兵庫県の定例記者会見での斎藤元彦知事(47)と記者たちの“バトル”は、かれこれ半年以上も続いている。だが、ここにきて動きがありそうだ。
「刑事処分に向けた捜査は、最終段階に入っていると聞いています。近々、神戸地方検察庁が刑事処分を行うことになると思われます」
そう話すのは在阪のテレビ局記者だ。
知事の会見は昨年11月から会見時間が短縮され、これまでは3時間に及ぶこともあったが、今では1時間程度に制限されている。また会見に参加する記者が増えたということもあって、クラブ外の記者やフリーのジャーナリストの質問はくじ引きになった。
「これは彼らの追及は激しいので、できるだけ避けたいという気持ちがあるんじゃないでしょうか。いつもの“斎藤答弁”は相変わらずですが、最近の会見では声のトーンや表情から、明らかにいら立っている感じが伝わってきます。“追加告発”があってからは特にそう感じます」(同・在阪テレビ局関係者)
斎藤陣営から県内のPR会社に支払われた約70万円が同会社社長のSNS運営などへの報酬に当たるとして、郷原信郎弁護士と神戸学院大学の上脇博之教授らが斎藤知事とPR会社社長を公職選挙法違反(買収、被買収)の容疑で刑事告発したのは昨年の12月のこと。
神戸地検は今年2月、兵庫県警と合同でPR会社の関連先を家宅捜索し、6月には兵庫県警が2人を書類送検した。また8月には斎藤知事の任意聴取も行っていた。
そんな中で、9月5日に“追加告発”が行われた。斎藤知事とPR会社社長について、公職選挙法違反の利害誘導、被利害誘導の疑いもあるとして、郷原弁護士と上脇教授らが神戸地検に追加の告発状を提出した。
郷原弁護士らは、斎藤知事側とPR会社のやり取りが仮に買収罪にあたらなくても、利害誘導罪にあたると指摘する。
総務省のホームページには「利害誘導罪」についてこう記されている。
〈特定の、あるいは限られた範囲の有権者や選挙運動者に対し、その者又はその者と関係のある団体(寺社、会社、学校、組合、市町村等)に対する寄附などの特殊の直接利害関係を利用して投票を誘導した場合に成立します。また、利害誘導に応じたり、利害誘導を促した場合も処罰される〉
女性社長と斎藤知事側の主張は、
・女性社長が選挙運動をしたことはボランティアであって、女性社長個人におカネは支払われていない
・おカネは会社に支払われたのであり、その支払いはポスター制作費などであり、選挙運動とは関係ない
の2点だ。
追加告発となった利害誘導罪について、元・テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士に取材した。
「買収罪は選挙運動をした人に直接おカネなどを渡した場合に成立するものですが、今回の場合、斎藤知事側はPR会社の社長に直接おカネを支払ってはおらず、形式上は会社に支払っている。このため『社長と会社は全く別』と強調して買収罪にはならないと反論する可能性があります。
しかし利害誘導罪を使えば、女性社長とPR会社は関係が深いので、その会社に利益を与えることで社長を選挙運動に誘導したとして罪に問える可能性が広がる。会社や団体との利害関係を利用して、社員や構成員などに投票に行かせたり選挙運動を手伝わせるよう誘導したら、利害誘導罪が成立し得ます」
それでも、女性社長は、
「会社の利益とは関係なく、もともとボランティアをするつもりだった」
と主張することも考えられるが、西脇弁護士によれば、
「選挙の2ヵ月前に斎藤元彦氏自らPR会社に行って社長と会い、直後に会社への業務発注と社長の選挙運動参加が決まっている。この時系列からすると、言い訳が通るかは疑問です」
まだ完全に逃げ道が塞がれたようではないが、斎藤知事の“包囲網”は間違いなく狭まっているようだ……。
取材・文:佐々木博之(芸能ジャーナリスト)