「プールの女性更衣室に小さな男の子を入れると周囲の目が…」「娘が全然出てこなくて心配だった」“7歳ルール”に戸惑う親たちと、広がる「家族更衣室」の今

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7月に入り、全国各地でプール開きが始まった。だが、SNSには「更衣室」をめぐる不安や不満の声が多くあがっている。その背景には、公衆浴場における混浴年齢制限の変更などの制度改正がある。保護者たちのリアルな声を聞くとともに、施設側の取り組みにも迫った。
【画像】プールでじわりと広がりを見せる「家族更衣室」
暑さが本格化し、公営や民間のプールは大勢の人でにぎわっている。そんななか、「小学生の子どもの着替えが心配だから、異性だけど同じ更衣室に入った」「女性更衣室に大きな男の子がいて嫌だった」「小学生の息子を一人で男性更衣室に行かせるけど、性被害に遭わないか不安」など、SNSなどには「更衣室」をめぐってさまざまな声があがっている。
契機となったのは、2020年の厚生労働省による「公衆浴場における衛生等管理要領」の改正だ。この改正により、公衆浴場における男女の混浴を制限する年齢が「おおむね10歳以上」から「おおむね7歳以上」に変更された。
これを受けて各自治体では条例の改正が行なわれ、プールの更衣室についても「7歳以上は異性の更衣室の利用禁止」というルールを設ける施設が増えているのだ。
これに対して、さまざまな声があがっている。「小学生の娘と未就学児の息子と一緒にプールに行ったときにモヤモヤする」と話すのは、都内在住の母親だ。
「子どもたちが喜ぶので、夫が仕事で不在のときでも近隣の公営プールによく行きます。年長さんの息子はまだ一人では支度ができないので、娘と私と一緒に女性更衣室を利用するのですが、もうすぐ小学生だし、ルール上は認められているものの、なんとなく周りの目が気になることはあります」
娘を持つ父親からは、こんな声もある。編集部の記者はこう話す。
「小学1年生の娘と2人でプールによく行くんだけど、もちろん更衣室は別々。でも、親としてはとにかく心配で……。『コインロッカーをうまく使えるかな』とか『脱水機でちゃんと水着を脱水できるかな』とか、心配事が尽きません。小学校に上がる前は、妻が不在のときは一緒に男性更衣室に入ることもあったけど、周りに不審な人物がいないかどうかも気になりましたね」
特に心配なのは、プールから出たあとだと言う。
「とにかく7歳の娘が更衣室から出てくるのが遅くて…。仕方なく施設のスタッフに声をかけにいってもらったこともあります。あとで娘に聞くと、『ロッカーの前で別の人が着替えていて終わるのを待っていた』と言っていました」
いっぽうで、こんな声もある。小学1年生の息子とよくプールに行くという母親は次のように話した。
「土日にワンオペのときは、息子と2人で市民プールによく行きます。ネット上では『ワンオペ育児にプールは難しいのでは』という意見も見られますが、プールって何より子どもが喜ぶし、体力も使うし、夜も寝つきがよくなるので、ワンオペの日こそよく行きますね。
息子は7歳になったので更衣室は別々ですが、初めて行く施設の場合は入る前にまず『コイン式ロッカーかどうか見てきて』と言って見に行かせて、小銭が必要なら持たせます。鍵をかけるのは本人ができますし、着替えも一人でできます。プールからあがった後も、『脱水機にかけてね』と事前に念押しすれば、ちゃんとやってくれますね。性被害に遭わないかという心配もあるけど、ルールはルールなので」
保護者からさまざまな声が聞かれる更衣室の問題だが、「男女別」ではなく「家族」で利用できる更衣室を設置している施設もある。
東京都武蔵野市にある「武蔵野温水プール・武蔵野プール」では、2013年に「だれでも更衣室」を導入した。施設の担当者によれば、この更衣室は障がいのある人やその家族を含め、誰でも利用が可能だという。
「当初は障がいのある方に利用いただくことが目的でしたが、『うちの子、ちょっと着替えが下手だから』といった保護者の声も以前からあったので、どなたでも利用できるようにしました。未就学児のお子さんでも異性の更衣室に連れていくのが気になる場合は、ご利用いただくことができます。
特に未就学の女の子が男性更衣室に入ることに抵抗をおぼえるケースがあるので、そういった方々にも安心してご利用いただいています。利用を希望する際はスタッフに声をかけていただく形で大丈夫です」
混雑する土日には順番待ちになることもあるようだが、実際に利用した人からは、「この更衣室があってとても助かる」という声があるという。
また東京都三鷹市にある「SUBARU総合スポーツセンター」でも、施設オープン時から「多機能更衣室」「家族更衣室」を設置しており、7歳以上の異性の親子等の場合はこれらの更衣室を利用できるという。
民間の施設でもこうした更衣室の導入が進んでいる。東京都あきる野市のレジャー施設「東京サマーランド」のプールでは、2017年頃から「みんなの更衣室」を導入している。
同施設では、2022年の東京都の公衆浴場に関する条例改正に伴い、「7歳以上は異性の更衣室への入室禁止」としており、7歳以上の異性の子どもと一緒に更衣室を利用する場合は「みんなの更衣室」を案内しているという。担当者は次のように話した。
「夏季のレジャーシーズンには多くの家族連れやグループが来場されますが、従来の更衣室では、個別のスペースや仕切りが不十分な場合もあり、利用者の不安や不快感を解消する必要がありました。そのため、プライバシーを重視した更衣環境の整備が求められました。また、衛生管理や感染症予防の観点からも、個別の更衣スペースや清潔な環境の整備が重要視されました」
担当者によれば、より快適で使いやすい更衣室の導入や改修を計画することで、来場者のリピート率や口コミ評価の向上を図ること、また他のレジャー施設との差別化や、より魅力的な環境づくりを進めることも、「みんなの更衣室」の導入に至った背景にあるという。
特に夏季シーズンは多くの来場者が訪れるようだが、これまで更衣室をめぐるトラブルなどは発生していないと担当者は話した。
利用者が施設のルールを守ることはもちろん大前提としてあるが、一方でジェンダーをめぐる社会のあり方や人々の意識が大きく変化してきているのも事実だ。こうした更衣室の導入がさらに進むことで、誰もが安心して水のレジャーを楽しめるようになるのではないだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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