インバウンド増でスーツケース迷惑問題が深刻化 エスカレーターでの落下事故も…注意されても開き直る乗客

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秋の旅行シーズンはオーバーツーリズムのトラブルも多発する。なかでも近ごろ増えているのが、キャリーバッグ・スーツケース迷惑問題だ。ミニ冷蔵庫くらいはありそうな巨大バッグを、人込みだろうが電車・バスの中だろうがガラガラ引っ張って、他の乗客や通行人を妨害してもお構いなし。京都では市営バスが大混雑となり、地元住民が乗車できなかったり、遅延で学校に遅刻したりということが頻発している。新幹線車内では乗降口や通路をふさぎ、駅の改札口の前やコンコースを占拠する。
邪魔なばかりか、エスカレーターでの落下事故も起きている。落下させて他人にけがをさせれば、過失傷害罪や重過失傷害罪に問われ、治療費や慰謝料など損害賠償も求められる。外国人観光客だけではないが、とにかくマナー無視が目に余るのだ。しかし、世界のトラベルバッグ市場は急拡大中というから、迷惑バッグの横行は今後さらに増えるのは間違いない。
鉄道会社やバス会社の対策はどうなっているのだろう。JRグループは縦・横・高さの合計が160センチ以下の荷物は座席脇まで持ち込み可としていて、網棚に載せることを薦めている。それより大きい、3辺の合計が250センチまでの荷物は「特大荷物スペースつき座席」を事前予約しなければ持ち込めない。予約なしに持ち込むと、1000円の追加料金の支払いを求められる。さらに大きい荷物は持ち込み不可なのだが、そもそもこの規則が緩すぎるのではないか。もう少し”小型化”すれば、他の乗客の邪魔になることも減るはずである。
路線バスの多くは、持ち込める手回り品をおおよそ30センチ四方で10キロまでと定めている。京都市営バスも「大きな荷物の持ち込みはご遠慮ください」と日本語、英語、中国語で書かれたステッカーを張ったが、いっこうに改善しない。
鉄道・バス会社では、車掌や駅員、運転手は規則外の荷物の持ち込みは拒否できるとしているが、注意されても、禁止の表示はないと開き直ったり、言葉がわからないふりをする乗客もいるから、対応しきれないのが実状だろう。国土交通省は「手ぶら観光」をPRして、大きな荷物は一時預かりや配送委託するよう呼び掛けているが、これもあまり効果が出ているように見えない。いまのところ、迷惑バッグに打つ手なしなのだ。
キャリーバッグでもう一つ問題になっているのは放置だ。部屋に残してホテルをチェックアウトしたり、路上に捨てたり、空港のロビーにも置いていく。関西空港に放置されたスーツケースは、2024年には816件で過去最多になった。大阪のあるホテルでは年間に200個以上が置きっぱなしにされ、その処分に15万円もかかったという。万博開催中の大阪は、繁華街に捨てられるキャリーバックも目立つ。
だったら、捨てられるスーツケースを回収して再利用できないかという会社が現れた。日本鞄材株式会社は捨てられたり不用になったスーツケースを回収し、再販売、素材リサイクル、寄付など「スーツケースリユースプロジェクト」を進めている。回収費は1個2200円。すでに、大手ホテルチェーンや宿泊施設との取り引きも始まっているという。
迷惑キャリーバッグのトラブルは、オーバーツーリズムに悩むイギリスやスペイン、フランスなどでも起きている。解決のいい知恵はないものか。
(シニアエディター 関口一喜)

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