38年前の強盗殺人、大阪高裁も「死後再審」開始認める 滋賀・日野町事件

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滋賀県日野(ひの)町で昭和59年に酒店経営の女性=当時(69)=を殺害し金庫を奪ったとする強盗殺人罪で無期懲役が確定し平成23年に病死した阪原弘(ひろむ)元受刑者について、大阪高裁(石川恭司裁判長)は27日、再審開始を認める決定をした。
30年の大津地裁決定を維持し、検察側の即時抗告を棄却した。
大津地裁決定は、戦後に発生し、死刑・無期懲役が確定した事件で初めて「死後再審」を認めていた。
元受刑者は捜査段階で自白したが、公判や再審請求審では「警察官から暴行や脅迫を受けて自白を強要された」と主張。主な争点は自白の信用性や、元受刑者が金庫の投棄場所と遺体発見現場を自ら案内できたとする「引き当て捜査」をいかに評価するかだった。
事件を巡っては昭和59年12月下旬に女性が行方不明となり、翌年1月に遺体が、同年4月に山林で破壊された金庫が見つかった。滋賀県警は63年3月、店の常連だった元受刑者を逮捕した。
平成7年の確定判決(大津地裁)は「自白の根幹に矛盾がある」と信用性を否定しつつ、引き当て捜査などの間接事実を基に有罪を認定した。2審大阪高裁は「自白の根幹は十分信用できる」として控訴を棄却。最高裁も上告を退けた。元受刑者は23年、肺炎とみられる症状で刑務所を出て入院していたが、75歳で死亡した。
一方、元受刑者の遺族が申し立てた再審請求を大津地裁で審理中、引き当て捜査の写真のネガフィルムが開示された。それを弁護団が分析した結果、捜査報告書に添付された19枚のうち8枚は、金庫の投棄場所まで「案内する」写真ではなく、帰路に撮影されていたことが判明した。
再審開始を認めた30年の大津地裁決定は、この報告書を不適切と批判した上で、警察官の断片的な誘導などによって現場を案内できた可能性を指摘した。
自白についても「供述する殺害方法と、遺体の損傷状況は一致しない」として信用性を否定。取り調べ中に警察官の暴行や脅迫があった疑いもあるとして、「確定判決の判断はおおいに疑わしくなった」と結論付けた。
即時抗告審では、検察側がこの決定を「合理性や論理性を欠く」と批判。弁護団は言語学者や法医学者の見解を追加提出して、決定の正当性を訴えていた。
決定骨子
一、再審開始を認めた大津地裁の結論は正当
一、遺体発見現場の実況見分を撮ったネガの新証拠により、捜査書類の信用性などに疑問が生じた
一、事件当日にアリバイがあったとする元受刑者の主張を虚偽とした確定判決は、新証拠で合理的な疑いが生じた
一、被害者の拘束状況に関する実験結果でも、確定判決は揺らいでいる
一、奪われた金庫の発見場所の実況見分を巡っては、捜査官の誘導の可能性を指摘した地裁の結論を是認できない

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