気温上昇に伴いスギ花粉の飛散が本格的に始まりました。ピークを迎える前に知っておきたい花粉症の様々な疑問と対策を、池袋大谷クリニックの大谷義夫院長に聞きます。
【写真を見る】花粉症の症状を抑える「朝食」は?
「ひるおび」では花粉症についてLINEアンケート(1万2527人が回答)を行いました。Q.花粉症ですか?はい・・・50.2%いいえ・・・49.8%
Q.(はいの人のうち)今年すでに症状が出ていますか?はい・・・57.2%いいえ・・・42.8%
街の人はー20代女性「寝てるときも鼻の詰まりで目が覚めちゃう。」
60代女性「顔がかゆいんですよね。外へ出るときは必ずマスクして、お薬を飲んで何とか対策しています。田舎から出てきて東京へ来たらなりました。」
70代男性「ひどいときには、本当に目の中に手を突っ込んで、ひっくり返してかきたいくらいの感じのときもありました。」
恵俊彰:「東京出てきてから」って僕も全く同じです。鹿児島から出てきて花粉症になるわけないと思い込んでて、5年ぐらい前から目が痒くて。薬を飲み始めて何とか対応できるなという感じです。
自らも花粉症歴30年という、池袋大谷クリニックの大谷義夫院長は、「花粉症は対策次第で症状を抑えることができる」と言います。
池袋大谷クリニック 大谷義夫院長:私は元々は花粉症で、でも舌下免疫療法というスギの成分を毎日舌下していく療法を数年やってかなり楽になりました。ただ前はだいぶつらかったです。様々な対策をして今は抑え込んでいます。
そもそも「花粉症」は、体内に侵入した花粉を体が異物と認識してしまい、侵入した異物を排除しようとする反応です。症状としては、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、頭痛、皮膚炎、だるさなどがあります。
大谷義夫院長:中心は鼻や目なんですけども、皮膚が赤くなって皮膚炎になる方もいらっしゃいますし、さらに気管支まで入れば喘息を起こしたりもします。
花粉症になる人とならない人の違いは何なのでしょうか?
大谷医師によると、違いは大きく3つ。▼アレルギー体質▼生活環境▼ストレス
かつて発症のメカニズムとして『コップ理論』がありました。自分のそれぞれ持っているコップ(容量)の中の花粉がいっぱいになって溢れ出たら花粉症になるという理論でしたが、今は『シーソー理論』になっています。
シーソーの片側は「抵抗力」、もう片側は「花粉」です。調子のいいときは花粉が体内に入ってもバランスが取れますが、花粉の方の重みが増えて、抵抗力とのバランスが取れなくなると花粉症を発症してしまいます。一度発症したら完治する人は少ないですが、ほぼ封じ込めることは可能だといいます。
大谷義夫院長:舌下免疫療法をすることによって、数年間薬を使わないで済むぐらいの寛解という状況に持っていくことは可能です。
恵俊彰:免疫力がしっかりあれば対応できるってことですか?
大谷義夫院長:免疫バランスがしっかりしていれば。花粉の量は年によって変わるじゃないですか。ストレスだったり持っている抵抗力、そこのバランスで決まっていきます。
実は、スギ花粉症はほぼ日本だけのものです。
池袋大谷クリニック 大谷義夫院長:元々北米はブタクサ、ヨーロッパはイネ科が多いらしいんですけども、スギ花粉症はほぼ日本だけです。しかも北海道はシラカバで、沖縄はイネ科が多いですよね。ただし、北海道のシラカバ花粉に陽性だった方が東京にいらっしゃって数年経つと、スギ花粉症になる人もいます。
スギ人工林の全国分布を見ると、東北、九州、四国などに多く、北海道や沖縄、関東地方ではスギ林は少なくなっています。しかし、東京でも花粉症になる人は多くいます。一体なぜなのでしょうか?
気象予報士の森朗氏によると、花粉は、200km飛ぶこともあるそうです。東京は四方八方どこから風が吹いても花粉は飛んできてしまう。さらに、アスファルトの地面では多くの花粉が吸収されずに舞ってしまうことも考えられます。この時期、北海道・沖縄などスギの少ない所へ『避紛(ひふん)』する人もおり、自治体やホテルなども滞在を後押ししています。
朝食・・・バナナ・ヨーグルト・納豆夕食・・・肉などのタンパク質、発酵食品などを積極的に摂る
▼発酵食品や食物繊維を積極的に摂取することによって、免疫バランスを整える▼バナナとヨーグルトは腸内環境を整えつつ、セロトニン(幸福物質)を出す役割もあるのでストレス緩和が期待できる
大谷義夫院長:セロトニンはアミノ酸のトリプトファンとビタミンB6の成分を合わせて召し上がるとできやすくなる。トリプトファンはヨーグルトや納豆に入っていて、ビタミンB6はバナナに入っています。また、さらにその後散歩などで日光を浴びていただければ、10数時間後に睡眠ホルモンのメラトニンになりますから、より良い睡眠になりこれもストレス軽減に役立ちます。
また大谷院長は、花粉シーズンは飲酒は控えてコーヒーに置き換えるそうです。1日3杯のコーヒーでアレルギー疾患を軽減させたというデータもあります。
大谷義夫院長:エビデンスがきちんとあるのは喘息です。アレルギー性の代表疾患である喘息を1日3杯以上のコーヒーで28%低下させるというのがヨーロッパからの大規模データで論文になっています。
コメンテーター 栗栖良依: カフェインが逆にアレルギーに良くないかなと思って控えたんですが、控える必要はなかったんですね。
大谷義夫院長:飲みすぎはどうかと思いますが、3杯ぐらいですと、コーヒー自体の気管支拡張作用や、抗酸化物質などもありますのでよろしいかと思います。
くしゃみで目が覚める、目ヤニで目が開かないなど、「モーニングアタック」といって朝一番は特に症状が出やすいそうです。1日1回で効くタイプの花粉症の薬を飲む場合、夜寝る前に服用するのが効果的です。
大谷義夫院長:朝は、副交感神経から目覚めの交感神経に変わるところで、自律神経が不安定なんですよね。そうすると、鼻炎の症状が出やすくなります。
▼花粉を身体に入れない▼花粉を家に入れない▼ストレスを溜めない
外出の際は眼鏡やマスク、ツルツルした上着などで身体に付着するのをふせぎ、室内に入る前に粘着式クリーナーでしっかりと花粉を取り除きます。寝室では加湿器で湿度を50~60%に保ち、空気清浄機をつけます。睡眠は6時間以上とり、免疫バランスを整えることが大事です。換気をする場合、窓は10cmほど開けてレースのカーテンを閉めると花粉の流入を四分の一に減らせるそうです。
大谷義夫院長:最後はレースのカーテンも掃除して、一部入ってきた花粉も掃除機で吸い取っていただきたいです。まだこの時期インフルもコロナもありますのでやはり換気は必要じゃないですか。エビデンスとしては10センチだけ窓を開けて、レースのカーテンがおすすめだと思います。
恵俊彰:こういった毎日を過ごすと、症状はかなり抑えられますか?
大谷義夫院長:抑えることができると思います。アレルギーの免疫を抑える根本的な舌下免疫療法は6月以降じゃないと始められませんから来シーズンに向けてご検討いただいて、現状はまず飲み薬と点鼻と生活習慣から、しっかり始めていただければと思います。
(ひるおび 2025年2月27日放送より)==========<プロフィール>大谷義夫氏日本アレルギー学会専門医花粉症の診療経験が豊富