「鳥メロ」店長に有罪判決、泥酔した女性客にわいせつ…ワタミグループは謝罪、全フランチャイズに注意喚起

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

大手有名チェーンの居酒屋で、酒に酔った女性にわいせつな行為をおこなったとして、準強制わいせつ罪に問われた30代男性の刑事裁判で、東京地裁は1月30日、有罪判決を言い渡した。
公判では、被告人の男性は当時、あろうことか、店長としてその店舗に勤務中、自らも飲酒したうえで犯行に及んでいたことを認めた。
事件の現場となった「三代目鳥メロ」をグループにもつ「ワタミ」(東京都大田区)は、直営ではないフランチャイズ店で発生したものだとしても、深刻な事件であることに変わりないとして謝罪した。
また、事件を受けて、ワタミグループの全フランチャイズ店に注意喚起するに及んだ。
被害者の女性のショックも大きく、「もう二度と関わってほしくない」とするつらい思いが法廷で明らかにされた。いったい、どんな事件だったのか。(編集部・塚田賢慎)
被告人の男性は、事件が起きた2022年4月当時、東京23区内にある「三代目鳥メロ」のフランチャイズ店で店長として働いていた。事件から1カ月後に退職している。
被害に遭った女性は深夜に来店し、一緒に来ていた相手が先に帰ってからも1人で酒を飲み続け、そのままテーブルにうつ伏せで眠りこけてしまった。
男性は「大丈夫?」などと声をかけたが、女性が泥酔していたのをよいことに、その体を起こして頬や口にキスをしたほか、右の首あたりを舐めたという。
事件に気づいた女性は後日、同僚に相談したあと、警察に被害を届け出た。
安心して飲めるはずの居酒屋で予期せぬ被害を受けた女性が「男性に二度と関わらないでほしい」と強い嫌悪の気持ちを感じるのもしかたないことだ。
捜査段階では「女性は同意していたのではないか」と甘い考えをもっていた男性だったが、今月上旬の初公判では一転、「怖い思い、つらい思いをさせて申し訳ない」と起訴事実をすべて認めた。
なお、性的欲求に負けた原因は「酒」にあり、「飲んでなければやってない」などと主張した。
弁護人もまた「事件は飲酒が引き起こしたものであり、もう飲まないと約束している」ことから執行猶予付きの判決を求めた。現在ではフリーターとして別の飲食店で働いている男性は、事件から今まで酒を断ち続けているという。
また、男性には妻子がおり、「次にまたやったら離婚されるかもしれない」と不安をこぼす男性を、妻が監督して支えることを約束している。
一緒に暮らす子どもは、父親の起こした事件を知らないままだ。東京地裁の池田知史裁判官は「伝えられないですよね。父親がこんな犯罪をしたとは受け入れ難いですよね」と厳しい言葉を投げかけた。
女性への被害弁償も約束しているが、お金が支払われる道すじは見えていない。
「お金を持てば飲みに行ってしまうかもしれないので、(バイト代金は)嫁が全部管理している。給料もいくら入っているかわからない」「(示談金は)嫁が準備しているはず」
そう話した男性を検察官が「『はず』はおかしい言葉ですよね」と叱る場面もあった。
池田裁判官は、二度と罪を犯さないと約束しているなどの事情から、男性に懲役1年6カ月(執行猶予3年)の有罪判決を下した。前回は検察官の論告求刑のタイミングで所持していたスマホを鳴らし、法廷で冷たい視線を浴びた男性だったが、今回は静かにただ深々と頭を下げた。
なお、男性によれば、事件が起きて1カ月後の退職と事件の間に関係はなく、当時の職場を「精神的につらくてやめた」「休みがなかった。ずっと店にいた」とも述べていた。
弁護士ドットコムニュースが取材したところ、ワタミグループは当初、事件を把握していなかったが、その後、次のようにコメントした。
〈当社のフランチャイズ加盟店の元従業員により、このような事案が発生したことは、誠に遺憾であり、被害に遭われましたお客様及び関係者の皆様には、多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申しあげます。
当該フランチャイズ加盟会社に対しては、詳細を確認中でございますが、勧告書を通知し、是正・再発防止策を提出するように強く勧告をしております。
また、今回のような事態が発生したことを厳粛に受け止め、全フランチャイズ加盟店に対して法令遵守と倫理観のある行動をするよう注意喚起等に努めてまいります〉

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。