茶道裏千家前家元の千玄室さん死去、102歳…文化勲章・世界平和の実現を訴え「空飛ぶ家元」

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千利休の流れをくむ茶の湯の文化を世界に広めた茶道裏千家前家元の千玄室(せん・げんしつ)さんが14日午前0時42分、死去した。
102歳だった。
千家は三代宗旦(そうたん)の三男宗左(そうさ)が表千家、四男宗室が裏千家、次男宗守(そうしゅ)が武者小路千家を興し、三千家として現在に続く。
千さんは裏千家十四代家元の長男として誕生。同志社大から学徒出陣で海軍に入隊し、特攻隊に志願するが出撃することなく生還した。1949年、大徳寺管長のもとで得度し、斎号鵬雲斎(ほううんさい)を授けられる。64年、十五代家元を継承し、宗室を襲名した。
十四代が茶道普及と茶室などの文化財継承のため財団法人化した「今日(こんにち)庵」と、指導者らで構成する社団法人「淡交会」を引き継いで、組織拡大に努め、茶道流派の中で最多の門弟を率いた。
戦争経験を踏まえて一碗(いちわん)の茶に平和への願いを込める「一碗からピースフルネスを」の理念を提唱。茶道文化の紹介とともに世界平和の実現を訴えて70か国以上を300回以上歴訪し、「空飛ぶ家元」と呼ばれた。
各地の大学などに茶道講座を開設、茶室や茶庭を作り、節目の年に平和祈念献茶式を開催。2000年と10年、15年、23年には米・ニューヨークの国連本部で事務総長や各国代表らを前に、11年にはハワイ・真珠湾で、旧日本軍の攻撃で沈没した戦艦アリゾナの記念館に日米関係者を招き茶を点(た)てた。
裏千家の海外拠点は2024年1月現在で38か国・地域に113か所。1970年に茶道留学制度を設け、40か国以上の500人余りが京都の裏千家を訪れて茶と日本文化を学んだ。
ユネスコ親善大使、日本・国連親善大使、日本国観光親善大使を委嘱され、97年には茶道界初の文化勲章を受けている。
2002年、長男に家元を譲り、大宗匠、千玄室を名乗った後も海外訪問を続けていた。
08年には韓国・中央大学校で文学博士号を取得。25年の大阪・関西万博の誘致特使も務めた。
晩年は戦争体験を基に平和や防衛問題での発信を強め、沖縄や地元の京都などで講演活動を行っていた。
今年4月に102歳を迎えた後も外務省参与など100以上の公職、役職を持ち、1時間以上の講演をこなすなど精力的に活動していた。

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