長崎県・壱岐島沖のヘリ事故「着水するしかなかった」機長が説明…機体全体がゆがんで後部が著しく損傷

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長崎県・壱岐島沖で医師や患者ら計6人が乗った医療用ヘリコプターが転覆した状態で発見され3人が死亡した事故で、機体全体がゆがんで右側や後部には著しい損傷があることがわかった。
機体は10日陸揚げされ、調査した国の運輸安全委員会が明らかにした。同委員会は機体が右に傾いた不安定な状態で着水し、強い荷重が加わった可能性があるとみて調査を進める。
同委員会によると、ヘリは回転翼が全て折損し、前方の窓が破損していた。機体後部も潰れ、機体底部の着陸用の装備は右側の損傷が激しかった。エンジンの外観に異常は見られなかったが、今後解析を進める。
調査後、取材に応じた奥山克也・航空事故調査官は、何らかの原因でヘリが下降し、回転翼が回った状態で、右に傾きながら機首を上げて着水した可能性があるとの見解を示した。緊急時に使用するフロート(浮き)は正常に作動しており、「機長が意図を持って不時着を試みたが、安全に着水できず横転したのだろう。不時着か、墜落かは今後の審議で決める」と述べた。
事故は6日に発生した。午後1時半、女性患者を福岡和白病院(福岡市東区)に搬送するため長崎県・対馬を離陸したが、約3時間半後、海保が転覆している機体を見つけた。機内にいた患者や医師ら3人が死亡し、男性機長(66)と男性整備士(67)の2人は骨折などの重傷を負った。機体はヘリの運航会社「エス・ジー・シー佐賀航空」(佐賀市)へ移され、11日も同委員会の調査などが行われる。
ヘリの運航会社「エス・ジー・シー佐賀航空」の中山博樹社長は10日、読売新聞などの取材に応じ、機長が「フロート(浮き)を出して着水するしかなかった。できる限りのことはやった」と説明していることを明らかにした。
中山社長は事故後、入院中の機長と面会した。着水時の状況について、整備士と機体から脱出し、「全員を救出しようとしたが、波が高くて難しかった。手前にいる人からシートベルトを外して助け出し、フロートに上げるのが精いっぱいだった」と話したという。
中山社長は事故原因についての言及はなかったとする一方、機体に不具合が起きた可能性があるとの見方を示し、「利用者の信頼を損なう事故を起こし、おわびしたい」と謝罪した。

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