「中学生の子どもが、いまだにキッズメニューを頼んでしまいます」
そう話すのは、都内に住む女性です。女性の子どもは中学生ですが、小柄で少食。体格も小学生に見えるといいます。ファミレスやファストフード店に行くと、子どもは迷わずキッズメニューを選びます。
「マクドナルドのハッピーセットは年齢制限がないので買えますが、ファミレスでは『小学生以下』と書かれていることもあって気になっています」と女性。
彼女自身は大人用メニューを注文してほしいと思いつつも、キッズメニューにしかない唐揚げやポテトを子どもが食べたがるといいます。
「申し訳ないので、親の注文を多めにしていますが、お店から注意されたらどうしようかとドキドキしています」(女性)
では、「小学生まで」と書かれたキッズメニューを中学生が注文した場合、法的な問題はあるのでしょうか。
小学生までと定められているメニューを中学生が注文すれば、店のルール違反です。「通常のメニューを頼んでください」と言われるでしょう。従わなければ、退店や出入り禁止になる可能性があります。
ただし、すでに食べてしまった分の代金を支払えば足り、追加料金を請求されることは通常ありません。一方で、「小学生以下は300円」で「中学生以上は450円」といった価格差がある場合には、差額の150円を支払う必要があります。
では、中学生が「小学生です」と年齢を偽って注文した場合、詐欺罪(刑法246条1項)は成立するのでしょうか。(少年法や刑事未成年の問題はとりあえず省略します)。
同じ料理で価格差があるのに小学生を装って安く食べたなら、詐欺罪にあたる可能性があります。しかし、価格が同じで単に「対象は小学生まで」と書かれているだけなら、詐欺罪は成立しないと考えられます。
詐欺罪が成立するには、「欺く行為」によって相手が勘違い(錯誤)し、その結果として財物を交付する必要があります。
キッズメニューは、子連れ客を呼び込むためのサービス色が強いもので、年齢確認まで厳格におこなっている店はほとんどありません。こうした事情を踏まえて、中学生が注文しても「欺く行為」とまでは評価しにくいでしょう。(最判平成26年3月28日刑集68・3・582、最決平成26年3月28日刑集68・3・646の両判例など参照)
年齢を偽って注文する行為が、偽計業務妨害罪(刑法233条)にあたるかも問題になりますが、実際には業務を妨害する危険性は乏しく、成立しないと考えられます。
また、軽犯罪法の「悪戯による業務妨害」(同法1条31号)にもあたらないでしょう。「悪戯」でも「妨害」でもないと考えられるからです。
このように、詐欺罪などの犯罪に問われることは通常ありませんが、ルール違反であることは間違いありません。
唐揚げやポテトが食べたい気持ちは理解できますが、店側がルールを示している以上は「中学生ですが、このメニューを食べたいと言っているので、頼んでよいですか?」と一言確認するのが筋ではないでしょうか。
「バレなければいい」とこっそり注文すると、思わぬトラブルになったり、せっかく楽しい外食が後味の悪いものになりかねません。