「ひどいな…」田村瑠奈被告と被害者男性との“初夜”後、母・浩子被告が抱いた「複雑な心中」【ススキノ事件公判】

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2023年7月、札幌市・ススキノのホテルで頭部を切断された男性の遺体が発見された事件。逮捕された親子3人のうち、殺人ほう助や死体損壊ほう助などの罪に問われている父・田村修被告(61)の裁判員裁判の公判が札幌地裁にて行われている。
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1月28、29日の公判では、死体損壊ほう助などの罪に問われている母・田村浩子被告(62)が弁護側の証人として出廷し、壮絶な事件の様子と、10年以上続くいびつな家族関係が語られた。
その後1月30日、2月4日の公判では、同じく浩子被告が検察側の尋問に答えた。浩子被告を詰めていく検察側との“攻防”に、法廷は異様な雰囲気に包まれた–ライターの普通氏がレポートする。【前後編の前編】
証人尋問にあたり、まずは検察官から浩子被告に対し、「“はい”か“いいえ”で答えられるものは、それで端的に」と伝えられた。
冒頭は弁護側の尋問をなぞるようにして、3分程度被告が「はい」で答えられる内容が続いた。「娘・瑠奈被告(30)が主体的にやりたいことは応援したい」、「価値観を否定しない」、「迷惑をかけなければ、瑠奈被告の決定は家族の最優先事項」などと、確認がされていく。
検察官「瑠奈被告は、月に1度くらい興奮状態になると」浩子被告「はい」
検察官「それは、瑠奈被告がされたくないことをされたときであると」浩子被告「それだけじゃないですが、はい」
検察官「じゃあ、瑠奈被告が何を望んでるか、何をしてほしくないか把握して行動してたわけですね」浩子被告「娘の考えは難しいので把握できていたわけでないです」
咄嗟に答える浩子被告。流れのまま回答していたら、瑠奈被告の意思を汲んだ共謀が疑われるところ。被告と検察との“攻防”は、静かに始まっていた。
そもそも裁判員裁判では、一般から選ばれた裁判員が裁判中に抱いた感覚が、判決に大きく影響する。だからこそ、弁護側はやり取りの中で被告の印象を良くしようと見せ、検察側を「意地悪」に見せようとすることがままある。当然、検察側はその逆だ。
こういった攻防は、裁判員裁判の“醍醐味”でもある。今回検察は、死体損壊ほう助などの罪に問われている浩子被告に対し、被告が娘・瑠奈被告と同じく被害者に恨みを抱いていたこと、瑠奈被告の「殺人計画」を知っていたことを認めさせたい思いがある。
瑠奈被告が被害者と初めて出会った日のこと。瑠奈被告は被害者とカラオケに行くと思っていたものの、ホテルへ連れて行かれた。性交渉を拒んだら何をされるかわからず了承したが、複数回の性交の中で最後は避妊具をつけずに膣内射精をされた。この事実は、修被告からだけでなく、瑠奈被告本人からも聞いたと、浩子被告は主張している。
検察官「それを聞いてどう思いました」浩子被告「悲しかったです」
検察官「怒りは」浩子被告「ひどいな、と……」
検察官「“はい”か“いいえ”で」浩子被告「はい」
半ば強引に怒りの感情の言葉を引き出した検察官。一般から選ばれた裁判員の目にはどう映ったか。
後日、瑠奈被告は被害者を探したいと言い始めた。そのころには当日の怒りは収まっているように見えたが、娘は謝罪をさせたいと思っていたのではと浩子被告は言う。捜索を行う日、浩子被告は修被告に、LINEで以下のような文面を送っている。
「鹿がいるかクラブに短時間潜入捜査するの可能ですか」
「鹿」の前には「獲物」と変換されていたこともわかっている。検察官としては、浩子被告も被害者を殺害のターゲットと考えていたという主張だ。しかし被告は、この文面は瑠奈被告に言われるがまま送ったもので、「鹿」と書いた意味はわからない、記憶にないとする。
検察官「これを送って修被告から『鹿』とは何かと質問は?」浩子被告「私にはありません」
検察官「じゃあ修被告は『鹿』と聞いて被害者のこととわかっていたと?」浩子被告「それは私にはわかりません」
その後、瑠奈被告と被害者が再会した。仲直りの末、後日SMプレイの約束を取り付けたと聞かされた。瑠奈被告の自主的な行動は尊重したい思いはあるものの、最初の出会いが不本意な結果となり、浩子被告は会わせたくない思いが強かった。
そして瑠奈被告と被害者が再会した日、事件が起きた。2人は午後10時半に会う約束をしていた。浩子被告は瑠奈被告と修被告を見送ったあと寝床に入るも、被害者と再会したのか気になり寝られなかった。
検察官「再会時間がわかっていたのに、来たか確認してないのですか」浩子被告「してないです」
検察官「修被告から『被害者が来た』とか連絡は?」浩子被告「なかったと思います」
検察官「気になって寝れないならなぜしない?」浩子被告「日ごろ、修さんに外出を任せたら、自分の時間だと切り替えてたので」
検察官「じゃあ日ごろから確認はしない」浩子被告「はい」
そこで浩子被告と修被告のLINEのやりとりが明かされる。事件数日前に瑠奈被告がまた別の男性とSMプレイをすると修被告の前から出かけたときの話だ(文言は要旨として)。
23:22 修被告→浩子被告「瑠奈が〇〇へ行っている」00:34 修被告→浩子被告「今クラブです。30分で出てきたら御の字です」時刻不明 修被告→浩子被告「案の定まだ来ていません」03:41 浩子被告→修被告「その後、いかがですか?」
検察官「問い合わせしてるじゃないですか」浩子被告「翌日の仕事があるから、修さんを心配して」
検察官は連絡しない不自然さを連続して聞く。「元々意に反する相手と会うのに?」「暴力団を装ってまで会わせたくないと思ったのに?」「不安で寝れなかったのに?」「修被告から会わない約束と聞いたのに?」。
犯行計画を知っていたからではないか、と問うためだ。弁護人が「質問が重複している」と異議を出し、怒涛の質問は止まった。
浩子被告に次々と質問を投げかける検察側。しかしこの後、弁護側は検察側の質問に対し、怒涛の反撃に出るのだった–後編記事では、指摘された検察側の「書類の不備」、それに乗じた浩子被告の「態度の急変」について詳報する。
(後編につづく)
取材・文/普通(ライター)

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