14億円規模の事件で注目 地面師詐欺に狙われるのはこんな土地【不動産業界 噂の現場】

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【不動産業界 噂の現場】
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大阪・ミナミを舞台にした地面師詐欺事件で、50代の男を主犯とする容疑者らが逮捕された。偽造書類によって不動産を保有する会社の代表に就任したと見せかけ、ビル3棟と各土地の売買代金約14億円をだまし取った疑いが持たれている。
実際の地面師詐欺をモデルにしたネットフリックスドラマが話題になったことで、地面師や土地をだまし取る詐欺については多くの人が知るところとなった。不動産業界でも警戒感は強まっている。
それにもかかわらず、地面師詐欺はなくならないばかりか、むしろ、これから増加する要素がそろっているという声もある。
業界関係者が語る。
「地面師が狙う土地の条件は3つある。―衢者が高齢で管理が行き届いていない土地∩蠡海任發瓩討い襦△△襪い倭蠡骸蠡海が放置されている土地所有者が海外にいるなど所在がつかみにくい土地だ。条件を満たす物件は、今後ますます増えていくとみられている」
まず高齢化の進行。国交省の「土地保有・動態調査」によれば、不動産の売り主で最も多いのが70代で、取引件数全体の約4分の1を占めている。不動産の現場では、売り主が施設や病院に入っているケースも多く、物件管理が行き届かず、連絡も取りづらい。地面師にとっては理想的な標的となる。
相続を巡る問題も深刻だ。相続人が複数いて話がまとまらない土地や、手続きが長年放置された土地が各地で増加している。関係者が多く権利関係が複雑になるほど、なりすましの余地が生まれやすくなる。さらに、外国人投資家による不動産取得も拡大している。所有者が海外に居住している場合の所在の確認は困難で、本人確認でも言葉の壁が出てくる。
それとは別に制度的な問題もある。日本の登記制度では書類が整っていれば疑われることは少ない。実際に今回の事件では印鑑や書類があったことで、形式上は登記が動いてしまった。
全国の法務局で処理される不動産の登記数は年間で約970万件にも及ぶという。もちろん、そのほとんどは滞りなく、うまく回っている。
これから、前述の条件を満たす物件が増えれば地面師被害も拡大する可能性がある。しかし、それでも全体の処理件数からすれば詐欺の可能性はわずかな割合にしかならず、抜本的にシステムを変える機運は高まりにくいのが実情だ。
つまり、地面師が活動する土壌は温存され、高齢化や国際化といった社会構造の変化が拍車をかけているのだ。
地面師はドラマの中だけの存在ではない。今日もどこかで次の獲物を探しているに違いない。
(小野悠史/ニュースライター)

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