暖かくなって過ごしやすくなりましたが、菌やニオイに関しては心配なことが増える季節。「自分なりに食中毒の対策はしてるけど、正しいか不安」「キッチン周りの嫌なニオイが気になる」という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、世界初の手押し式殺虫液を作った会社でもあり、40年近く菌・ウイルスの対策剤について研究開発を行っているフマキラー株式会社で菌やウイルスの研究に携わり、大学時代から培った科学の知識も活かして商品開発をおこなう進藤智弘さんに話を聞きました。
◆いまから気をつけるべき菌と理由
――過ごしやすくなり、菌の増殖も気になる時期に突入したような気がします。
進藤さん:そうですね。暖かくなり、冬とは違った菌やウイルスへの対策が必要となる時期です。とくに梅雨の時期から夏にかけては、細菌を原因とした食中毒の発生が増えます。
食中毒自体は年間を通して発生するものですが、冬場(とくに11月~翌年3月)に発生しやすいのはノロウイルスなどによる胃腸炎。暖かくなるこれからの季節は菌が増えやすくなり、食品に付いた菌によって起こる食中毒が多くなります。
――過ごしやすい3~4月頃や少し涼しくなった秋頃のほうが、油断しやすいから気をつけたほうがいいと聞いたことがあります。だいたい何℃くらいから菌は活発になりますか?
進藤さん:基本は25℃を超えたあたり。ただ、温度だけでなく湿度による影響も大きいので、雨がたくさん降る梅雨時期などはとくに注意が必要です。ほかにもさまざまな条件で菌は増えるので、すごく暑い時期ではなくてもしっかり注意したほうがいいですね。
――25℃と聞くとまだ先の話に思えますが、東京都だと2024年の3月末頃には1日の最高気温が24.6℃と28.1℃の日が続き、4月になると25℃超えが8日もありました。とくに注意したほうがいい食品や家庭でもできる対策方法はありますか?
進藤さん:とくに注意が必要なのは、お弁当や常温で置いてしまいがちな食品です。お弁当や食事の作りだめで常温に置いていると、どうしても菌が増えてしまう。なので、まずは調理をするときや器に入れるときに“菌をつけないこと”が重要です。
◆おかずの取り分けや鍋・おにぎりにも注意
――家庭で“菌をつけない”具体的な方法についても教えてほしいです。
進藤さん:調理する人がしっかりと手洗いをすることはもちろん、おかずを取り分けるときや盛り付け時に素手で取り分けたりせず、お箸やトングを使うことで菌がつきにくくなります。おにぎりは素手ではなくラップを使って握るなど、食品に直接触らないことがポイントです。
――忙しさや流れで、おかずをパッと手で器やお弁当箱に入れてしまうことはありそうですね。
進藤さん:はい。あと、食べ切ることも大切です。食べ切れる分だけ作るようにして、食べ切れなかったものはすぐに冷蔵庫へ入れる。箸をつけたものは残しておかずに処分するなど、“菌を増やさない”を徹底することも大事です。
何回かに分けて食べる鍋物やカレー類などは、常温でそのまま保管しない。保管する前にきちんと火を入れて菌を殺し、粗熱をとってから冷蔵庫に入れるようにします。そして冷蔵庫から出したときにもう一度火を入れてから食べるようにするといいですね。
――どれも、簡単に実践できそうです。
進藤さん:あとは事前に、お弁当箱や食器など食品を保管する器自体を除菌しておく。キッチン周りに使える除菌剤には食品や容器に使えるものもあるので、事前にチェックして、さまざまな用途に使えるものを1本購入していただくと節約にもなって良いと思います。
◆アルコール除菌のNGと便利な使い方
――アルコール除菌はキッチン周りだけでなく、シュッとスプレーするだけで家じゅうの至るところが除菌できる楽ちんなアイテムですが、注意することなどありますか?
進藤さん:生乾きのときにスプレーすると効果も半減するので、乾ききってから、もしくは乾いている状態のときに使ってください。玄関マットや靴箱に使える除菌と抗菌効果のあるような商品をスプレーしておくのもおすすめです。