「年賀状じまい」で後悔も やめる前にしておきたいことは

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デジタル化や高齢化の影響で、「年賀状じまい」をする人が増えている。だが、安易に差し出しをやめると、思いがけず貴重な人間関係を失ってしまうケースもあるようだ。もうすぐ年の瀬。年賀状を終わりにしようと思ったら、どんなことに気をつければいいのか。公益財団法人「ダイヤ高齢社会研究財団」(東京)主任研究員で、「後悔しない『年賀状終活』のすすめ」(2019年)の著書がある澤岡詩野さん(48)にアドバイスを求めた。【大平明日香】
「今年限り」で関係を見つめ直す終活年賀状 日本郵便によると、23年用の年賀状の発行予定は16億4000万枚と、ピークの04年用(約44億6000万枚)から3分の1近くに減る見込みだ。メールやSNS(ネット交流サービス)で新年のあいさつを済ませる人が増えた▽高齢者の間で人生の終わりに備える「終活」が広がるようになった▽個人情報保護の観点から学校や職場で住所録が配られなくなった――ことなどが減少の背景にあるとみられる。 書くこと自体が目的化しがちなことも、年賀状離れを加速させている。澤岡さんは「子どもの頃は出したい相手に出していたので、楽しかったはずです。でも、大人になったら前年に届けてくれた相手に儀礼的に送ったり、名刺を見ながら『誰だっけ?』なんて思いながら書いたりしていませんか」と語る。 澤岡さんは18年、「大変だから年賀状をやめる」とつづられた新聞投稿を読んだことを機に、高齢者を対象とした調査に乗り出した。年賀状をやめた50人にアンケートを実施したところ、その理由(複数回答可)は「意味が見いだせなくなった」(27人)が最も多く、「終活や断捨離の一環」(22人)が続いた。また、やめていない50人からも「慣例だからしょうがなく続けている」(5人)、「そろそろやめたい」(6人)との意見があった。 一方で、一度に全ての相手とやり取りをやめてしまうのは注意が必要であることも分かった。澤岡さんが完全にやめた高齢者に聞き取りをしたところ、「誰ともつながりがなくなった」「元日に何もなく、心にぽっかり穴が開いたようだ」との声が寄せられた。 知り合いとのやり取りを年賀状から無料通信アプリ「LINE(ライン)」に切り替えた人は、「元気な時はよかったが、その人が亡くなったことを2年後に共通の友人から聞かされた。喪中はがきはあっても、『喪中LINE』は存在しない」と漏らしたという。 では、年賀状を書くことが負担になっている人はどうすればいいのか。澤岡さんは「やめる、やめないの二択ではなく、人間関係を整理することをおすすめします。『出したい人』と『出さなくていい人』をリスト化し、数年かけて枚数を減らせばいいのです」と提案する。 分類の基準は人それぞれだが、例えば形式的な付き合いの人や、メールやSNSであいさつができる人、日常的に顔を合わせる人などは「出さなくていい人」となることが多い。一方で、古里の友人や恩師、転勤先で知り合った人などは「出したい人」の候補となる。高齢になっても、自分が輝いていた時代を思い出させてくれたり、今でも社会の一員であると感じさせてくれたりする存在だからだ。 また、「出さなくていい人」に礼を尽くすことも忘れないようにしたい。最後の年賀状に、「定年退職を機に」「これからはインターネットを通じて連絡するので」といった理由を明記し、一言でも手書きのメッセージを添えると気持ちよく納得してもらえるという。「『あなたとのつながりはこれで終わり』と受け取られないようメールアドレスや電話番号を伝え、『今後ともよろしくお願いします』などと書くと良いでしょう」 大切なのは実態の伴う人間関係を持つことであり、年賀状は一つの手段に過ぎないということだ。澤岡さんは強調する。「誰とつながっていたいのか、どんな人間関係を大事にしたいのかを今一度よく考えてほしい。それを整理した上で、年賀状やSNSといったコミュニケーションツールを使い分ければいいのではないでしょうか」
日本郵便によると、23年用の年賀状の発行予定は16億4000万枚と、ピークの04年用(約44億6000万枚)から3分の1近くに減る見込みだ。メールやSNS(ネット交流サービス)で新年のあいさつを済ませる人が増えた▽高齢者の間で人生の終わりに備える「終活」が広がるようになった▽個人情報保護の観点から学校や職場で住所録が配られなくなった――ことなどが減少の背景にあるとみられる。
書くこと自体が目的化しがちなことも、年賀状離れを加速させている。澤岡さんは「子どもの頃は出したい相手に出していたので、楽しかったはずです。でも、大人になったら前年に届けてくれた相手に儀礼的に送ったり、名刺を見ながら『誰だっけ?』なんて思いながら書いたりしていませんか」と語る。
澤岡さんは18年、「大変だから年賀状をやめる」とつづられた新聞投稿を読んだことを機に、高齢者を対象とした調査に乗り出した。年賀状をやめた50人にアンケートを実施したところ、その理由(複数回答可)は「意味が見いだせなくなった」(27人)が最も多く、「終活や断捨離の一環」(22人)が続いた。また、やめていない50人からも「慣例だからしょうがなく続けている」(5人)、「そろそろやめたい」(6人)との意見があった。
一方で、一度に全ての相手とやり取りをやめてしまうのは注意が必要であることも分かった。澤岡さんが完全にやめた高齢者に聞き取りをしたところ、「誰ともつながりがなくなった」「元日に何もなく、心にぽっかり穴が開いたようだ」との声が寄せられた。
知り合いとのやり取りを年賀状から無料通信アプリ「LINE(ライン)」に切り替えた人は、「元気な時はよかったが、その人が亡くなったことを2年後に共通の友人から聞かされた。喪中はがきはあっても、『喪中LINE』は存在しない」と漏らしたという。
では、年賀状を書くことが負担になっている人はどうすればいいのか。澤岡さんは「やめる、やめないの二択ではなく、人間関係を整理することをおすすめします。『出したい人』と『出さなくていい人』をリスト化し、数年かけて枚数を減らせばいいのです」と提案する。
分類の基準は人それぞれだが、例えば形式的な付き合いの人や、メールやSNSであいさつができる人、日常的に顔を合わせる人などは「出さなくていい人」となることが多い。一方で、古里の友人や恩師、転勤先で知り合った人などは「出したい人」の候補となる。高齢になっても、自分が輝いていた時代を思い出させてくれたり、今でも社会の一員であると感じさせてくれたりする存在だからだ。
また、「出さなくていい人」に礼を尽くすことも忘れないようにしたい。最後の年賀状に、「定年退職を機に」「これからはインターネットを通じて連絡するので」といった理由を明記し、一言でも手書きのメッセージを添えると気持ちよく納得してもらえるという。「『あなたとのつながりはこれで終わり』と受け取られないようメールアドレスや電話番号を伝え、『今後ともよろしくお願いします』などと書くと良いでしょう」
大切なのは実態の伴う人間関係を持つことであり、年賀状は一つの手段に過ぎないということだ。澤岡さんは強調する。「誰とつながっていたいのか、どんな人間関係を大事にしたいのかを今一度よく考えてほしい。それを整理した上で、年賀状やSNSといったコミュニケーションツールを使い分ければいいのではないでしょうか」

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