事件現場の部屋を2000万円超で借り続けた夫「やっと落ち着ける」…26年前の主婦殺害で容疑者逮捕

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名古屋市西区稲生町のアパートで1999年11月、主婦の高羽奈美子さん(当時32歳)が殺害された事件があり、愛知県警は31日、同市港区東海通、アルバイト安福久美子容疑者(69)を殺人容疑で逮捕した。
「やっとこれで落ち着ける」。高羽(たかば)さんの夫の悟さん(69)は31日、読売新聞の取材に、こう心境を明かした。「警察から容疑者が逮捕されたと聞いて、びっくりした。今は何が何だか分からないけれど、ホッとした」とも語った。
事件後に転居した後も、悟さんは「犯人につながるものは一つたりとも失いたくない」との思いで、事件現場となったアパートの部屋を借り続けてきた。
「現場の保存」という目的だとしても、遺族の意思で部屋を借り続ける場合、家賃は自分たちで負担しなければならない。これまでに支払った総額は2000万円を超える。
それでも部屋を借り続けたのは、「息子から母親を奪った犯人を実況見分に立ち会わせるまではこのままにしよう」と決めたからだ。本当は玄関の床に残る茶色く変色した血痕を見るのもつらい。それでも「生々しい現場が報道されることで事件の風化を防ぎたい」と願い、取材にも応じ続けてきた。
2009年には、殺人事件の公訴時効撤廃を求める被害者遺族でつくる「殺人事件被害者遺族の会(宙(そら)の会)」の設立に参加。10年4月には殺人罪などの時効が撤廃されていた。
発生から25年となった昨年11月には仏壇に手を合わせ、奈美子さんに「今度は犯人の逮捕を報告するから。それまで諦めないから」と誓っていた。
「これで部屋も片付けられる。警察には詳しく調べてもらいたい」と悟さん。「26年間支えてくれ、支援してくれた人たちに感謝を伝えたい」

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