新型コロナウイルスのオミクロン株の後遺症を巡り、睡眠障害の症状を訴える人の割合が従来の株に比べて増えていることが、岡山大病院(岡山市)の調査でわかった。
専門外来を受診した4人に1人が訴え、従来株の2倍を超える。国内初の感染者が確認されてから3年が過ぎたが、後遺症については不明な点も多い。同病院は「症状が長期に及ぶこともあり、リスクを軽く見るべきではない」としている。(科学医療部 藤沢一紀)
同病院は2021年2月、新型コロナの後遺症の専門外来「コロナ・アフターケア外来」を開設した。大学病院としては全国的にも早い取り組みで、22年12月末までに12都府県526人が受診。〈1〉20年の感染当初から流行した従来株(115人)〈2〉21年夏から流行したデルタ株(133人)〈3〉22年初めから流行したオミクロン株(278人)――の3種類で症状を分析した。
その結果、オミクロン株では睡眠障害が27%に上り、従来株(12%)、デルタ株(13%)の2倍以上に増え、倦怠(けんたい)感や頭痛を訴える人も多かった。一方、嗅覚障害や味覚障害を訴える人はデルタ株の約4分の1に減った。
外来を担当する大塚文男副院長によると、睡眠障害を訴えた人のうち75%で布団に入ってもなかなか眠れない入眠障害、40%で夜中に目が覚めて眠れない中途覚醒の症状があった。
後遺症の詳しい原因は不明だが、新型コロナウイルスは血管に侵入して全身に広がりやすく、体内に残ったウイルスが持続的に炎症を起こしているとの説や、本来は体を守る免疫が自身の細胞や組織を攻撃する「自己免疫疾患」に近い現象が起きているといった説がある。
後遺症を巡っては、米国の後遺症専門外来を受診した患者で、睡眠障害を訴えるケースが40%を超えたとの報告もある。
大塚副院長は「子どもの場合、睡眠障害は通学などに影響が出る恐れもあるなど、生活への支障が大きい。ワクチン接種をはじめとする対策で、まず感染しないことが重要だ」と話す。
■株ごとに傾向違う可能性
舘田一博・東邦大教授(感染症学)の話「ウイルスの株ごとに後遺症の傾向が違う可能性があるという重要な調査だ。変異株によっては細胞への影響が異なり、症状が変わることはあり得る。株ごとに攻撃を受けやすい臓器や細胞の種類などを検証していくことも必要だろう」
◆睡眠障害=睡眠に何らかの問題がある症状を指し、「入眠障害」や「中途覚醒」のほか、朝早く目が覚める「早朝覚醒」、ぐっすり眠った感じがしない「熟眠障害」などがある。睡眠中には骨や筋肉の成長を促し、体の疲労を回復させる働きがあるホルモンが分泌される。このため睡眠障害が続くと体調を崩したり、体の成長に悪影響が出たりするほか、うつ病などの精神疾患につながる恐れがある。