捕まっても「バレちゃったかぁ」とアッケラカン…万引きGメンが見た「取り押さえ現場」最新事情

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「やめてください! 違うんです!」
店内に女性の声が響く。場所は埼玉県内の大型スーパー。女性はカゴいっぱいに未精算の商品を詰め込み店から出ようとしたため、万引きを疑った男性が声をかけると大声を出し騒ぎ始めたのだ。
声をかけたのは、25年以上にわたり6000人以上の窃盗犯を捕捉してきた「万引きGメン」の伊東ゆう氏。同氏が振り返る(以下、コメントは伊東氏)。
「60代前半の女性でしたね(上写真)。万引きを繰り返す常習性がありました。犯行手口はカートにカゴを2つ乗せ、より多くの商品をレジに通さず盗む大胆な『カゴ抜け』です。2~3分暴れていましたが、店内の事務所へ連れていくと大人しくなりました。『警察には言わないでください』と、ひたすら謝り土下座しそうな勢い。『夫が重度の病気のうえ認知症で……』と言いわけしていましたが、電話すると男性は元気そのもの。生活の苦しさより、贅沢(ぜいたく)をしたいとビールや肉類などを盗もうとしたようです」
近年、万引き被害が激増している。警察庁によると’22年の認知件数は8万3598件だったが、’24年は9万8292件と2年で約1万5000件も増加。17%近い伸びを示しているのだ。
「コロナ禍や物価高騰による景気悪化が、大きく影響していると思います。以前は冒頭で紹介した女性のように常習性の高い万引き犯が多かったですが、最近は初犯が多い。″裾野(すその)″が広がった印象です。ガソリン価格の値上げに苦しむトラック運転手や、生活に困窮する一般の夫婦が弁当などを盗むケースもあります。とくに目立つのが、外国人による犯行です」
伊東氏が昨年8月に栃木県内のスーパーで取り押さえたのは、20代のスリランカ人男性Aだった――。
Aは店の2階で商品のサングラスや帽子を身に着けると、1階の食品売り場へ。未精算のバナナや菓子を袋に入れ、そのまま店外へ持ち出そうとしたのだ。伊東氏が声をかけると7~8分にわたり逃走。店の外で倒れたところを拘束した。
「Aは不法滞在者だったため、駆けつけた警察官に身柄を引き渡しました。外国人による万引きは、栃木や群馬など、工場の多い地方の県で多く発生しています。最近増えているのは、工場で働くブラジルやペルーなど南米や、ベトナムなどの東南アジア出身の人たちによる犯行ですね。日用品が多く並ぶ、ドラッグストアが狙われるケースが多い。なかには3~4人で徒党を組み、商品の盗み役、見張り役、運転手役など役割分担しているグループもあるんです」
未成年による万引きも増えている。4枚目の写真で、千葉県内のスーパーでエナジードリンクや菓子を盗んだのは16歳の少年たちだ。
「地元では有名な不良少年で、バイクの無免許運転などを繰り返していたそうです。犯行理由を聞くと、ふてくされた様子で『カネはあるけど使うのがもったいなかったから』と話していました。未成年の多くは、換金目的で犯罪に手を染めます。とくに万引きする少女たちに人気なのは、フェイスマスクや美容液などのスキンケア用の商品。ネット上で販売し、小遣いにしているんです」
万引きは世相も反映する。60代の男性が埼玉県内のスーパーから盗もうとしたのは5圓諒討澄J堂然覆旅眛が影響しているのだろう。捕まった男性は「バレちゃったかぁ」と、アッケラカンと話していたという。
「万引きの増加の背景には、スーパーやコンビニで進められる無人化やセルフレジもあると思います。監視の目が少なくなり、犯罪がしやすくなっているんです。他の仕事との兼ね合いで、隙間(すきま)時間に働くパートが増えるなど店員の質の低下も問題でしょう。万引き犯と共謀して見て見ぬふりをしたり、自分自身がスーパーの商品を盗む従業員もいるんです」
逼迫(ひっぱく)する経済、監視が緩くなりがちな店舗の無人化……。万引きは個々人の犯罪ながら、社会全体の問題でもある。
『FRIDAY』2025年4月4・11日合併号より

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。