日本最大の暴力団『山口組』は4月7日、およそ10年にわたり対立してきた神戸山口組側との抗争に、突然の「終結宣言」をした。衝突を続けてきた両者だが、抗争は本当に終わりを迎え、市民にも平和をもたらすのだろうか。ジャーナリストは「抗争が終わって活性化すると、“一般の人”が注意が必要」と指摘する。
4月8日、愛知県豊橋市にある「平井一家」の事務所に、特定抗争指定暴力団「山口組」の幹部たちが勢揃いした。
そこには、山口組のナンバー2・高山清司若頭の姿もあった。この時期に、これほどの幹部が集まるのは“異例”のことだ。
この動きは、2015年から続く、山口組分裂抗争の“終結”に向けたものとみられている。その1日前の4月7日、捜査関係者によると、特定抗争指定暴力団「山口組」の幹部が兵庫県警本部を訪れ、抗争終結に向けた誓約書を兵庫県警に提出した。
誓約書には「抗争を終結させ、今後一切揉めごとを起こさない」という内容が書かれていたという。突然の「抗争終結宣言」だった。
日本最大の暴力団・山口組。トップは、司忍(つかさ・しのぶ)こと篠田建市(しのだ・けんいち)組長だ。
しかし2015年、名古屋にある「弘道会」が出身母体の篠田組長の運営方針に複数の幹部が反発し、山口組は分裂した。井上邦雄(いのうえ・くにお)組長をトップとする「神戸山口組」が新たに作られ、そこからは両者の衝突が日常茶飯事となる。
抗争は、弘道会の本部がある「名古屋」でも繰り広げられた。2015年10月、弘道会傘下の組長が、名古屋市千種区にあった神戸山口組傘下の事務所で組員と衝突するなどし、双方が逮捕された。
2016年には、「神戸山口組」傘下組織の幹部が岡山市で射殺される事件もあり、逮捕されたのは、愛知県半田市にあった弘道会傘下の組員だった。その後も、神戸市の商店街で、神戸山口組系の組長が山口組傘下の組員に刺され大ケガをするなど、全国で「血で血を洗う事件」が繰り返された。
愛知県公安委員会などは2020年、市民に危険が及ぶ恐れがあるとして、「山口組」と「神戸山口組」を『特定抗争指定暴力団』に指定した。指定された警戒区域内では、組員が5人以上で集まったり、組事務所を使うことも禁止され、違反した場合は逮捕される。
東海3県では、弘道会の本部がある名古屋市や、岐阜県岐阜市、三重県の桑名市など、9つの地区が警戒区域に指定されている。
背景を探るため、取材班は山口組の創立110年を記念した機関紙を入手した。
機関紙の中には、「当局による締め付けも年々厳しくなり、制限などを数えればキリがないですが、時代に沿った考え方で活路を模索し、一人一人が己の矜持を持って行動しなければなりません」と記述があった。特定抗争指定による厳しい制限の効果が伺える。その実情について、山口組系の元組長は…。山口組系の元組長:「(事務所が)使用禁止とかなって、不便は不便やね。何人以上で歩いたらダメやとか、(複数で)飲食店に入るのもダメやし」
また、神戸山口組が弱体化し、「抗争の体をなしていない」と話す。山口組系の元組長:「神戸山口組についてはもう衰退していく一方で。カエシ(報復)っていうカエシしてないし。これ以上(山口組が)どこも攻めるところがない。井上1人しかいないから」
実際に、神戸山口組の構成員は2015年には2800人いたが、2024年には120人と9割以上減った。対する山口組は、6000人から3300人に減ったものの、差は歴然だ。抗争が終結に向かうのかについて、長年、暴力団を取材しているジャーナリストは、「これ以上長続きはしない」と予想する。
ジャーナリストの鈴木智彦さん:「抗争の勝ち負けって何かっていうと、抗争して発展した側が勝ちなんですよ。その定理で見ていくと、どちらも発展していないんですよね。勝者のいない抗争であるならば、それを続けていくメリットはない」
豊橋市の「平井一家」で4月8日、山口組の直系団体の組長らが終結した会合。関係者によると、山口組の幹部が「神戸は構うな。とにかく六代目山口組は前進あるのみ、前進あるのみ!」と大声で発表したということだ。抗争の終結は、市民にも平和をもたらすのか…。
ジャーナリストの鈴木智彦さん:「彼らは自分たちの中の暴力性だとか、反社会性を失ったわけではない。自分のメンツのため、自分のシノギのためだったら相手を殺すという、彼らの基本的な路線は弱いものには強いだから、彼らが抗争が終わって活性化すると、一般人の我々は注意しなきゃいけない」2025年4月11日放送