江戸時代に発見され、古くは大名や僧侶など限られた者のみに利用が許されていた日光・鬼怒川温泉。一説では洪水の際の水流が「鬼が怒っているよう」だということから、この名がつけられたという。
【写真】「目が冴えるような金髪に真っ赤なリップ…」”韓国風メイク”を施した八田與一容疑者、SNSのアイコンほか
NEWSポストセブンは3年以上にわたって雲隠れを続けるひき逃げ犯・八田與一容疑者(29)の取材を進めるなか、この地へ辿り着いた。
警視庁と「大分県別府市大学生ひき逃げ殺人事件早期解決を願う会」はこれまで、連携して情報提供を呼びかけてきた。これまで1万件以上の目撃があり、うち4000件近くが関東に集中しているとされる。
そんななかある”目撃情報”に関する証言を得た。鬼怒川で生活する住民に話を聞くと、地元の警察も動く騒ぎになっていたという──。【全3回の3回目】
全国紙社会部記者が語る。
「大分県別府市で事件が起こったのは2022年6月29日。信号待ちのバイク2台に容疑者が運転する軽乗用車が追突し、男子大学生(当時19)1人を死亡させた。八田容疑者は事件後、裸足で逃走しそのまま行方がわからなくなった。
当初は、単なるひき逃げとして捜査されていましたが、ことし6月に殺人と殺人未遂で新たに逮捕状がとられた。捜査関係者によれば、大幅なスピード違反で殺人に至ったことや、すぐにその場から逃走したことから、事案の”悪質性”が認定されたことによる措置だそうです。これにより、八田容疑者の容疑に時効はなくなった」
これまで記者は、八田容疑者の人となりを探るべく取材を重ね、2年近く生活していたという鬼怒川に辿り着いた。彼は鬼怒川のツアー会社に住み込みながら働き、一時期は交際する女性もいたようだ。この会社の社長によれば、「同年代の子3人と、なんら問題なく寮生活していた」という。
この寮の大家が明かす。
「茶髪というか、金髪で、今どきの男の子って感じだったね。毎朝、出勤するたび顔を合わせていたんだけど、あっちから挨拶してくれる。この寮は入れ替わりが激しいんだけど、むしろマトモなほうだった。人殺しするなんて、まさかという思いですよ」
この寮は一軒家で、従業員にはそれぞれ部屋も用意されていた。八田容疑者は会社を辞めるまで、特にトラブルなくここで生活していたようだ。
「家の中にエレクトーンがあるのを見つけて、『弾けるの?』って言ったらその場で弾いてくれてね。習ったことがあるんだと言っていた気もする。音楽が好きだったみたいね。
彼女みたいな人と家に入っていくのも3~4回見ました。泊まりがけとかではなくて、日中遊びにきて、その日のうちに帰っていく感じ。他の子もいるから、さすがに気を遣ったんでしょう」(同前)
八田容疑者の取材に関わったことのあるキー局報道部記者はこう話す。
「それまで、八田容疑者はリゾートバイトで全国を転々としていた。いずれも短期間だったが、鬼怒川にいたのは2年間。比較的長い期間を過ごしたこの街は、彼にとって心が落ち着く場所だったのかもしれません」
そんな鬼怒川で、冒頭の”目撃情報”があったという。温泉街で定食屋を営む70代の男性がこう証言する。
「1年から1年半くらい前、刑事が店に来てさ、『おたくはトンカツを出しますか』って、わけのわからないことを言ったの。話を聞いたらあのひき逃げの捜査をしているというんだよ。刑事曰く、『八田らしき男が、近くの旅館で働いているという情報があった。その男は同僚に鬼怒川に行きつけのトンカツ屋があると話していて、それを調べている』ということだった。俺はその話しぶりからして、川治温泉(鬼怒川の北側)の旅館のことを指していたんじゃないかと思う。
この街の観光業の人は仕事さえしていれば、よそ者でも目立つことはない。例えば奥日光なんかは、冬場は道も閉鎖されるし、逃げるにはぴったりだよね。ここにいたとは信じたくないけど……」
「ABEMAニュース」では「『派遣スタッフが似ている』温泉地ホテルで”八田與一容疑者”目撃情報…リーゼント刑事が現場に急行」という動画を配信している。この男性が証言するのとほぼ同時期だ。動画内では情報提供者であるという同僚のホテルスタッフの協力をもとに、スタッフが男性を目視で確認しているが、最終的に”他人の空似”と結論づけられた。
この情報は、警察が捜査にあたって掴んでいた情報と同じだったのか、それとも別の”目撃情報”だったのか──。
遺族のためにも一刻も早い事件の解決が待たれる。
(了。はじめから読む)
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