万博2億円トイレに批判「一般的なものより安い」「一部を切り取った物だった」設計者が反論

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「税金の無駄遣い」だと批判された、建設費2億円にのぼる大阪・関西万博のトイレについて、設計した建築家が「部分的に切り取られた建築写真が流出し、安っぽい、工事金額を中抜きしているのではないかといった疑義」が起きたとして、Xで反論した。
【映像】万博トイレの内観(実際の様子)
投稿したのは、米澤隆建築設計事務所の一級建築士・米澤隆さん(42)だ。米澤さんは「批判や批評は社会にとって健全なことだと思うが、一般からすると『2億円のトイレ』というと、2億円だと豪邸が立つのでそれと比べてしまうと、トイレに2億円ってどれだけすごいものを作るのかと、無駄に税金を使っているんじゃないかと臆測がいろいろ展開していると思い、きちんと設計者として説明した方が良いのでは」との考えから投稿したという。
米澤さんは23歳で建築事務所を設立し、いま注目されている若手建築家の1人だ。日本の伝統的な建築の美しさと、現代的な技術、環境への配慮を融合させたデザインに定評があり、設計した住宅や施設は、国内外で高い評価を受け、さまざまな賞を受賞している。
今回の万博では、場内40カ所以上設ける公衆トイレのうち8カ所について、「昭和55年以降に生まれた建築家」を対象とした設計案の募集が行われ、そのうちの一つとして、米澤さんのデザインが選定された。
今回の騒動について、米澤さんは「トイレの建築写真が流出したという形で広まっていったが、その写真は一部を切り取ったものだった。それを見た人が『全部で2億円』だと勘違いしているのではないか」と語る。拡散された写真は米澤さんが設計したトイレのほんの一部で、実際はより広く、さらにトイレの奥にもたくさんの建物が並んでいる。
ここで見落とされているのが、公共トイレの「平米単価」だ。「2021~2022年の公共トイレ施設の平米単価が98万円。今回2億円と言われているトイレが、万博会場内に2カ所あるが、それぞれ平米単価は77万円と64万円で、公共の一般的なトイレの予算基準を大きく下回っている」と米澤さんは説明する。
また、デザインにも意味があり、「積み木がそうであるように、さまざまな形や色のブロックを組み合わせることによって、豊かな場を作り出すことを意図した」という。米澤さんが設計したのは、公園や広場などに合わせて、数や形状を組み替えられるトイレだ。さまざまな色や形のブロックをボルトで接合し、自由に変形できるのが特徴だ。
このデザインについて、米澤さんは「半年だけのための建築を作ると言うよりも、その後も移転・転用して長く使い続けていけるトイレにすべきだという考えのもとに設計を進めた」と明かす。
米澤さんが考案したのは万博閉会後に個室をばらし、それぞれ独立させることができるトイレ。移設先に応じた数や形状で組み換えて使うことができる。しかし、そのデザインのおかげで安っぽく見られ、工事金額を中抜きしているのではとの疑惑も浮上した。これに米澤さんは「実態に合わない高額な金額では工事できない仕組み」だと反論した。
「移設・転用を考えているため、常設の30年とか80年とか立ち続ける建築と同等の基準で設計している。ひとつ一つのトイレを独立して作らなければならず、そうすると鉄骨の構造体やコンクリートの基礎、設備配管、下水、電気配線などには常設と同等の金額がかかり、削るところがあまりない」(米澤さん)
2億円と言われた予算には、個室をばらして独立できるように配管が設置されていることや、万博で使用後に解体する費用なども含まれているという。それでも批判が相次いだため、可能な限りの減額を検討し、予定工事費を解体費込みで1.5億円にまで引き下げていた。
「仮設トイレでもいいのでは」といった声もあるが、米澤さんは「万博は夢と希望があるものだと信じている。もしよければ会場に足を運び、他の設計者が設計した優れた面白いトイレが多いので、さまざまなトイレをめぐってみて、実際体験してみてもらえると良いなと思っている」と呼びかけた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)

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