小学校の卒業式を撮影する業務中に胸を揉まれて、精神的苦痛を受けたとして、アシスタントだった女性が、男性カメラマンを相手取り損害賠償を求めた裁判で、東京地裁が約140万円の賠償を命じていたことがわかった。
被害に遭った女性側が4月14日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて明らかにした。判決は2月10日付。男性カメラマンは刑事裁判でも強制わいせつ罪で有罪判決を受けている。
女性はこの日の会見で、この男性カメラマンが小学校での撮影を続けている可能性を指摘したうえで、子どもの安全を守るためにGPSを装着させるなどの措置が必要ではないかとうったえた。
判決文などによると、東京都稲城市にある小学校の体育館で2023年3月23日朝、小学校から撮影の委託を受けた男性(当時70代)が、撮影の準備中にアシスタントの女性(当時20代)の胸を着衣の上から揉むなどした。
強制わいせつ罪に問われた男性に対して、刑事事件の1審・東京地裁立川支部は2024年2月、懲役2年(保護観察付執行猶予4年)の判決を言い渡した。同年7月、東京高裁が男性の控訴を棄却。1審の有罪判決が確定した。
女性は刑事事件の被害者が民事の損害賠償も迅速に求めるための「損害賠償命令制度」を申し立てて、男性に賠償を求めていたが、そこでは決定がされず、改めて民事訴訟に移行していた。
このたび慰謝料など約279万円の損害賠償を求めた民事訴訟で、約140万円の賠償が命じられた。すでに支払われているという。
事件直後、女性は被害への対処を調べる中で、性暴力支援センターの存在を知ったという。
センターから「今日あったことを男性にメール送信し、否定する返事がなければ証拠になりえるかもしれない」とのアドバイスを受けて実行。
男性から「お詫び」の返答があった。このようなやりとりも今回の裁判において女性側に有利に働いたという。
女性は、被害によって抑うつ状態と診断され、カメラマンの仕事ができなくなったという。
「大学卒業後に、専門学校に入り直してまで勉強したのに、カメラを手にできなくなりました」
刑事裁判には、被害者参加制度を通じて参加。その後、移行した民事訴訟も争い、事件から裁判が終わるまでに約2年かかった。捜査機関から繰り返される聴取や被告人側の証言内容を受けて、精神的に苦しかったという。
もし同じような被害に遭った人がいれば、「示談のほうが身も心も守れると言ってしまうかもしれません」と語った。
強制わいせつ事件は、小学校が現場となった。女性によると、今も男性がカメラマンとして業務を続けているという情報もあるという。
女性の代理人をつとめた青龍美和子弁護士も「このような業者が小学校で子どもと接するのは社会的にどうなのかと思う」と指摘した。
女性は「犯人にGPSをつけるなど、子どもたちの安全が守られるようなシステムがつけられるべきだ」と話した。
性犯罪事件をめぐっては、子どもと接する人の性犯罪歴の確認を対象事業者に義務付ける日本版DBS制度の詳細を詰めるための議論が進められている。
(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)