連続強盗事件、特殊詐欺に酷似する手口 標的は「人に恨みを買う仕事で稼いだ資産家」から「一般人」に

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90歳女性が殺害された強盗殺人事件をきっかけに、全国で類似の事件が起きていたことがわかった。住民の在宅時を狙い、危害を加えて金品を奪う──危険な強盗団の手口を知ることが最大の防御になる。
【図解】現金3500万円(昨年10月末、5人組の犯行)、現金3000万円(昨年12月、6人組の犯行)…1都7県で発生した同種手口の強盗事件【一覧】半グレ強盗団から身を守るための対策 1月19日夕方、東京・狛江市の閑静な住宅街で、90歳の女性が自宅で両手を縛られた状態で亡くなっているのが発見された。女性の顔には暴行の跡があり、左肘関節部の骨が外に飛び出ていた。

「犯人は4人組の男で部屋には物色された跡がありました。レンタカー2台で被害者宅を訪れ、インターホンを鳴らして玄関を開けさせて侵入。1時間ほど室内で金品を物色したとみられている」(全国紙社会部記者) 被害者宅は多摩川の河川敷に面した通りにある。近隣住民はこう話す。「独特の門構えで、ベンツやマイバッハなど高級外車を4台駐めていた。ここの通りは住民以外ほとんど使わないが、私の妻が事件の数日前、見慣れない1台の車が入り込んで、不審な動きをしていたのを見ています」 昨年12月には東京・中野区で6人組の犯行グループが民家に侵入し、住人男性に暴行し、現金約3000万円を奪って逃走する事件が起きているが、関東近郊で昨年秋以降、よく似た手口の強盗事件が多発している。元警察官で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は、一連の事件の特徴についてこう語る。「郊外のベッドタウンに集中していますが、家の作りに共通点があまり見受けられない。盗みに入りやすい家というよりも住人で選び、ターゲットを決めたうえで犯行に及んでいるのでしょう」 犯行の手口も酷似しているという。「いずれも3人以上のグループによる集団強盗で、お金の在り処を聞き出すため、住人の在宅時を狙っています。住人の手足を粘着テープで縛り、暴力も辞さないことも共通している」(小川氏) 1都7県の事件で10数人が逮捕されているが、実行犯は「SNSや闇サイトで応募した。強盗に入る家などは指示役から伝えられた」と供述している。前出の中野区の事件で逮捕された永田陸人容疑者(21)のスマホには狛江市の強盗に関するメッセージが残されていたこともわかっている。「同一グループが事件ごとに実行犯を変えながら犯行に及んだとみられている。このグループは強盗だけで10数件、貴金属店での窃盗も合わせれば、30数件にまで広がる可能性がある。指示役は特定できていないが、“ルフィ”と名乗り、実行犯にターゲットや手口などを指示していたとみられる」(前出・社会部記者) 人気漫画『ワンピース』の主人公で麦わら帽子を被った海賊ルフィを真似た可能性が高い。逮捕された実行犯の大半が20代で、指示役にも若さが窺える。オレオレ詐欺から“転職”か この窃盗グループの素性について、小川氏は、暴力団に所属せずに常習的に犯罪を行なう「半グレ」の関与を指摘する。「指示役がいて、実行犯をSNSで集めるという手口がオレオレ詐欺をはじめとした特殊詐欺と酷似している。最近は特殊詐欺の手口が周知され、口座から一度に下ろせる金額も制限されたため、手荒なやり口に変わってきたと見ています」 特殊詐欺を実行する部隊を組織していたのが半グレで、今回の一連の強盗事件も似た組織構造だという。半グレの実態に詳しい作家の草下シンヤ氏が語る。「強盗に入る実行犯の『兵隊』、兵隊をスカウトする『リクルーター』、強奪した金を運ぶ『バイク』、兵隊に具体的な指示をする『指示役』などと役割が細かく分けられています。また、強盗のことを『叩き』と呼んでいます。半グレグループによる強盗は、10年以上前から起きていましたが、犯行の対象は、詐欺で稼いだ人間や、人に恨みを買う仕事で稼いだ資産家などが対象でした。それがここ数年で一般人まで狙われるようになっている」 では、彼らはどのようにしてターゲットを決めるのか。その選定には、裏社会で売買されている“名簿”を使うという。「いわゆる“裏の名簿屋”から詐欺に引っかかりやすい高齢者や資産家のリストを購入してターゲットを決めている。目星をつけた家に訪問販売員やリフォーム業者などを装って訪ね、資産状況や家族構成を調べ、精度を上げてから犯行に及びます。少数のグループもあれば、訪問会社ぐるみのケースもある。また、ターゲットの身内から寄せられた情報をもとに、犯行に及ぶことも多い」(草下氏)後先考えずに危害を 女性が亡くなった狛江市の事件だけでなく、住民が拘束され暴行を受け、意識不明の重体となった被害者がいる。暴力の行使に躊躇もなく、これほど短期間で凶行を繰り返すことに半グレ強盗団の危険性がある。「実行犯の『兵隊』は基本、1回の犯行で解散しますが、需要は多いためSNSで募集をかければ集まります。一方で、指示役との間に信頼関係はありません。見つけたお金を『兵隊』がごまかさないよう、指示役はビデオ通話しながら命令しているケースも珍しくない。『兵隊』側からしてもあるはずの金がなかったりすると、『話が違う』と揉めだし、目先の金欲しさに後先考えずに住民に危害を加えます」(草下氏)※週刊ポスト2023年2月10・17日号
1月19日夕方、東京・狛江市の閑静な住宅街で、90歳の女性が自宅で両手を縛られた状態で亡くなっているのが発見された。女性の顔には暴行の跡があり、左肘関節部の骨が外に飛び出ていた。
「犯人は4人組の男で部屋には物色された跡がありました。レンタカー2台で被害者宅を訪れ、インターホンを鳴らして玄関を開けさせて侵入。1時間ほど室内で金品を物色したとみられている」(全国紙社会部記者)
被害者宅は多摩川の河川敷に面した通りにある。近隣住民はこう話す。
「独特の門構えで、ベンツやマイバッハなど高級外車を4台駐めていた。ここの通りは住民以外ほとんど使わないが、私の妻が事件の数日前、見慣れない1台の車が入り込んで、不審な動きをしていたのを見ています」
昨年12月には東京・中野区で6人組の犯行グループが民家に侵入し、住人男性に暴行し、現金約3000万円を奪って逃走する事件が起きているが、関東近郊で昨年秋以降、よく似た手口の強盗事件が多発している。元警察官で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は、一連の事件の特徴についてこう語る。
「郊外のベッドタウンに集中していますが、家の作りに共通点があまり見受けられない。盗みに入りやすい家というよりも住人で選び、ターゲットを決めたうえで犯行に及んでいるのでしょう」
犯行の手口も酷似しているという。
「いずれも3人以上のグループによる集団強盗で、お金の在り処を聞き出すため、住人の在宅時を狙っています。住人の手足を粘着テープで縛り、暴力も辞さないことも共通している」(小川氏)
1都7県の事件で10数人が逮捕されているが、実行犯は「SNSや闇サイトで応募した。強盗に入る家などは指示役から伝えられた」と供述している。前出の中野区の事件で逮捕された永田陸人容疑者(21)のスマホには狛江市の強盗に関するメッセージが残されていたこともわかっている。
「同一グループが事件ごとに実行犯を変えながら犯行に及んだとみられている。このグループは強盗だけで10数件、貴金属店での窃盗も合わせれば、30数件にまで広がる可能性がある。指示役は特定できていないが、“ルフィ”と名乗り、実行犯にターゲットや手口などを指示していたとみられる」(前出・社会部記者)
人気漫画『ワンピース』の主人公で麦わら帽子を被った海賊ルフィを真似た可能性が高い。逮捕された実行犯の大半が20代で、指示役にも若さが窺える。
この窃盗グループの素性について、小川氏は、暴力団に所属せずに常習的に犯罪を行なう「半グレ」の関与を指摘する。
「指示役がいて、実行犯をSNSで集めるという手口がオレオレ詐欺をはじめとした特殊詐欺と酷似している。最近は特殊詐欺の手口が周知され、口座から一度に下ろせる金額も制限されたため、手荒なやり口に変わってきたと見ています」
特殊詐欺を実行する部隊を組織していたのが半グレで、今回の一連の強盗事件も似た組織構造だという。半グレの実態に詳しい作家の草下シンヤ氏が語る。
「強盗に入る実行犯の『兵隊』、兵隊をスカウトする『リクルーター』、強奪した金を運ぶ『バイク』、兵隊に具体的な指示をする『指示役』などと役割が細かく分けられています。また、強盗のことを『叩き』と呼んでいます。半グレグループによる強盗は、10年以上前から起きていましたが、犯行の対象は、詐欺で稼いだ人間や、人に恨みを買う仕事で稼いだ資産家などが対象でした。それがここ数年で一般人まで狙われるようになっている」
では、彼らはどのようにしてターゲットを決めるのか。その選定には、裏社会で売買されている“名簿”を使うという。
「いわゆる“裏の名簿屋”から詐欺に引っかかりやすい高齢者や資産家のリストを購入してターゲットを決めている。目星をつけた家に訪問販売員やリフォーム業者などを装って訪ね、資産状況や家族構成を調べ、精度を上げてから犯行に及びます。少数のグループもあれば、訪問会社ぐるみのケースもある。また、ターゲットの身内から寄せられた情報をもとに、犯行に及ぶことも多い」(草下氏)
女性が亡くなった狛江市の事件だけでなく、住民が拘束され暴行を受け、意識不明の重体となった被害者がいる。暴力の行使に躊躇もなく、これほど短期間で凶行を繰り返すことに半グレ強盗団の危険性がある。
「実行犯の『兵隊』は基本、1回の犯行で解散しますが、需要は多いためSNSで募集をかければ集まります。一方で、指示役との間に信頼関係はありません。見つけたお金を『兵隊』がごまかさないよう、指示役はビデオ通話しながら命令しているケースも珍しくない。『兵隊』側からしてもあるはずの金がなかったりすると、『話が違う』と揉めだし、目先の金欲しさに後先考えずに住民に危害を加えます」(草下氏)
※週刊ポスト2023年2月10・17日号

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