「意味が分かってるのか」「交流からやめて」 「アフリカ・ホームタウン」認定4市に問い合わせ殺到、業務に支障も

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独立行政法人国際協力機構(JICA)によるアフリカ諸国との国際交流事業「JICAアフリカ・ホームタウン」をめぐり、SNSを中心にさまざまな情報が拡散されるなか、「ホームタウン」に認定された愛媛県今治市、千葉県木更津市、新潟県三条市、山形県長井市の4市は問い合わせや苦情の対応に追われている。
J-CASTニュースが4市を取材すると、長井市の担当者は「常に4回線くらい埋まっている」とし、業務に支障が出ていると話した。木更津市の担当者も、問い合わせや苦情の電話について「もはやカウントできる状況ではない」とし、なかには強い口調をぶつける人もいると明かした。
JICAが2025年8月25日に公式サイトで発表した声明によると、「JICAアフリカ・ホームタウン」は、「これまでに各自治体が築いてきたアフリカ諸国との関係をさらに強化することで、アフリカの課題解決と日本の地方活性化に貢献すること」を目的としたもの。今治市とモザンビーク、木更津市とナイジェリア、三条市とガーナ、長井市とタンザニアのそれぞれの交流を強化するため、各市が「JICAアフリカ・ホームタウン」に認定された。
一方で、「The Tanzania Times」の「日本が長井市をタンザニアに捧げた」と直訳できる「Japan Dedicates Nagai City To Tanzania」という見出しの記事や、「BBC News Pidgin」による日本が木更津市で働くことを希望するナイジェリアの若者のために特別なビザを創設する予定という旨を記載した記事などが、SNSで拡散、誤解された。それにより、移民受け入れを促進しているといった不安の声も上がった。
外務省は25日、「移民の受け入れ促進や相手国に対する特別な査証の発給を行うといったことは想定されておらず、こうしたことが行われるという一連の報道・発信は事実ではありません」と発表した。
JICAも同日、「山形県長井市がタンザニアの国の一部になると誤解を与えるような記載や、移民の受け入れ促進、日本と当該諸国との往来のための特別な査証の発給等の記載は、いずれも事実に反します」とし、「現地の報道等について、内容の訂正を速やかに行うよう、申し入れを進めています」と発表した。4市もそれぞれこの件に関し声明を発表している。
4市の状況はどうか。木更津市のオーガニックシティ推進課の担当者はJ-CASTニュースの取材に、「昨日今日と、朝から晩までずっと電話が鳴りやまない状態です。7名から10名体制で電話対応をしていますが、なかなか追いついていないような状況です」と話した。件数は「もはやカウントできる状況ではない」という。メールは25日時点で700件以上来ているとした。
問い合わせや苦情の内容については、「海外メディアなどの報道と本市が発表している内容の違い」や「移民の受け入れに対する不安」、「国に対するそもそもの行政不信」などが多いという。
職員の説明ですんなり理解してくれる人もいる一方で、「お前はこんなことも知らないのか」など、強い口調で心無い言葉をぶつける人や通話を録音する人もいるという。担当者は電話対応に当たっている職員の心身の健康面での心配も口にした。また、電話対応のため「業務が停滞している状況」だとも明かした。
問い合わせや苦情への対応について前出の担当者は、
と話した。
「JICAアフリカ・ホームタウン」については、これまでのオリンピックでのナイジェリアの選手団の受け入れなどが評価されて認定を受けたとし、「ホームタウン」としての具体的な取り組みは具体的に決まっていないという。
「移住を大量に受け入れるとか促進するとか、そういったものではないということは強く発信していきたい」と強調。「引き続き、JICA等の関係機関を通じ、誤報に対して丁寧に対応していきたいと思っております」とした。
長井市都市交流推進室の担当者は、25日は「朝からずっと電話が来ておりまして」と話す。夕方時点でメールは500件を超えていたという。26日も前日ほどではないものの、「常に4回線くらい埋まっている」とし、「業務に支障が出ている状態」と明かした。
問い合わせや苦情の内容については、「移民を受けれるのは反対」「政府が長井市をタンザニアに贈呈することは反対だ」など、「誤った内容での反対のメールが多い」とした。
長井市の担当者は、移民の積極的受け入れや長井市がタンザニアに土地を提供するといった情報について、「そういったことの事実は一切ない」と強調。マラソン大会をはじめとしたタンザニアとの交流については「今まで通り行っていく」とした。
三条市地域経営課の担当者は、25日の朝から26日の16時までの時点で電話が約420件、メールが約3600件寄せられているとした。地域経営課以外にも広報課などにも苦情が来ており、それも合わせた数字という。「今日もうちの係は一切通常業務ができない状態でしたし、ほかの係もそのような状況に近いと思います」と明かした。
三条市の担当者は、25日は「何がどうなっているんですか」という趣旨の問い合わせが多く、説明すればわかってもらえることも多かったが、26日になって「執拗に声を荒げる方が多い印象」と話した。たとえば、「ホームタウンという言葉の意味が分かってるのか」「もう交流からやめてください」「アフリカ人が来たら、周辺の市町村の治安まで脅かされてしまう」といった声が寄せられたという。
今治市観光課の担当者は、26日9時までの時点でメールが1400件以上、SNSのコメントが3400件、合わせて5000件近くの意見が届いたとした。電話は約460件来たという。「移住を受け入れて治安が悪化するんじゃないか」「受け入れはやめるべきだ」といった声が多かったとした。

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