【鈴木 理子】中学3年生から不登校の娘に、私はLINEで「死ねマン」と名づけられていた…「最悪の母娘関係」が一変したキッカケ

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ある朝、突如はじまった地獄の日々……。一般社団法人家族心理サポート協会代表理事で、著書『元・しくじりママが教える 不登校の子どもが本当にしてほしいこと』を上梓した鈴木理子氏は、実娘のサナさんが中学生時代に不登校になった経験を持つ。
娘の不登校を解決するためには、じつは親である自分自身を変えることが必要だった。鈴木氏が当時を振り返って語る。
高校1年生になっても相変わらずほとんど家にいるサナでしたが、私は日課のように「明日は学校に行くの?」と聞きました。
サナは、この質問が苦しくてイヤだったそうです。
なぜなら、「行かない」と答える選択肢はないから。
「行かない」と言ったら私は怒るに決まっているし、自分でも行かなくちゃいけないと思っているから、「行く」と答えるしかない。
でも、結局は朝、起きられない。そうすると私はやっぱり怒る。
「昨日行くって言ったでしょ! もう何日も休んでいるじゃない! 試験はどうするの!!」
こんなことの繰り返しです。
当然、サナと私の関係はどんどん悪化していきました。
あるとき、ふと目に入ったサナのスマホのLINE画面。私のアイコンの横には「死ねマン」と書いてありました。
娘の不登校に悩みながらも、私にも仕事があったので自分の責任は果たさなくてはなりません。
当時は企業研修の講師として働いており、企業に出向いてコミュニケーションやコーチングについての講義を行っていました。考えてみると、自分の娘とのコミュニケーションもうまくいかない人間が、人様にコミュニケーションを教えるなんて、ずいぶん皮肉な話です。
ところが、この仕事が思わぬ効果をもたらしました。人の心を理解するため、国家資格のキャリアコンサルタントを取得したり、臨床心理学・実践心理学を修めるうち、自分のサナとの向き合い方について考えさせられることが多くなっていったのです。
「これまでのサナへの接し方、もしかすると間違いだらけだったんじゃない!?」
仕事のためだった学びが、どんどん「不登校の子どもの親である自分」の学びにもなり、それが積み重なっていくうちに、ある決定的な気づきを得ました。
「サナが不登校になったのは、サナ自身の問題だと思っていた。でも違う。これは私の問題なんだ!」
自分のキャリアのための勉強を、「家庭」という一番小さな社会の単位に落とし込むことができるようになってきたのは、サナが高校2年生になった頃。少しずつ私自身が変わっていき、その変化をサナも時間をかけて感じ取ってくれていたと思います。
だんだんととげとげしい関係性が穏やかになっていき、何度か私は「思っていることを何でも話して」と声をかけて、サナの声を聞こうとしました。
でも、長年のクセとは恐ろしいもので、せっかくサナが話してくれても「いや、そうは言ってもね」「お母さんはそんなつもりはなかったのよ」と遮ってしまう。サナの「言いたいことが言えないから、もういい!」という宣言で話し合いは中止です。
失敗を繰り返した私でしたが、サナが高2の秋のある夜、「もう絶対に遮らないから」と約束して、明け方まで話を聞くことができました。
やっと娘が胸の内を見せてくれたのです。
それをきっかけにさらに態度が軟化していき、高3に進級する直前には「死ねマン」だった私のLINEの名前が「ママン」に昇格していました。
やっと母娘で向き合うことができ、私はもう娘の人生にあれこれ口出しすることをやめて、ただ応援するだけという気持ちになれました。
「明日は学校へ行くの?」と詰問することもなくなりました。
落ち着いてきたサナは、「なんとか今の高校を卒業して大学に行きたい」と口にしました。希望を伝えてくれるなんてものすごい変化です。少しは信頼を取り戻せたようで、嬉しかったのを覚えています。
私は卒業するための条件などを学校に確認し、学校に行くときにはできるだけ車で送って体力の消耗を抑えるなど、サナのサポートを心がけました。
途中、出席日数が足りず、大学入学共通テストの願書を出せないことが発覚し、急きょ学校にお願いして補講を受けさせてもらうなど、綱渡りの日々を過ごしました。
そして、本人が受験したいと言った大学・学部には片っ端から願書を出し、“数打ちゃ当たる方式”の受験期を迎えました。
願書を出しても、本当に試験を受けに行くのかどうかは当日の朝までわからない。
それでも仕方ないと腹をくくって自由にさせた中で、ありがたいことに合格をいただき、志望校のひとつの大学に進学することができたのです。
学校に行けず、表情が死んでいた娘が、自分で大学への進学を希望して、その目標を叶えられたこと。
「この子の人生が終わってしまう!」と焦っていた日々を思えば、夢のようでした。
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