青森県八戸市の「みちのく記念病院」(413床)で2023年3月、入院していた男性患者が相部屋の男に殺害された事件で、死亡の経緯をごまかし犯人を隠したとして、県警は14日、いずれも医師で当時院長だった石山隆容疑者(61)、その弟で男性患者の主治医だった石山哲容疑者(60)(いずれも八戸市)を犯人隠避容疑で逮捕した。
県警は隠蔽(いんぺい)のいきさつや動機を調べる。
殺人事件は23年3月12日深夜に発生。入院していた高橋生悦さん(当時73歳)が、アルコール依存症などで入院していた相部屋の男(59)(殺人罪で懲役17年が確定)から歯ブラシの柄で顔面を何度も突き刺され、翌13日午前10時10分、同病院で死亡が確認された。
発表によると、2人は共謀して13日、高橋さんが院内で殺害されたことを知りながら、県警に通報せず、うその死因が書かれた死亡診断書を遺族に交付するなどして事件の隠蔽を図り、相部屋の男を隠避した疑い。県警は2人の認否を明らかにしていない。
死亡診断書には死因が「肺炎」とあったが、内々の通報で事件を把握した県警が司法解剖した結果、頭部や顔面の損傷が死因だった。
地元医師会の資料によると、隆容疑者は1988年、哲容疑者は90年に弘前大医学部(青森県弘前市)を卒業。専門は隆容疑者が内科など。哲容疑者は主に精神科を専門としている。
青森県警がみちのく記念病院の元院長ら医師2人を犯人隠避容疑で逮捕した決め手の一つが、殺人事件で亡くなった高橋さんの死亡診断書だ。医師の署名欄には、事件当時89歳で、認知症疑いなどで入院していた男性患者の氏名があった。
読売新聞が入手した病院の内部資料によると、男性は医師免許を持ち、同病院で働いていたことがあったが、意識障害などの症状が表れる「ウェルニッケ脳症疑い」と診断されており、2022年12月に別の病院から転院してきた。認知症の症状が強く、男性の長男は取材に「会話は成り立たず、死亡診断をするのは難しい状態だったと思う」と話す。男性は昨年死亡した。
みちのく記念病院の職員や捜査関係者によると、対応できる医師がいない夜間などに患者の容体が急変して亡くなった場合、男性が死亡診断を任されることがあり、院内では「みとり医」と呼ばれていたという。
殺人事件後の23年4月、県警が病院を虚偽診断書作成容疑などで捜索した際、石山隆容疑者は任意の調べに対し、男性について「認知症ではない」「医師として働かせている」と説明していた。高橋さんの死亡診断書が作られた経緯については、同年8月の取材に「わからない」としていた。