日本大学重量挙部に入部予定の新入生の保護者から、本来支払う必要がない学費をだまし取ったとして、警視庁は10日、同部元監督の難波謙二容疑者(63)(東京都狛江市東和泉)を詐欺容疑で逮捕した。
少なくとも2001年以降、同様に学費名目で現金を振り込ませ、私的に流用したとみている。
発表によると、難波容疑者は40歳代の男性コーチと共謀して22年12月、翌年4月に奨学生として入部予定だった新入生4人の保護者に「2年次以降、(学費は)徴収されません」と虚偽の内容を伝え、入学金や初年度の授業料などの名目で計205万円を同部の口座に振り込ませ、詐取した疑い。
調べに、「保護者の了解を得て、寄付金としてもらった金という認識だった。私的に使用した金は一切ない」と容疑を否認している。
同大では、運動部が奨学生の候補者を大学側に推薦。合格決定後も、運動部を通じて学生に入学手続きが案内される運用になっていた。
奨学生になると、学費が全額または一部免除されるが、難波容疑者らは大学から預かった入学書類にあった正規の振込依頼書を虚偽の請求書に差し替えて発送。請求書はコーチが作成しており、振込先には重量挙部の口座番号が記されていた。
2人は保護者から入金があった後、大学側に免除分を除いた必要額を振り込んで、発覚を逃れていたという。コーチは任意の調べに、事実関係を認めている。
警視庁は、難波容疑者が同部の口座に入金された金をコーチから現金で受け取り、スーツやバッグの購入や自家用車のコーティングなどに充てたとみている。
日大は昨年7月に不正を公表。同月、難波容疑者を懲戒解雇し、コーチを降格処分とした。学内の調査で、被害に遭った部員は計58人、被害額は計約5326万円に上った。日大は昨年11月、立て替えた被害弁済分の支払いを求め、難波容疑者を東京地裁に提訴。同12月に刑事告発していた。
難波容疑者は日大の元重量挙げ選手で、1988年に体育助手として同大に採用された。当初から重量挙部のコーチを務め、2000年に監督就任後は、全日本大学対抗選手権(インカレ)で10回以上、同部を総合優勝に導いた。一方、11年には同大の生物資源科学部教授に就任していた。
元部員は取材に、「絶対的な存在で、練習には年に数回しか顔を出さなかった。高級外車に乗り、高級腕時計を着けていて、不思議に思っていた」と話した。
難波容疑者の逮捕を受け、日大広報部は10日、「本件不祥事を長年発見できなかったことを重く受け止めている。引き続き捜査機関に全面的に協力していく」とするコメントを出した。