアカデミー」に通う避難学生。同校の清水澄(ますみ)理事長が「一部の避難学生は難民貴族」などと記者会見で批判したため、反論の会見を開いた。
あとで詳しく触れるが、このアカデミーは避難学生の身元保証人になっており、約40人を受け入れている。
そのうちの16人が「6カ月間の学費は無償と説明されていたにもかかわらず、約3カ月で30万円を請求された」と、東京で活動するウクライナ人弁護士に訴えていたことが明らかになっている。担当記者が言う。
「ルニンさんは会見で、アカデミー側が作成した書類に『学費や教科書代は6カ月無料』と明記されていたことを明らかにしました。ところが、来日すると『6カ月無料は約束ではなく目安』と説明を翻され、約3カ月後に学費を請求されたそうです。さらに、学費を払わない場合、『前橋市が提供した市営住宅から追い出す。スマートフォンも取り上げる』などと脅されたと訴えました」
それでは2月24日に開かれた清水理事長の会見が、どんな内容だったのか見てみよう。大前提として、かなりの問題発言が連発されたのは間違いないようだ。
テレ朝NEWSが27日に配信した「“難民貴族”と非難され…ウクライナ人学生『反論』 日本語学校理事長『わがままだ』」の記事から、清水理事長の発言を引用させていただく。
《私たちはものすごく身銭を切って学生さんを教育している。教育活動の一環なんですよ。学費の請求は。家賃はタダ、税金もタダ、渡航費もタダ。ウクライナの人たちの今の支援状況を皆さんご存じですか? はっきり言って「難民貴族」ですよ》
清水理事長は会見で、学費は「自立するまでの3カ月、最大で6カ月までは無償」と考えていたと説明した。「自立したら即、払ってもらう」というスタンスだったというが、避難学生に対する説明が足りなかったことは認めた。
記者が「無償期間について契約で取り決めたり、契約書を交わしたりしていないのか?」と質問すると、清水理事長は契約も契約書も存在しないと答え、次のように反論した。
《契約自体なくたって、契約書がなくたって、じゃあ、ラーメン食べるのに契約がないから請求しないか?という問題。それは、請求権が当然出るのが当たり前のことでしょ!》
会見で清水理事長は、耳を疑うような発言を繰り返した。
《全部学生さんは皆いいところしか取らないですからね。それはわがままでしかないんですよ! はっきり言って、単なるわがままなんですよ!》
《お金を出したくない人が騒いでいるだけなんです。だから、騒いでいる人は学費を踏み倒していっている》
《はっきり言って泥棒ですよ。泥棒がそうやって言い訳してる。他に無償の学校もあるんだから、辞めるのは自由選択じゃないですか》
一体、なぜこんなことになったのだろうか。経緯を詳しく見ると、「補助金」の問題が浮かび上がるのだ。
時系列をたどってみよう。そもそもアカデミーが避難学生を受け入れたことは当初“美談”として報じられた。
NHKは昨年4月4日、「前橋 ウクライナからの避難女性29歳 日本語学校で初授業 日本でアルバイト探しも」の記事を報じた。
29歳のウクライナ人女性が知人を頼って前橋市に避難。すると《市内の日本語学校が避難してきた人たちの生活を支援しようと無償で受け入れることになった》と伝えた。無償という言葉が明記されていたことが分かる。
前橋市は13日、ウクライナからの避難民に対する支援策を発表し、翌14日、地元メディアが相次いで報じた。この稿では読売新聞・群馬県版「ウクライナ支援 避難者へ15万円 前橋市」の記事から引用しよう。
《生活費として1人当たり15万円の一時金を支給し、さらに生活費が必要な避難者には、最長で1年間、単身世帯で月に最大15万円を給付する》
さらに《市営住宅を無償で最大18部屋提供》するとし、興味深いことに日本語学校に通う場合にも《授業料など約30万円分を負担する》と報じられた。
前橋市が作成した資料によると、5月17日に清水理事長は前橋市長と面談したという。
「その際、清水理事長は『合計300人の避難民を受け入れたいので、市営住宅は3カ月スパンで入れ替えてほしい』と要望したのです。つまり、ウクライナ人の避難学生を受け入れ、30万円の補助金を受け取ると、3カ月後に市営住宅を出てもらう。そして新しい避難学生を受け入れると、再び30万円を手にするというプランです。30万円×300人で、合計9000万円の補助金受給を清水理事長は狙っていたフシがあるのです」(同・記者)
市長は面談の際、《市の支援については限りがあり、ビジネス的、機械的な対応をする考えには協力できない》と釘を指したことも記録に残っている。
前橋市は対応策を協議し、「300人の避難民の受け入れや市営住宅の入れ替え」はビジネス目的であり、「最大で9000万円をアカデミー側に支払うことは受け入れられない」との認識で一致した。
その上で、「アカデミーが身元保証人として受け入れた避難民の補助金は10万円とする」ことを決定した。
前橋市は5月30日、「補助金は10万円」とアカデミー側に説明。6月、アカデミー側は1人当たり10万円の補助金を申請してきたという。
「ところが9月ごろ、アカデミーは避難学生に『30万円を払え』との請求を開始したことが分かっています。前橋市が事態を把握したのは10月、避難民をアルバイトとして受け入れていた関係者が『6カ月無償だと説明されていた学費が、約3カ月で請求されているようだ』と相談してきたからです」(同・記者)
3カ月という期間も興味深い。清水理事長が「3カ月スパンで市営住宅を入れ替えてほしい」と要望していたことを想起させる。
補助金を減額されたため、アカデミーは避難学生に学費を請求した──こう考える前橋市民も少なくないだろう。
この清水理事長とは一体どのような人物なのかと言えば、群馬県知事を4期務めた清水一郎氏(1918~1991)の三男で、地元ではそれなりの知名度を持っているという。
慶応大学文学部を卒業し、もともとは前橋市でホテルを経営していたことで知られていた。こちらは2021年12月に社長から退き、代表権のない会長に就いている。
「清水理事長は選挙で変わった行動を繰り返したことでも知られています。1999年の知事選に出馬を表明しましたが、その2日後に突然の撤回。2007年の知事選には出馬するものの、選挙戦の最終日に『立候補を辞退したい』と発言して有権者を戸惑わせました。さらに、19年の県議選にも出馬し、『群馬廃県』、『前橋市と高崎市を合併して東京都に編入』といったユニークな公約を掲げました」(同・記者)
事態を把握した前橋市は昨年11月、アカデミー側と協議を行ったが、清水理事長は「市は30万円を支払え」という主張を繰り返すだけで全くの平行線に終わったという。
今回の騒動を受け、前橋市の文化国際課はコメントを発表している。全文を紹介しよう。
《市内日本語教育機関が身元保証人として受け入れる場合は、身元保証人の責務を考慮し、10万円を上限として補助することとしました。この点はニッポンアカデミー側にも説明をし、現に10万円の補助申請を6月以降に受付けています》
《このため本市としては補助制度をニッポンアカデミーが十分に理解しているものと考えていました。ところが、学生等からの苦情相談等の話が各所から入るようになった後、市に30万円補助金を支払えという主張に変わりました》
《どうしてこの様に主張が変わったかは市には理解できないものです。なお、6月に申請された補助金は現在のところ支給しておりません》(註:コメントは2月27日に受け取った)
デイリー新潮編集部

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