先の都議選で候補者全員が落選し、退潮傾向が鮮明となった日本維新の会で、新たな“内紛”が勃発中だ。7月3日に公示された参院選直前に党の選対責任者が強行した万博視察に、党内から「ふざけるな」と怒りの声が上がっているのだ。
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【実際の写真】満面の笑みで決めポーズ… 万博で“大ハシャギ”する「維新」議員
「焼肉いこか!」
30度に迫る勢いで気温がジリジリ上昇していた6月27日午前11時過ぎ。大阪・関西万博の海外パビリオンの一つ、バルト館内の結露に覆われた壁面にこう指で書き、ご満悦の表情を浮かべたのは日本維新の会の守島正衆院議員(43)だ。
守島氏は当選2回ながら、党の広報局長と選挙対策本部長代行という要職を兼務。“食事の誘い”は隣に並んで立つ同党の三木圭恵(けえ)衆院議員(59)に向けられたものなのか、二人は文字が消えるのをほほ笑みながら眺めていた。
一見するとプライベートな物見遊山のように映るが、日本維新の会幹部によれば、
「二人は党の国際局が企画した万博のPRプロジェクトのために来場しました。党のスタッフ2人も同行して六つの海外パビリオンを回り、その様子を動画で撮影もしています」
当日、一行が最初に向かったのはフィリピンパビリオンだが、午前9時の開場前にもかかわらず、パビリオン職員に案内され“特別待遇”で入館していく。
その後に訪れたキルギスパビリオンの滞在時間は30分ほど。移動中も終始、笑い声の絶えない行楽ムードが漂っていた。次に守島氏らが向かったのが冒頭のバルト館である。
同館はラトビアとリトアニアの二国による共同パビリオンで、「森と湖の国」とうたわれる両国を象徴した、結露をたたえた緑色の壁が目玉のアトラクションとなっている。守島氏が“落書き”したのもこの壁面だ。
「彼は企画した国際局のメンバーですが、三木さんは無役で、守島氏と仲が良いという以外に、同行の必然性は本来ありません。それよりも問題はタイミングです。参院選の前哨戦と位置付けられた6月22日の都議選で全敗を喫し、早急に選挙対策の練り直しが迫られていた。その最中に選対責任者の一人が万博視察に喜々として出かけるなど、あまりの危機感のなさにあきれて言葉も出ません」(同)
実は党内でも二人の万博会場入りについては反対の声が上がっていたと話すのは、別の維新関係者だ。
「視察に際し、守島氏らがVIP待遇で回ると聞いて、党幹部が“普通に自費で行くべきだ”と忠告したのです。というのも、党代表で大阪府知事の吉村洋文さん(50)でさえ、PRを兼ねた自身のユーチューブチャンネルの撮影などで訪れた時は自費で入場し、公私を厳しく分けていますからね」
今回撮影した動画は参院選後に党の公式ユーチューブで公開予定のため、党のPRも兼ねているという。
「国会議員だからといって何でもVIP待遇が許されるわけではなく、来たる選挙を前に、襟を正す意味でも“自腹で行かせろ”との意見が党内から出ました。ところが、そういった反対の声を押し切って彼らはVIP視察を強行したのです」(同)
そんな正論も馬耳東風――。守島氏らはバルト館を出ると意気揚々と昼食へ。店の名物のグルテンフリーの米粉ピザを注文しようとしたところ、店員から「30分かかる」と告げられ、「えー!?」と声を上げて不満げな様子を見せた守島氏。
この間、彼らは万博会場の壁に描かれたアート「エキスポーズ」をバックに同じポーズを取ってみせるなど、大はしゃぎするばかり……。
一行が最後の目的地であるエジプト館に到着したのは15時前。入口に「120分待ち」の立て札が立ち、入場が制限されていた中、守島氏らは入口ではなく、隣の「出口」から入場して館内へ消えていったのだ。同館を出て散会後の守島氏を直撃した。
批判の出ているVIP待遇での視察について問うと、
「そうですね。確かにそういうところはある。ただ今回は国際局が各国の大使館を訪問し、大使館経由のインビテーション(招待)という形で、向こうから“万博のPRのため来てください”ということで、取材で来ましたからね」
三木氏にも尋ねると、
「所持している通期パスでは(開場時間の)9時(から)しか入場できないため、エジプト館が発行した関係者パスを利用しました」
VIP待遇となったのは、あくまで「先方の都合」だったと回答した。
「週刊新潮」2025年7月10日号 掲載