スーパーなど小売店で肉や魚などの生鮮品を触る客がいる。あまりにベタベタと触っていると、衛生的な観点から不潔に感じてしまうこともある。
SNSには「スーパーに行ったら鯵(アジ)の目玉を指で押しつぶしてる子どもがいた」という投稿があった。
投稿者が子どもに「やめなさい」と叱ったところ、投稿者を睨みつけた母親が子どもの手を引いて離れて行ったという。
この投稿に対して、注意した行動を称賛する声が相次ぎ寄せられた。
また、「鯵の目、焼いたら食べれるのに(怒)」「…というより目玉つぶした鯵はその子のお母さん買い取らないかんの違う?」といった意見もあった。
子どもが店の商品を触った場合、親にはその商品を買い取る義務はあるのだろうか。大橋賢也弁護士に聞いた。
–子どもがスーパーの生鮮コーナーの魚の目玉を押すなど、生鮮品に触った場合、どのようなケースであれば、買い取る必要があると考えられますか。
子どもが、特にパックに入られていない魚の目玉を押すなど、生鮮品に触った場合、スーパーは、その後、その魚を一般の客に販売することはできなくなるでしょうから、スーパーには魚の販売代金相当額の損害が発生したことになります。
このような場合に、親が一般的に取る対応としては、「魚を買い取る」ことではないでしょうか。つまり、親は、魚をレジに持って行き、代金を支払って、魚を買い取るわけです。
では、親が、魚を買い取らない場合、スーパーはどのような対応を取ることができるのでしょうか。
この点、子どもが商品である生鮮品に触った場合、上述したように、スーパーは、その魚を一般の客に販売することができなくなるという損害を被るので、親に対して、魚の販売代金相当額を、不法行為に基づき損害賠償請求することができます(民法709条、714条1項)。
これに対し、スーパーは、親に対して、魚の買い取りを請求することはできないと考えます。子どもが売り物である魚に触っただけでは、親とスーパーとの間に売買契約が成立するわけではないからです。つまり、親は、いかなる場合であっても、魚を買い取る必要はないといえるのです。
しかし、スーパーに損害賠償請求させるというのもいかがなものかと思うので、親が責任を取って魚を買い取るのが、一番よい解決方法だと思います。
【取材協力弁護士】大橋 賢也(おおはし・けんや)弁護士神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン。事務所名:川崎エスト法律事務所事務所URL:http://kawasakiest.com/