経済学者・成田悠輔さんがゲストと「聞かれちゃいけない話」をする新連載。第3回目のゲストは、東京大学名誉教授の上野千鶴子さんです。その冒頭を紹介します。
【画像】上野千鶴子氏と対談した成田悠輔氏
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上野 まず最初に、私を対談相手にご指名された理由は何ですか?
成田 深い理由はないです。
上野 浅くてもいいです。
上野千鶴子氏(左)と成田悠輔氏 文藝春秋
成田 上野さんが私を批判されているのを何度か目にした記憶がありまして。ある美術展について私が書いた短文への批判など。
上野 金沢21世紀美術館の「フェミニズムズ/FEMINISMS」展ですね。ご記憶にあってよかったです。あなたの展評に対して私が「ムカムカする」という文章を書きました。あれを読んで、どう思われましたか?
成田 具体的な内容はよく憶えておらず、深く思ったことはあまりなかったのだと思います。
上野 いや、深く思ってくださいよ。頑張って書いたんだから。
成田 内容より、私なんかの雑感になんでわざわざムカムカしていただけたんだろうと不思議でした。
上野 フェミニズムをテーマとするアートや表現に対する批評として、いかにも“男らしい”反応だったからです。情理を尽くして書きましたが、通じませんでしたか。
成田 通じなかったというより、自分にはそういう男っぽい部分があると思います。
上野 ご自覚があるなら何よりです。自覚なしにやってもらうと困るのでね。例えば、あなたはこの展覧会について〈こわくない〉と書かれてますが、これは典型的な男のクリシェ(決まり文句)です。自分が「こわい」「こわくない」を判定するマジョリティの立場にあることを無邪気に表明されている。
成田 分類判定というより感覚表明しているだけですが。ただ、クリシェであることは構わないんじゃないでしょうか。正論なクリシェや正直なクリシェもあるので。
上野 クリシェで性差別を再生産していただくのは困りますので。しかもあなたのような若い方が。
それまで私はあなたを全く存じ上げませんでしたが、そういうご縁ができた。そのご縁で今回、呼んでくださったわけですか。
成田 はい。そういう接点に興味がある人間なんです。
上野 私も好奇心が大変強い人間ですから、お招きいただいたので、のこのこ出てまいりました。
成田 ありがとうございます。
上野 あなたの「高齢者は集団自決せよ」というご発言が伝わってきたとき、とんでもないことだと怒りを覚えました。あの発言については今でも後悔されていませんか? 「集団自決」という言葉を聞いたとき沖縄の人々がどんな気持ちになるかを想像できないのは単なる無知というものです。
成田 「集団自決」という単語が招く連想については注意すべきだったですし、その後は使っていません。ただ、前後を含めた発言全体の趣旨は反省も取り消しもしてません。今も同じことを思っています。
上野 本意ではなかったということですか? では、ここで趣旨を説明してください。
(構成 伊藤秀倫)
※この対談の続きは、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(上野千鶴子×成田悠輔「あなたは世代間対立をあおっています」)。
(上野 千鶴子,成田 悠輔/文藝春秋 2025年5月号)