血を吸う「蚊」9月中旬以降に大発生の可能性 刺されること減った?専門家「今は夏バテ中」

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記録的暑さとなった今夏。「例年より蚊に刺されることが減った気がする」。西日本新聞「あなたの特命取材班」にそんな声が寄せられた。専門家によると、確かに猛暑や少雨の影響で蚊も「夏バテ」し、数も少なくなっているという。蚊は夏の季語だが、実は近年、秋に活動が活発化している。これから気温が下がって雨が多くなれば、一気に増える可能性がある。感染症を媒介する恐れもあり、専門家は「秋こそ虫よけ対策を」と注意喚起する。
日本には100種以上の蚊が生息しているが、人間の血を吸う主な蚊がヒトスジシマカだ。産卵に必要な栄養を確保するためにメスだけが吸血する。草むらを好み、日中の屋外で吸血することが多い。
「夏の風物詩だった蚊も『夏バテ』しています」と話すのは、害虫防除技術研究所(千葉県)の白井良和代表。ヒトスジシマカは暑さに強く、気温25~30度で動きが活発になる性質があり、7~8月が発生のピークとされていた。だが、それは10年ほど前の話。猛暑続きの近年は傾向が変わったという。気温が35度以上になると動きが鈍くなり、吸血の意欲も低下してしまうからだ。
さらに雨が少ないと、産卵場所となる水たまりがすぐに蒸発するため、ふ化や成長ができず、数が少なくなるそうだ。
一方で、ヒトスジシマカの卵は乾燥に強いのが特徴。産卵から約1カ月たっても、水に入れたらふ化する。今週半ばから全国的に曇りや雨が予想されており、猛暑を生き延びた卵が一斉にかえる可能性もある。「9月中旬~下旬に蚊が大量発生する可能性もあります」と白井代表は語る。
要注意なのは、この蚊は吸血する際、デング熱など感染症を媒介する恐れがあること。2014年には蚊が媒介するデング熱が70年ぶりに国内で流行した。新型コロナ禍が落ち着いて海外との往来が増える中、無症状でも感染症にかかっている人の血を吸った蚊がウイルスを保有し、別の人に媒介することはあり得る。
特に体温の高い子どもや妊婦は蚊に刺されやすい。長袖など蚊に刺されにくい服装や虫よけスプレーの使用が予防には効果的だ。白井代表は「まず刺されないことが大事。秋も油断せずしっかり対策を」と呼びかけている。
(黒田加那)

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